だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
266.俺は彼女に恋焦がれ、
「ローズ、一体いつの間に王女殿下とあんなに仲良くなったの? 俺だってまだまだ全然仲良くなれてないのに」
「えっと……アミレスちゃんから友達になろうって言って貰えて……そうだ、お兄様! あのねっ、私ね──」
ローズは随分とまあ、可愛い顔で輝く笑顔を作った。
「アミレスちゃんの事が、本気で好きになっちゃったんです」
「………………え?」
この時俺は、とても間抜けな顔をしていただろう。
ローズが……王女殿下を本気で好きになった? 本当に二人の間で何があったの?!
俺は、ローズが本気で誰かを好きになった事に驚き、その相手が王女殿下だという事に困惑していた。
えっと、その……つまりあれかな? ローズが俺の恋敵《ライバル》になる……って事? 何それ泥沼修羅場じゃん。
「アミレスちゃんがね、私達の居場所になるって言ってくれたんです。それが本当に嬉しくて、私、つい泣いちゃったんですよ……でも、そんな時もアミレスちゃんは優しく静かに寄り添ってくれて……あんなのもう、好きにならない方が無理がありますよぅ」
頬に手を当て、ローズは蕩けた顔で熱の篭ったため息を吐く。
ああ、これ本気《マジ》だ。ローズの兄だから俺には分かる。これは本気《マジ》なやつだ。
「ずっと思い悩んでいたのに、アミレスちゃんに少し話しただけですっかり悩みがすっかり無くなりました。本当に、今とっても心が晴れやかなんです!」
うーむ。こんなにも幸せそうなローズを見ると、二重の意味で嫉妬しちゃうなあ。
俺には出来なかった事……ローズを元気にしてくれた王女殿下にと、王女殿下と仲良くなったローズにと。そんな内容で二重の意味に嫉妬してしまう。
……でも、そうか。相談ねぇ…………俺も彼女に相談したら、仲良くなれるのかな。
そんな淡い期待を抱くも、彼女に相談を持ちかけるタイミングが全くと言っていい程無い。王女殿下は一日中ローズと一緒だし、それ以外の時はあの怖い騎士と怖い侍女が二人して鬼のような形相で王女殿下の後ろにいるから。
俺みたいなヘタレ野郎には、王女殿下に声をかける事すら出来なかったのだ。
「はぁ……どうするよ……あと数日もしたら即位式だし、それが終わったら王女殿下は帝都に帰っちゃうじゃんかぁ……」
深いため息を吐きながら、暗い廊下をとぼとぼ歩く。ここ数日悶々と悩み続けていてあまり眠れなくて。だから夜の散歩をしていた。
昔から暗い部屋に篭ってたから、夜目はきく方だ。一応廊下にも等間隔で明かりがあるし、魔石灯《ランタン》は持たずにぼーっとしていた。
その時、進行方向から灯りが近づいてくるのが分かった。
こんな時間に誰だろう、と目を凝らすと。
暗闇の中、キラキラと輝く白銀の髪が見えた。それを見て、俺は息を呑んだ。
「王女殿下。このような夜中にどうされましたか?」
まさかこんな時間に、こんな所で会えるなんて。
これって運命じゃないかな? なんてふざけた事は流石の俺でも考えない。夢見がちだけど、そこまで身の程知らずでもない。
「眠れなくて、ちょっと散歩してましたの。公子はどうされたんですか?」
えっ、同じだ……いや待て落ち着くんだ俺。こんな時間に散歩する理由なんて往々にしてそうだろう。
勘違いなんてするな、運命だなんて勘違いしちゃ駄目だぞ、俺。
「俺も似たようなものです。でもまさか、王女殿下にお会い出来るなんて思ってなかったので、嬉しいです」
と、伝えてから俺は意を決して王女殿下に提案する。
「せっかくこんな夜中に会ったんですから、立ち話もなんですし……場所を移して少し話でもしませんか?」
この時、緊張から凄くドキドキしていた。偶然にも怖い騎士や怖い侍女がいないこの機会、王女殿下との距離を縮めるには絶好の機会だろう!
