雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「顔が死んでるよ」

12階のカフェバー隣にある社食でとんかつ定食を食べている時に桃子に言われた。

総務部に異動になってからは同じフロアにある人事部の桃子とランチをとる事が増えた。

お昼の時間にちゃんと休憩が取れるようになったからだ。宣伝部にいた頃は社外に出ていた事も多かったし、忙しくてお昼の時間に食べる事はあまりなかった。

今は規則正しい生活を送れているが、味気ない。

宣伝部が恋しい。

「ラストヒロイン」のプロモーションどうなったかな? Tシャツのデザインがイマイチだったんだよな。久保田、ちゃんとやっているかな。阿久津に押し切られていないかな。それとも今月公開の邦画のプロモーションで忙しいかな?

気を抜くと、そんな事を考えてしまう。

「そう言えばさ、聞いた?」

桃子が急に声を潜める。
話したくて仕方ないって顔をしている。

「雨宮課長ってさ、昔」

ぴくん!

耳が反応する。

「雨宮課長がどうしたの?」

「あ、雨宮課長!」

桃子が急に慌てた様子で会釈をした。

桃子の視線を辿って後ろを向くと、白トレーを持った雨宮課長が立っている。
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