雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
女性は望月先生のアシスタントだと言ったが、左薬指にある結婚指輪を見て確信した。この女性は先生の作品に出て来た「今日子」のヒロインのモデルだ。

身長167㎝、47キロぐらいの細身の体型に、眼鏡。地味な服装。小説に書かれていたヒロインの風貌がそのまま当てはまる。

スランプ中の小説家とそのアシスタントとの恋物語を描いた『今日子』という小説は望月先生の私小説だと何かの記事で目にした事があった。そして先生がアシスタントの方と再婚したという事も聞いた事がある。二つの事を合わせれば答えは自然と目の前の女性に結び付く。

「小説『今日子』のヒロインのモデルになった奥様ですよね?」

隣で土下座をしていた久保田が「えぇっ!」とびっくりして顔を上げた。

眼鏡の女性がふふっと笑みを浮かべる。

「望月今日子です」

やっぱり小説のモデルで先生の奥様だ。

「奥様とは知らず、昨日は大変失礼いたしました!!」

突然、久保田が大声を張り上げた。

久保田がさらに平謝りをする。

こいつは、奥様にも何かしたのか?
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