雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
二週間前の事だ。

オールナイト上映を見る為に入った映画館で中島さんに会った。最初は気づかなかったが、上映が始まり、すぐ後ろの席から女性のしくしくと泣くような声が聞えて気になった。

ちらりと見ると中島さんだった。
中島さんが泣いていたのは全く泣くようなシーンではなく、映画を観て泣いているというよりは他の理由がある気がした。

声をかけようか、そっとしておくべきか迷ったが無視するのも気が引けて中島さんの隣に移動してハンカチを差し出した。

涙に濡れた顔を見た時、会社での強いイメージの中島さんとギャップがあってドキッとした。

守ってあげたいと思ってしまった。

落ち着くまではそばにいようと思ったが、上映後に明るくなったシアタールームで中島さんが俺と顔を合わせるのは気まずいだろうと思い、映画が終わった後はすぐに退席した。

まさか中島さんが追いかけてくるとは思わなかった。

最近、気づくと中島さんの事を考えている。

昨日も、大阪行きの新幹線の中でぼんやりと中島さんの事を考えた。

総務課初日、風見係長とうまくやっているだろうかとか、飯島さんに中島さんが溶け込めるようにフォローをお願いしていたが、大丈夫だったかなとか……。

転校生の子どもを持つ親のような心境だった。
だが、そんな心配はいらなかったと久兵衛での飲み会に加わった時にわかった。
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