王女殿下は「構いませんわよ」とにこやかに了承して下さった。ここからもほど近いし、談話室なら暖炉もあって丁度いいか。とそこに案内する。
談話室からすぐの所に厨房があるので、先に談話室に王女殿下を案内してから、俺は厨房で急いでホットミルクを作り、それを持って走って談話室まで戻った。
ホットミルクを受け取った王女殿下は、それに少し口をつけてから柔らかく頬を綻ばせて、
「温かくて美味しいですね」
と言ってくれた。
「昔からよくローズと一緒に飲んでいたもので……いわゆる秘伝の味? みたいなものなんです。王女殿下のお口にも合ったようで良かったです」
「へぇ、秘伝の味ですか……何が入ってるんだろう……」
よし掴みは上々だ! このまま王女殿下と少しでも仲良くなる。せめて顔見知りから知り合いぐらいまではランクアップしてみせるぞ!
王女殿下との共通の話題がローズの事しか思いつかず、とにかく俺はローズの話で場を繋いでいた。そんな中、俺はずっと気になっていた事を尋ねる事にした。
「ここ数日、ローズと何をしているんですか?」
ローズが、何気に全然教えてくれなかったからね。ならもう王女殿下に聞くしかない。
「ひ、み、つ、です♡」
はぁ? 何それ可愛い……可憐さの中に未成熟な艶やかさもあって、実に魅力的な不安定さを醸し出している。
え、急に何。もしかして気持ちがバレた上で弄ばれてる?
俺は王女殿下と会話しつつもその裏で悶々とする。
……普通さ、自分の事が好きだって分かってる相手とこんな風に二人きりになったりしないよね? 流石にバレてないよね、バレてないって信じよう。
無理に自分を納得させ、「……相談したい事があるんですが」とおもむろに切り出しては無理やり話題を変えた。
「えっと……アミレスちゃんから友達になろうって言って貰えて……そうだ、お兄様! あのねっ、私ね──」
ローズは随分とまあ、可愛い顔で輝く笑顔を作った。
「アミレスちゃんの事が、本気で好きになっちゃったんです」
「………………え?」
この時俺は、とても間抜けな顔をしていただろう。
ローズが……王女殿下を本気で好きになった? 本当に二人の間で何があったの?!
俺は、ローズが本気で誰かを好きになった事に驚き、その相手が王女殿下だという事に困惑していた。
えっと、その……つまりあれかな? ローズが俺の恋敵《ライバル》になる……って事? 何それ泥沼修羅場じゃん。
「アミレスちゃんがね、私達の居場所になるって言ってくれたんです。それが本当に嬉しくて、私、つい泣いちゃったんですよ……でも、そんな時もアミレスちゃんは優しく静かに寄り添ってくれて……あんなのもう、好きにならない方が無理がありますよぅ」
頬に手を当て、ローズは蕩けた顔で熱の篭ったため息を吐く。
ああ、これ本気《マジ》だ。ローズの兄だから俺には分かる。これは本気《マジ》なやつだ。
「ずっと思い悩んでいたのに、アミレスちゃんに少し話しただけですっかり悩みがすっかり無くなりました。本当に、今とっても心が晴れやかなんです!」
うーむ。こんなにも幸せそうなローズを見ると、二重の意味で嫉妬しちゃうなあ。
俺には出来なかった事……ローズを元気にしてくれた王女殿下にと、王女殿下と仲良くなったローズにと。そんな内容で二重の意味に嫉妬してしまう。
……でも、そうか。相談ねぇ…………俺も彼女に相談したら、仲良くなれるのかな。
そんな淡い期待を抱くも、彼女に相談を持ちかけるタイミングが全くと言っていい程無い。王女殿下は一日中ローズと一緒だし、それ以外の時はあの怖い騎士と怖い侍女が二人して鬼のような形相で王女殿下の後ろにいるから。
