だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
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「アミィはどうしてさっきからずぅっと地図を作っているの?」

 シルフが興味津々とばかりに聞いてくる。どうやら、私が地図を書いている事がずっと気になっていたらしい。
 あぁそうそう、アミィというのはずばり私の愛称だ。なんと私は、畏れ多くもシルフのお友達の称号を賜った。
 友達と言えば愛称で呼んだりするものだよね、とシルフがアミィという愛称を考案してくれた。シルフが楽しいのならそれでいいか、と私もそれを承諾した。
 そして、シルフ、アミィと呼び合うようになって十数分後の事だった。

「私は全然この城の事を知らないからさ、少しでも知る為にこうして自分の足で見て回っているの」

 脳内で城の構造を完璧に記憶出来るのならそれだけで良かっただろうけど、生憎と私は記憶力に自信が無い。なのでこうして地図を記すのだ。

「まだまだ小さいのにアミィは凄いね」
「そう? ありがとう、嬉しい」
「……本当に大人びてるね、君」

 おっと、私の精神年齢がバレてしまう。
 前世で死亡したタイミングが分からないせいで、元の自分の年齢すらも曖昧なのだ。まぁ、なので、推定享年十七歳という事だ。……理由は、最低でも十七年は生きた気がするからです。
 そして、多分今のアミレスは六歳程。ゲームで出てきたアミレスは確か十五歳だった。つまり、ゲーム開始まではまだ後十年近くある。
 大丈夫だ、これならまだ色々と対策出来る。
 この十年で剣や魔法を会得してもしもの時は応戦し、皇帝や兄には近寄らないようにしよう。どうせその二人からアミレスは疎まれているんだ、関わる事なんてそうそう無いだろう。

 後は……帝国側の攻略対象達ね。冷酷無比な兄と、スパイの男と、亡国の元王子……兄以外はアミレスと直接的な関係がある訳では無かった筈だけど、念の為注意しておきたいわね。
 ……どれも兄陣営になるのよね、帝国側の攻略対象って。兄も目下の敵な訳だし、兄の手勢を減らすっていうのも、以外と有りなんじゃないか? もしもの時の逃亡の成功率を上げる為にも。
 まぁそもそも、この世界が一作目か二作目かによって兄が攻略対象か否かが決まるのだが……もし兄が攻略対象だった場合、ミシェルちゃんが兄のルートにだけはいかないようにしなければならない。
 何せ兄のルートは──ハッピーエンドでもバットエンドでもアミレスは兄に邪魔だからと殺される。
 一作目では愛する父親に殺され二作目では愛する兄に殺されるなんて……シナリオライターは本当にアミレスが嫌いなんじゃないかとすら思った。いや割とマジで。
 二作目の他のルートでアミレスがどうなったかは分からない。でもまぁ、ろくな目に遭ってないんだろうな。だから私はこの世界が一作目の世界である事を祈る。一作目ならまだ、自分の結末が分かるしね。

 …………そういえば。ゲームで精霊さんが単語以外で出てきた事は無かったのだけれど、シルフの存在はどういう事なのかしら。
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