だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「…………っ」

 メイシアは急に黙り込んだかと思えば、その瞳から綺麗な涙を溢れさせた。
 折れかけている腕で何とか起き上がり、私はメイシアが泣きじゃくる姿を見て、どうしたらいいか分からずあわあわとしていた。そうしている間に涙は止まった。
 何が理由で泣き出してしまったのかも分からないから、どうする事も出来ない。
 でも今はとにかく……!

「……泣かないで、メイシア。先に泣いてしまった私がこう言うのも変な話だけれど……私、貴女の笑った顔が見たいわ。泣いてる姿も可愛いのだけれど、きっと、笑った顔の方がもっとずっと可愛いわ」

 メイシアを抱き締めて、そう言った。メイシアはまだ小刻みに体を震わせている。
 後方に聞こえる呻き声も、炎の弾ける音も、木々が焼け朽ちる臭いも無視して、私はメイシアを抱き締めていた。
 ゲームではついぞ見られなかったメイシアの笑顔。私は、メイシアに会ってからそれを見たいなと密かにずっと思っていた。
 ……こんな時に言う事では無いと言うのは分かっている。だが、私はそれでもこの気持ちを伝えたかった。『こんな時に何言ってるの』……なんて笑い飛ばしてくれたらいいなとも思って。

「……この顔が、怖く……ないの?」
「ん? すっごく綺麗で可愛い顔だと思うよ?」

 メイシアが不思議な事を聞いてきたので、私好みの可愛い顔だという事を伝えた。
 するとメイシアは、

「…………よかった」

 とても柔らかい声で呟いて、目尻に涙を浮かべつつはにかんだ。
 その笑顔に私は思わず「んぐっ」と謎の声を発してしまった。……可愛い、あまりにも可愛すぎるッ!
 初めて見たメイシアの笑顔すっごく可愛い!! ……なのに場所がなぁ。

「……ちょっと待っててね、メイシア。悪い大人達を片付けてくるから」

 私はそう言って足に刺さった剣を叫びそうになりながら引き抜き、止血の為にスカートの裾をちぎって、足にぐるぐると巻き付ける。
 止血が終わると、よろめきながら立ち上がった。そんな私をメイシアは心配そうに見つめている。
 私は安心して、と親指をぐっと立ててニッと笑ってみせる。……勿論、ただの痩せ我慢である。
 そして、前方に手をかざして魔法を使う。燃え盛る人間と地面等に膨大な水をかけ続け、火が完全に消え去るまで待つ。

「……よし、これで消火は出来たかな。あ、逃げないでよ」
「んなっ!?」
「バレただと!?」

 消火をしてる間に、こっそり逃げ出そうとしている奴等がいたので、そいつ等目がけて水鉄砲《ウォーターガン》を二、三発ずつかました。
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