雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
中島さんの様子を聞こうと大学からの付き合いの栗原にメッセージを送ったら、久兵衛で飲んでいると返って来た。

久兵衛は時々、風見係長と飲みに行く親しみのある店だ。
店に行ったのは八時半ごろだった。

もうみんなすっかり出来上がっていて、特に中島さんがかなり酔っていた。
頬を真っ赤にして、お腹を抱えて笑う中島さんの姿は新鮮だった。

中島さんは一度笑い出すと止まらなくなるらしい。
狭い久兵衛の店内は陽気な中島さんの笑い声でいっぱいだった。

他の客たちも中島さんの笑い声に誘われるように笑っていた。周りを明るくする中島さんの笑顔はいいなと思った。それに笑っている姿が可愛かった。

帰りは心配だったから送っていった。
中島さんが横断歩道を赤信号で渡ろうとした時はヒヤッとした。
あと一歩、中島さんを捕まえるのが遅かったらトラックに轢かれていた。

酔った中島さんは危なっかしい。
突然泣き出すし……。

二度目に見た中島さんの泣き顔は無防備で、隙だらけで、堪らなくなった。
上司としての立場を忘れ、中島さんを抱きしめた事は反省するべき点だが、あの場は自分を抑えられなかった。

どうやら俺は中島さんの涙に弱いらしい。
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