だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「ローズ、さっき言った通り絶対にここから出ちゃ駄目よ? ここにいる限りは私達が絶対に守るから」
アミレスちゃんは私が体を冷やさないようにと暖炉や布や椅子を用意して、更にはなんと結界まで張ってくれたようなのだ。
絶対に守る──。そう断言し、アミレスちゃんは私に向けてニコリとまた笑いかける。
「うん……」
「それじゃあ行ってくるね」
ただ、頷く事しか出来なかった。
でもアミレスちゃんの背中が遠ざかっていくのを見ていて、私の口は自然と言葉を押し出していた。
「アミレスちゃんっ! あの、その……無理はしないでね」
頑張ってね、とは言えなかった。言ってはならなかった。
だから無理はしないでと……これが今の私に言える唯一の言葉だから。
「皆がいるから大丈夫よ」
にっと歯を見せて笑い、彼女は親指を立てた。私はとにかくアミレスちゃんの無事を祈って、その背を見送った。
……外から戦いの音が聞こえて来る。鉄格子の窓からこっそり外を見ると、明らかに不利な人数差でも決して諦めずに戦う、アミレスちゃん達の姿があった。
それと同時に目に映る、何かに取り憑かれたかのような領民達の姿。誰もが血を流し、武器を構え、そして命を削り合う。
近いようで遠かった光景が、私の目の前にはあった。
こんな状況でも、どうして私は何も出来ないのだろうか。多くの人々が傷つき争うような恐ろしい光景を見て、足が竦むだけなのか。
何故、何かを成そうとも思わなかったのか。
「……私の存在価値って、なんだろう…………」
外から聞こえてくる雄叫び、剣戟、爆発音、轟音、絶叫。
まさしく今起きている戦争に近いものを目の当たりにして、足が竦み、体の震えが止まらない。
皆はそれぞれの意思のもと頑張ってるのに……こうして守られてるだけで何も出来ない自分に嫌気がさし、窓際で座り込んで肩を丸めていた。
視界が揺らぐ。ポタリ、ポタリと冷たい地面に水滴が落ちる。
「わた、わたし……は、なんのために、いきてるの……っ」
情けない。悔しい。苦しい。悲しい。
絶え間ない自責から、嗚咽を漏らした時だった。
『──そんなの決まってるじゃない。愛する人へ愛を歌う為よ。アナタは愛する人の為に歌って初めて、真の意味で歌姫になれるのよ』
頭の中に、知らない誰かの声が響いた。
完璧に調律されたピアノのように美しく、透き通るような音。その誰かは、私の言葉に答えるように更に続けた。
『フフ。アナタが真の意味で歌姫となる時を楽しみにしてるわよ、可愛い可愛いアタシの歌姫ちゃん。アナタの激情を全て込めた最高の音、待ってるわ♡』
楽しげな声音だった。その声は脳内に響き渡り、徐々に薄れてゆく。
今の声は誰だったんだろう。そう疑問に思うと同時に……先程の言葉が反芻される。
私は歌う為に生まれた。愛する人の為に愛を歌って、ようやく初めて真の意味で歌姫になれる。
そう、あの声は言っていた。
「…………アミレスちゃんの為なら、もう一度歌えるのかな。アミレスちゃんのレッスンをしていた時も、少しだけなら歌えたし、もしかしたら……」
皆の為に歌おうとしても、私の声は出なくなってしまった。だけど、アミレスちゃんの為なら……初恋の彼女の為ならば、私はもう一度歌えるかもしれない。
彼女に無事でいて欲しいから。少しでも彼女の力になりたいから。
無力な私にだって、好きな人の為に何か出来るって証明したかったから。
だから私は──、
「歌おう……アミレスちゃんの為に!」
この有り余り溢れ出す愛を歌おう。
守られてばかりは嫌だ。私だってアミレスちゃんの為に何かしたい。
きっと、きっと、今度は大丈夫。頭の中にアミレスちゃんの笑顔を思い浮かべると、不思議と歌えるような気がしてきたから。
