だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「変態ってどういう系統の変態なの? 罵倒されたりして喜ぶタイプの変態? それとも別のタイプ?」
真面目な顔して聞く内容ではないわね、これ。
「罵倒……は分かりません。主君からのお叱りであれば確かに悦ぶやもしれませんが……」
貴方もそんな真面目な顔で答えなくていいのよ、アルベルト。
「あくまでも変態だと自称するのね」
「もしそうでなかったとしても、浅ましき身で主君のおみ足を直視してしまったのですから俺は変態です。紛う事なき変態です……」
「…………何かごめんね? つい好奇心でどんな系統なのかとか聞いちゃって」
あまりにもアルベルトがしょんぼりとしながら語るものだから、流石の私と言えども申し訳なくなってしまって。
結局アルベルトの変態疑惑? は有耶無耶になり、その後程なくしてアルベルトはとぼとぼ自室に戻って行った。
私は私で、悪い事したなあと罪悪感に襲われながら就寝したのであった。
♢♢
時は少し遡り、アミレスがこっそり抜け出して散策を始める前の話……。
影の中を疾走し、アルベルトは移動していた。程なくして、彼の手に持つ座標を指す魔導具が目的地に近づいた事を示す。
意外な事に、影の亜空間でも魔導具は機能する。それによって彼は目的地に近づいた事を知り、手頃な影から外に出る。
彼が出た場所は大きな森の中にある大木の下。そこからほんの数分歩いた場所に、ぽつんと建つコテージのようなもの。
吹雪の中そのコテージに向かって、扉を五度叩く。
アルベルトが頭や執事服についた雪を払って待っていると、中からひっそりと声が聞こえて来た。
「誰だ」
「──鏡よ鏡、世界で一番悪辣なのは誰?」
「……それはお前だよ」
短い問答を経て、その扉は開かれた。
扉を開いたのはワインレッドの髪の男。随分とまあ眠たそうな重たい瞼を擦りながら、その男──ヘブンはアルベルトを迎え入れた。
「お前があの王女サマの使いか。また変な奴を寄越しやがって……」
「……俺の前で主君を貶すとか馬鹿なの? 主君の協力者じゃなかったら今すぐここで半殺しにするのに」
悪態をつくヘブンにアルベルトが殺意を向ける。
どれだけ腹が立とうとも、アルベルトは人を殺さない。アミレスとの口約束があるから、絶対に人は殺せないのだ。
なので、半殺しである。完全に殺さない限り、半殺ししちゃってもいいよね? というのがアルベルトの自論である。
(…………前から思ってたが、あの王女の周り……信者みたいな奴が多くねェか? この計画について話す時にも何度か殺意感じたからな。あのガキもその周りもイカれてやがるな)
ヘブンはうんざりしながらコテージの中に入っていく。アルベルトは扉を閉めて、ヘブンの後ろをついてゆく。
廊下を進めば進む程ワイワイと聞こえてくる人々の談笑。やがて辿り着いたのは談話室のような開けた部屋。
暖炉の前では数名の男女が、軽食片手に楽しげに会話していた。
その中の一人が、金色に染った髪を揺らしてアルベルトの方を見上げる。
「おっ、ルティ! お前等もついに来たんだな!」
「……どうもこんばんは、カ……ええと」
「ルカだよルカ。金髪だから分かりずらいだろうけどな!」
「ああ、そうだった。見た目云々じゃなくて、単純に名前を忘れていただけですけど」
「酷ぇ!?」
こんな天気なのに随分と元気よくアルベルトを迎えたのはルカ──……もといカイルだった。
現地集合という形になっていたカイルは、二日前にここに到着していた。それから数日間カイルは持ち前のコミュニケーション能力を発揮して、ヘブン達との共同生活を送っていた。
その結果、貴族や王族を嫌うスコーピオンの面々とも打ち解けてしまったのだ。圧倒的コミュ力おばけである。
「ルカ君と……スコーピオンの人間も全員いるね。ならいいんだ。それじゃあ早速情報共有といこうか」
(──早く、主君の元に戻りたいし)
そう言って、アルベルトはのっけから本題に入った。
スコーピオンからこの計画に参加したのは、ヘブン、ラスイズ、ノウルーの頭目と幹部の三名と、ヘブン直々に選んだ腕の立つスコーピオンの幹部候補三名、マノ、ホウミー、オバラ。
マノは小柄な体の少年……に見えるが彼はドワーフ族の青年であり、ホウミーとオバラは褐色肌に長い耳を持つダークエルフと呼ばれる種族の双子の姉妹だった。
