だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
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「主君。騎士団と兵隊と領民達を合わせた五百人近い敵影を確認しました。うち百人ずつが左翼・右翼として展開、そちらには騎士団が多く配置されているようで……恐らくは左右からの挟撃が本命かと。勿論、断言は出来ませんが」

 ローズ(と私)の誘拐事件から二時間。偵察に行っていたアルベルトからの報告を受け、ついにその時がやってきたのだと息を呑んだ。

「ローズ、さっき言った通り絶対にここから出ちゃ駄目よ? ここにいる限りは私達が絶対に守るから」
「うん……」
「それじゃあ行ってくるね」

 実はこっそりアルベルトに持って来てもらった椅子と布を渡して、即席暖炉に火を灯し、ローズのいる部屋には簡単にだが結界を張った。
 この中にいる限りは大丈夫だと告げ、私もそろそろ出ようかと背を向けた時。ローズの声が私を引き止めた。

「アミレスちゃんっ! あの、その……無理はしないでね」

 それはとても、優しさに溢れた言葉だった。

「皆がいるから大丈夫よ」

 少しだけ振り向いて、サムズアップする。心配そうに眉を下げるローズに手を振って、私はアルベルトと共にその部屋を後にした。
 要塞を出ると、入口では既に皆が待機していた。この要塞の出入口は正面にある一つだけ。窓という窓はカイルの趣味で鉄格子になっているので、この中に入るにはこの正面入口から入るしかない。

 この後の作戦としては、いい感じに戦って、いい感じに負けて、いい感じにローズの救出劇を演出し、途中で私とイリオーデとアルベルトはいい感じに戦線を離脱し、要塞とは別の場所で監禁されてました感を出す。
 ローズ及び私達の救出中に別働隊はサラッと撤退。誰一人捕まらないように逃げようね、という事になった。
 何とも大雑把で行き当たりばったりな作戦である。
 ちなみに、アルベルトが闇の魔力の応用で影分身が出来るとかで……アルベルトが五人ぐらい増えたので戦力が増えた。
 アルベルト曰く、『頑張れば意識の並行稼働も可能です。凄く頑張れば』との事なので実際にやってもらったところ、何と六人のアルベルトがそれぞれ自我を得たかのように見えた。

 ただそれはあくまでもアルベルト本人の意識を分割してから割り振って、それを並行稼働と精神干渉を用いて管理・使用し、なんとか影分身の各個体の独立を実現しているらしいのだ。
 その為、かなり疲れるとか。更に六箇所から同時に情報が入ってくるから脳が大変な事になるかもしれないと。それを聞いて、とりあえずキツかったらすぐやめるよう言いつけた。
 なので一旦影分身をやめ、戦闘が始まり次第もう一度影分身をするとアルベルトは言っていた。

「うっわー、ほんっとに人多いな。ゴミのようじゃん」
「ナチュラルに大佐にならないでくれる? でも本当に……いざ見ると、ちょっと不安になるわね」
「ふぅん。でも怖気付いたってタチじゃねぇしな、お前は。何が不安なんだよ」
「死者は出さないつもりだったんだけど、これだけ人がいたら死者の有無の確認なんてしきれないなぁと。知らない所で死なれてたらどうしようかなって、不安で」
「視点が神か何かか? そこんとこはもうなあなあでええじゃろ。あんだけ人がいて、俺達もそこそこ本気で戦うつもりなんだから。人の一人や二人は死ぬ事になるだろうし、相手さんとてそこは重々承知の上だろ」

 徐々に近づいてくる大軍を眺め、要塞に背を預けてカイルと会話する。
 そんな私達を、少し離れた所から睨むようにじっと見ているイリオーデとアルベルト。ヒソヒソと何か話しているようなのだが、覆面の所為で何を話しているのかは全く分からない。
 それにしても、皆は相変わらずカイルへの当たりが強いな……確かにカイルは休戦協定中の敵国の未来の王太子だけども、うちの情報を流したりはしないし、何ならハミルディーヒの情報を流す事も無い。

 平然と密入国してるけど、スパイ行為はしないって言ってたから安心していいと思うんだけどな。
 カイルはかなりめんどくさいオタクだが、かなり接しやすいし誰とでも仲良くなれるタイプの男だからさ、皆ともすぐ仲良くなるものだと思ってたけど……一年近く経ってもこの通り、まだまだそれなりに警戒されたり不審に思われているようなのだ。
 こんなにも話しやすいのにね。どんなくだらない話でも返事してくれる最高の悪友なのにね。

「まぁそうよね。どちらも多少の怪我や犠牲は覚悟の上でしょう。あっ、そうだ……その事で皆に伝えたい事があるんだった」
「伝えたい事?」

 そうなの。と頷いて、カイルを伴いヘブン達の元に向かう。勿論イリオーデとアルベルトと一緒にだ。
 少し離れた所で話していたヘブン達に合流し、私は話を切り出した。
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