雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
久保田の件を許してもらえれば今日は帰るつもりでいたけど、奥様の方から望月先生に会わせてくれると言ってくれた。

この機会を逃してはいけないと思い、ありがたく奥様のご厚意を受けた。

応接室に通されると、すぐにTシャツジーパン姿の望月先生が入って来る。

初めてお会いする望月先生は雨宮課長と同じぐらい背が高く、精悍な顔立ちをしている。それに若々しい。40代だと伺っているが、30代に見える。これは確かに中々のイケメン。望月先生のビジュアルが映画の宣伝に必要なのがわかる。

しかし、気難しい雰囲気も漂っている。

こういうタイプは気をつけなければ。

「お忙しい中、お時間を取っていただきありがとうございます。私、ウエストシネマズの中島と申します」

宣伝部の時の名刺しかなかったので、それをテーブルの上に置いた。

「中島さん?」

テーブルの向こう側に座る望月先生が名刺を見る。

「はい。名刺には宣伝部チーフとありますが、今は総務部の庶務係におります」

「ほお。それで? 総務部の中島さんが何で俺に会いに来たの?」

ソファから立ち上がり、床に手をついて土下座をする。

「久保田は私が宣伝部にいた頃の部下でして。元上司として久保田の不始末を謝罪しに参りました。この度は望月先生に大変不愉快な思いをさせてしまい申し訳ございませんでした。久保田は担当から外しますので、もう一度、先生のお力をお貸し願えないでしょうか? 宣伝プランは全て望月先生ありきで作ってございます。公開間近の一番大事な時期に、望月先生を外したプロモーション活動は考えられません! どうか、お力をお貸しください!」

頭の上でため息がした。

顔を上げると望月先生が近くに立っている。
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