雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
お風呂から出た後も、エッチの事が頭から離れない。荒療治だけど、確かにそれぐらい思いきった事をすれば思い出せるような気もする。

でも……。

やっぱりこの体を雨宮課長に晒す勇気がない。私、あんまり得意じゃないし。声も出さず、反応も薄くて、されるがままだったから成瀬君にマグロって言われた事があるし……。

だけど、記憶喪失になる前は雨宮課長としていた訳で……。私、ちゃんと反応できていたのかな? 雨宮課長を退屈させていなかったかな? 

いろいろ心配になって来た。

「奈々ちゃん、起きてたの?」

うわっ、雨宮課長!

リビングに入って来た雨宮課長は朝見た濃いグレーのスーツ姿で、ストライプ柄の青いネクタイを解きながら、テレビ前のソファに座る私に視線を向けていた。

考え事に夢中になっていたから、雨宮課長が帰って来た気配に全く気づかなかった。

気まずい。

「えーと、その、何だか眠れなくて」
「そう」

冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出すと、ゴクッと喉を鳴らして雨宮課長が美味しそうに水を飲む。

その姿が色っぽい……。

「うん? 奈々ちゃんも何か飲む?」

冷蔵庫前に立つ雨宮課長に視線を向けていると、聞かれた。
こっちを見る口元を緩めた表情が魅力的で、鼓動が少しだけ速まる。

「だ、大丈夫です」

声が喉の奥にひっかかりそうになった。焦る。

落ち着け、私。
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