ポケットに未練がましい恋歌を
大弥side
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「やっと出来上がったぁ」
バンド仲間、雅成の家にあるスタジオで、飛び跳ねる俺。
「大弥
オマエってゾーンに入ったら、何も見えなくなるのな」
雅成からの呆れ声なんて、無視。
俺は手書きの楽譜を、満足げに見つめ続ける。
この1か月半、俺はアパートにも帰らず、スマホを鍵つきの引き出しに封印。
仕事が終わるとこのスタジオにこもって、やっと完成させた。
自信作以外の何ものでもない、最高の歌を!!
「なぁ雅成、この歌を今すぐ、フェス責任者のところに送ろう!
日本最大級の野外フェスに俺らのバンドが出られるかどうかが、かかってるんだからさ!」
「今かよ? 送るの俺なんだけど」と
不満げに唇を尖らす雅成を
「早く、早く」と、俺はたきつける。