雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「それで、中島さんの用事って?」

課長がこっちを見る。

「『フラワームーンの願い』という映画をご存じでしょうか?」

眼鏡の奥の瞳が驚いたように大きく揺れた。
今まで見たどの課長よりも驚いているようだった。

「懐かしいタイトルだ。もちろん知っている」

リカコさんが言っていた通りだった。雨宮課長は映画の事を知っている。
手がかりを見つけられて嬉しいのに、なんか落ち込む。

なんでだろう。

それから望月先生が探している事、月曜日までに映画のフィルムを見つけなければいけない事、佐伯リカコさんから課長の名前を聞いた事などを話した。

雨宮課長は真剣な表情で聞いてくれた。

「なるほど。事情はわかった」

雨宮課長が疲れたようなため息をつき、ネクタイを緩めた。その仕草が妙に色っぽくて、ドキッとする。

「一つ確認したい事があるけど、もし月曜日まで映画を見つける事ができなかったら、中島さんはどうなるんだ? また阿久津部長に札幌行きだって脅されていないか?」

雨宮課長、鋭い。
< 92 / 373 >

この作品をシェア

pagetop