雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「見つけた」
声がして、顔を上げるとネイビーのスーツ姿の雨宮課長がいた。
1階でエレベーターを降りた後も気持ちが落ち着かなくて、ビルの地下にあるコンビニの休憩スペースでコーヒーを飲んでいた。
「あ、雨宮課長、どうして……」
なんでここに?
やっと気持ちが落ち着いて来たのに、喫煙室の事が過ってまた胸が苦しくなる。
「俺の顔を見て逃げただろ? だから追いかけた」
カウンターの隣の椅子を引くと、雨宮課長がドカッと腰を下ろす。
ふわりと香る煙草の匂いが、私の知らない雨宮課長を感じさせて胸を締め付ける。
「俺を訪ねて来たんだろう? 総務で聞いたよ。何かあったの?」
いつも雨宮課長は私を心配する。課長から見たら私は心配な子どもなんだ。栗原さんにはきっとそんな対応しないよね。大人でしっかりした女性で、雨宮課長の眼鏡を外しちゃうぐらい親しくて……。
「会社抜けて来て大丈夫なんですか? お仕事あるんじゃないんですか?」
可愛くないな。こんな言い方。
どうして素直になれないんだろう。
「奈々ちゃんが、俺の最優先事項だから」
テーブルの上の私の手の上に雨宮課長の汗ばんだ手が重なる。
ギュッと強く握られてドキッとした。
「奈々ちゃん、俺に怒ってる? 俺の事が大嫌い?」
眼鏡の奥の黒い瞳が真っすぐこっちを向く。額には薄く汗が浮かんでいる。オフィス中を走り回って私を捜してくれたのかもしれない。なんでそんなに必死になってくれるの? 最優先事項なんて嬉しい事を言ってくれるの?
大嫌いな訳ないじゃない。
大好きなんだから。好きだから栗原さんに嫉妬して、そんな自分が嫌で、こんな所で仕事をサボってコーヒーを飲んでいて……。
そう言いたいのに、喉の奥が締め付けられて、声にならない。
声がして、顔を上げるとネイビーのスーツ姿の雨宮課長がいた。
1階でエレベーターを降りた後も気持ちが落ち着かなくて、ビルの地下にあるコンビニの休憩スペースでコーヒーを飲んでいた。
「あ、雨宮課長、どうして……」
なんでここに?
やっと気持ちが落ち着いて来たのに、喫煙室の事が過ってまた胸が苦しくなる。
「俺の顔を見て逃げただろ? だから追いかけた」
カウンターの隣の椅子を引くと、雨宮課長がドカッと腰を下ろす。
ふわりと香る煙草の匂いが、私の知らない雨宮課長を感じさせて胸を締め付ける。
「俺を訪ねて来たんだろう? 総務で聞いたよ。何かあったの?」
いつも雨宮課長は私を心配する。課長から見たら私は心配な子どもなんだ。栗原さんにはきっとそんな対応しないよね。大人でしっかりした女性で、雨宮課長の眼鏡を外しちゃうぐらい親しくて……。
「会社抜けて来て大丈夫なんですか? お仕事あるんじゃないんですか?」
可愛くないな。こんな言い方。
どうして素直になれないんだろう。
「奈々ちゃんが、俺の最優先事項だから」
テーブルの上の私の手の上に雨宮課長の汗ばんだ手が重なる。
ギュッと強く握られてドキッとした。
「奈々ちゃん、俺に怒ってる? 俺の事が大嫌い?」
眼鏡の奥の黒い瞳が真っすぐこっちを向く。額には薄く汗が浮かんでいる。オフィス中を走り回って私を捜してくれたのかもしれない。なんでそんなに必死になってくれるの? 最優先事項なんて嬉しい事を言ってくれるの?
大嫌いな訳ないじゃない。
大好きなんだから。好きだから栗原さんに嫉妬して、そんな自分が嫌で、こんな所で仕事をサボってコーヒーを飲んでいて……。
そう言いたいのに、喉の奥が締め付けられて、声にならない。