雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
ぼんやりと朝陽を感じて、目を開けると、「おはよう」と優しい声がかかる。

眼鏡のない顔が目を細めた優しい表情で私を見つめていた。
頭の下には愛しい人の腕。
腕枕をしてもらっていたんだ。

明け方までこの腕に抱かれていた事を思い出す。
何度も好きだ、愛していると言い合って、心も身体も溶け合うような触れあいをして、眠りについた。

思い出すだけで、にやけちゃう。

「拓海さん。だーい好き!」

すりすりと拓海さんの胸に顔を寄せて頬ずりをする。
拓海さんの匂いがして幸せ。

「奈々ちゃん……」
頭の上から驚いたような声がした。

「どうしたの?」
「今、雨宮課長じゃなくて……拓海さんって呼んだ?」
なんで拓海さんが驚いているかわからない。

頷くと、「記憶が戻ったの?」と言われて、ハッとする。

記憶……。

私、バレンタインデーの時にイベントで、階段で遊んでいた男の子が気になって……そうだ。男の子をかばって映画館の階段から落ちたんだ。

それで……。

いろんな事が頭の中に浮かんだ。
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