雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
浮かんだ涙を指で拭っていたら、「はい」って雨宮課長が紺色のハンカチを差し出してくれた。

映画館の時と同じ。

「すみません」

ハンカチで涙を拭くと甘くて優しい匂いがする。

あの日と同じだ。

雨宮課長はハンカチみたいな人だ。いつも私の涙を優しく受け止めてくれる。

「ありがとうございます。なんか私、課長にハンカチ借りてばかりですね」

「『ハンカチは貸す為にある。女性が泣いた時のために貸す紳士のたしなみだ』」

「えっ」

「何かの映画でロバート・デ・ニーロが言ってたセリフ。気障だけどさ、紳士のたしなみだから気にしないで」

「ああ、『マイ・インターン』!」

「さすが中島さん。知っているね」

「私、あの映画好きなんです」

「俺も、好き」

課長の“好き”にドキッとする。
映画の事を好きだと言ったのに、私の事を好きだって言われたようで。

絶対にそんな訳ないのに。
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