だから大丈夫。私はもう一度歌える。
こんな所で蹲ってる場合じゃないと立ち上がった時には、自然と涙も止まっていた。
アミレスちゃんは私が体を冷やさないようにと暖炉や布や椅子を用意して、更にはなんと結界まで張ってくれたようなのだ。
絶対に守る──。そう断言し、アミレスちゃんは私に向けてニコリとまた笑いかける。
「うん……」
「それじゃあ行ってくるね」
ただ、頷く事しか出来なかった。
でもアミレスちゃんの背中が遠ざかっていくのを見ていて、私の口は自然と言葉を押し出していた。
「アミレスちゃんっ! あの、その……無理はしないでね」
頑張ってね、とは言えなかった。言ってはならなかった。
だから無理はしないでと……これが今の私に言える唯一の言葉だから。
「皆がいるから大丈夫よ」
にっと歯を見せて笑い、彼女は親指を立てた。私はとにかくアミレスちゃんの無事を祈って、その背を見送った。
……外から戦いの音が聞こえて来る。鉄格子の窓からこっそり外を見ると、明らかに不利な人数差でも決して諦めずに戦う、アミレスちゃん達の姿があった。
それと同時に目に映る、何かに取り憑かれたかのような領民達の姿。誰もが血を流し、武器を構え、そして命を削り合う。
近いようで遠かった光景が、私の目の前にはあった。
こんな状況でも、どうして私は何も出来ないのだろうか。多くの人々が傷つき争うような恐ろしい光景を見て、足が竦むだけなのか。
何故、何かを成そうとも思わなかったのか。
「……私の存在価値って、なんだろう…………」
外から聞こえてくる雄叫び、剣戟、爆発音、轟音、絶叫。
まさしく今起きている戦争に近いものを目の当たりにして、足が竦み、体の震えが止まらない。
皆はそれぞれの意思のもと頑張ってるのに……こうして守られてるだけで何も出来ない自分に嫌気がさし、窓際で座り込んで肩を丸めていた。
視界が揺らぐ。ポタリ、ポタリと冷たい地面に水滴が落ちる。
「わた、わたし……は、なんのために、いきてるの……っ」
情けない。悔しい。苦しい。悲しい。
絶え間ない自責から、嗚咽を漏らした時だった。
『──そんなの決まってるじゃない。愛する人へ愛を歌う為よ。アナタは愛する人の為に歌って初めて、真の意味で歌姫になれるのよ』
頭の中に、知らない誰かの声が響いた。
完璧に調律されたピアノのように美しく、透き通るような音。その誰かは、私の言葉に答えるように更に続けた。
『フフ。アナタが真の意味で歌姫となる時を楽しみにしてるわよ、可愛い可愛いアタシの歌姫ちゃん。アナタの激情を全て込めた最高の音、待ってるわ♡』
楽しげな声音だった。その声は脳内に響き渡り、徐々に薄れてゆく。
今の声は誰だったんだろう。そう疑問に思うと同時に……先程の言葉が反芻される。
私は歌う為に生まれた。愛する人の為に愛を歌って、ようやく初めて真の意味で歌姫になれる。
そう、あの声は言っていた。
「…………アミレスちゃんの為なら、もう一度歌えるのかな。アミレスちゃんのレッスンをしていた時も、少しだけなら歌えたし、もしかしたら……」
皆の為に歌おうとしても、私の声は出なくなってしまった。だけど、アミレスちゃんの為なら……初恋の彼女の為ならば、私はもう一度歌えるかもしれない。
彼女に無事でいて欲しいから。少しでも彼女の力になりたいから。
無力な私にだって、好きな人の為に何か出来るって証明したかったから。
だから私は──、
「歌おう……アミレスちゃんの為に!」
この有り余り溢れ出す愛を歌おう。
守られてばかりは嫌だ。私だってアミレスちゃんの為に何かしたい。
きっと、きっと、今度は大丈夫。頭の中にアミレスちゃんの笑顔を思い浮かべると、不思議と歌えるような気がしてきたから。
だから大丈夫。私はもう一度歌える。
こんな所で蹲ってる場合じゃないと立ち上がった時には、自然と涙も止まっていた。