俺みたいなヘタレ野郎には、王女殿下に声をかける事すら出来なかったのだ。
「はぁ……どうするよ……あと数日もしたら即位式だし、それが終わったら王女殿下は帝都に帰っちゃうじゃんかぁ……」
深いため息を吐きながら、暗い廊下をとぼとぼ歩く。ここ数日悶々と悩み続けていてあまり眠れなくて。だから夜の散歩をしていた。
昔から暗い部屋に篭ってたから、夜目はきく方だ。一応廊下にも等間隔で明かりがあるし、魔石灯《ランタン》は持たずにぼーっとしていた。
その時、進行方向から灯りが近づいてくるのが分かった。
こんな時間に誰だろう、と目を凝らすと。
暗闇の中、キラキラと輝く白銀の髪が見えた。それを見て、俺は息を呑んだ。
「王女殿下。このような夜中にどうされましたか?」
まさかこんな時間に、こんな所で会えるなんて。
これって運命じゃないかな? なんてふざけた事は流石の俺でも考えない。夢見がちだけど、そこまで身の程知らずでもない。
「眠れなくて、ちょっと散歩してましたの。公子はどうされたんですか?」
えっ、同じだ……いや待て落ち着くんだ俺。こんな時間に散歩する理由なんて往々にしてそうだろう。
勘違いなんてするな、運命だなんて勘違いしちゃ駄目だぞ、俺。
「俺も似たようなものです。でもまさか、王女殿下にお会い出来るなんて思ってなかったので、嬉しいです」
と、伝えてから俺は意を決して王女殿下に提案する。
「せっかくこんな夜中に会ったんですから、立ち話もなんですし……場所を移して少し話でもしませんか?」
この時、緊張から凄くドキドキしていた。偶然にも怖い騎士や怖い侍女がいないこの機会、王女殿下との距離を縮めるには絶好の機会だろう!
王女殿下は「構いませんわよ」とにこやかに了承して下さった。ここからもほど近いし、談話室なら暖炉もあって丁度いいか。とそこに案内する。
談話室からすぐの所に厨房があるので、先に談話室に王女殿下を案内してから、俺は厨房で急いでホットミルクを作り、それを持って走って談話室まで戻った。
ホットミルクを受け取った王女殿下は、それに少し口をつけてから柔らかく頬を綻ばせて、
「温かくて美味しいですね」
と言ってくれた。
「昔からよくローズと一緒に飲んでいたもので……いわゆる秘伝の味? みたいなものなんです。王女殿下のお口にも合ったようで良かったです」
「へぇ、秘伝の味ですか……何が入ってるんだろう……」
よし掴みは上々だ! このまま王女殿下と少しでも仲良くなる。せめて顔見知りから知り合いぐらいまではランクアップしてみせるぞ!
王女殿下との共通の話題がローズの事しか思いつかず、とにかく俺はローズの話で場を繋いでいた。そんな中、俺はずっと気になっていた事を尋ねる事にした。
「ここ数日、ローズと何をしているんですか?」
ローズが、何気に全然教えてくれなかったからね。ならもう王女殿下に聞くしかない。
「ひ、み、つ、です♡」
はぁ? 何それ可愛い……可憐さの中に未成熟な艶やかさもあって、実に魅力的な不安定さを醸し出している。
え、急に何。もしかして気持ちがバレた上で弄ばれてる?
俺は王女殿下と会話しつつもその裏で悶々とする。
……普通さ、自分の事が好きだって分かってる相手とこんな風に二人きりになったりしないよね? 流石にバレてないよね、バレてないって信じよう。
無理に自分を納得させ、「……相談したい事があるんですが」とおもむろに切り出しては無理やり話題を変えた。