雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】

雨宮課長にただの大食いだと思われたくなくて、「あのね桃子」と、反論した。

「とんかつ定食を選んだのは験(げん)を担ぎたいからなの。宣伝の仕事をしていると、少しでもご利益のあるものを選びたくなるのよ。だから『かつ』と名の付くものを選ぶ習性になってしまったの」

「人事を尽くして天命を待つって事かな」

雨宮課長の言葉に頷く。

「そうなんです。最善をつくしても、最後はやっぱり運もあると思うんです。だから、運気をあげる為には何だってしたいんです。一人でも多くのお客様に映画を観て欲しくて『かつ』と名の付くものを食べたくなるんです」

「奈々子は骨の髄まで宣伝マンだね。でも、今は総務部の奈々子なのよ。もう少し可愛いもの食べた方がいいんじゃない」

桃子がからかうように笑った。

可愛い食べ物か。

とんかつ定食は確かに可愛いからは遠いよね。

「僕はそういう中島さん、いいと思うけどな」

キュンときた。

課長はいつも嬉しい事を言ってくれる。