とにかく即戦力で。とアミレスに言われた為、このように戦いに長けた者達をヘブンは用意したのだ。
真面目な顔して聞く内容ではないわね、これ。
「罵倒……は分かりません。主君からのお叱りであれば確かに悦ぶやもしれませんが……」
貴方もそんな真面目な顔で答えなくていいのよ、アルベルト。
「あくまでも変態だと自称するのね」
「もしそうでなかったとしても、浅ましき身で主君のおみ足を直視してしまったのですから俺は変態です。紛う事なき変態です……」
「…………何かごめんね? つい好奇心でどんな系統なのかとか聞いちゃって」
あまりにもアルベルトがしょんぼりとしながら語るものだから、流石の私と言えども申し訳なくなってしまって。
結局アルベルトの変態疑惑? は有耶無耶になり、その後程なくしてアルベルトはとぼとぼ自室に戻って行った。
私は私で、悪い事したなあと罪悪感に襲われながら就寝したのであった。
♢♢
時は少し遡り、アミレスがこっそり抜け出して散策を始める前の話……。
影の中を疾走し、アルベルトは移動していた。程なくして、彼の手に持つ座標を指す魔導具が目的地に近づいた事を示す。
意外な事に、影の亜空間でも魔導具は機能する。それによって彼は目的地に近づいた事を知り、手頃な影から外に出る。
彼が出た場所は大きな森の中にある大木の下。そこからほんの数分歩いた場所に、ぽつんと建つコテージのようなもの。
吹雪の中そのコテージに向かって、扉を五度叩く。
アルベルトが頭や執事服についた雪を払って待っていると、中からひっそりと声が聞こえて来た。
「誰だ」
「──鏡よ鏡、世界で一番悪辣なのは誰?」
「……それはお前だよ」
短い問答を経て、その扉は開かれた。
扉を開いたのはワインレッドの髪の男。随分とまあ眠たそうな重たい瞼を擦りながら、その男──ヘブンはアルベルトを迎え入れた。
「お前があの王女サマの使いか。また変な奴を寄越しやがって……」
「……俺の前で主君を貶すとか馬鹿なの? 主君の協力者じゃなかったら今すぐここで半殺しにするのに」
悪態をつくヘブンにアルベルトが殺意を向ける。
どれだけ腹が立とうとも、アルベルトは人を殺さない。アミレスとの口約束があるから、絶対に人は殺せないのだ。
なので、半殺しである。完全に殺さない限り、半殺ししちゃってもいいよね? というのがアルベルトの自論である。
(…………前から思ってたが、あの王女の周り……信者みたいな奴が多くねェか? この計画について話す時にも何度か殺意感じたからな。あのガキもその周りもイカれてやがるな)
ヘブンはうんざりしながらコテージの中に入っていく。アルベルトは扉を閉めて、ヘブンの後ろをついてゆく。
廊下を進めば進む程ワイワイと聞こえてくる人々の談笑。やがて辿り着いたのは談話室のような開けた部屋。
暖炉の前では数名の男女が、軽食片手に楽しげに会話していた。
その中の一人が、金色に染った髪を揺らしてアルベルトの方を見上げる。
「おっ、ルティ! お前等もついに来たんだな!」
「……どうもこんばんは、カ……ええと」
「ルカだよルカ。金髪だから分かりずらいだろうけどな!」
「ああ、そうだった。見た目云々じゃなくて、単純に名前を忘れていただけですけど」
「酷ぇ!?」
こんな天気なのに随分と元気よくアルベルトを迎えたのはルカ──……もといカイルだった。
現地集合という形になっていたカイルは、二日前にここに到着していた。それから数日間カイルは持ち前のコミュニケーション能力を発揮して、ヘブン達との共同生活を送っていた。
その結果、貴族や王族を嫌うスコーピオンの面々とも打ち解けてしまったのだ。圧倒的コミュ力おばけである。
「ルカ君と……スコーピオンの人間も全員いるね。ならいいんだ。それじゃあ早速情報共有といこうか」
(──早く、主君の元に戻りたいし)
そう言って、アルベルトはのっけから本題に入った。
スコーピオンからこの計画に参加したのは、ヘブン、ラスイズ、ノウルーの頭目と幹部の三名と、ヘブン直々に選んだ腕の立つスコーピオンの幹部候補三名、マノ、ホウミー、オバラ。
マノは小柄な体の少年……に見えるが彼はドワーフ族の青年であり、ホウミーとオバラは褐色肌に長い耳を持つダークエルフと呼ばれる種族の双子の姉妹だった。
とにかく即戦力で。とアミレスに言われた為、このように戦いに長けた者達をヘブンは用意したのだ。