だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「……さて、紅い騎士よ。これ以上我々の邪魔をすると言うのであれば、お前の命だけでは済まなくなるが…………それでも戦うというのか?」
フリードルのような声で、冷酷に語り掛ける。
「当然だ。ローズニカ様と王女殿下を救い出す為ならば、この命惜しくない」
モルスさんは間髪入れずに断言した。団長の言葉に、残りの団員達も覚悟を決める。これから死地に向かうかのごとき面構えで、彼等は真っ直ぐ私達を見据えている。
「そうか、賢明とは言えないな。だがその騎士道は気に入った。この私自ら、お前達の行く道を阻んでやろう」
かつて聞いた、ミシェルちゃんに出会って少し経った頃のフリードルの台詞──。
『そうか、賢明とは言えないな。だがその向上心は気に入った。この僕自ら、お前の能力を見定めてやろう』
それを思い出しながら、私はそっくりの言葉を吐いた。相手はミシェルちゃんではなければ、私だってフリードルではない。
だからこの言葉にはなんの意味もない。ただ、私が私らしく振る舞う事の出来る、魔法の言葉。
目前の彼等にプレッシャーをかける事だけを目的とした威嚇行為なのだ。
「そろそろ行くか」
白夜を構え、モルスさんに突撃する。重量操作を駆使し、師匠から教わった剣術と動きでモルスさんに着実にダメージを与えてゆく。
しかし、流石は騎士団長と言うべきか……五分も経てばモルスさんがこちらの動きに慣れ、攻撃に対応されることが増え始めた。
何より彼の殺意が凄まじく、模擬戦の時とは比べ物にならない強さで攻めて来る。これは大変だと思いつつ、鍔迫り合いをしては火花を散らした。
このままでは私の体力の限界が来て負けるかもしれない……そんな不安が脳裏をよぎった瞬間──耳を劈く爆発音が。
バッと後ろを振り向くと、残りの騎士達を相手にしていたカイルも驚いていた。つまり、この爆発音はカイルではない誰かの仕業という事。
その爆発はどうやら正面から来る本隊の中で発生したようで、場所的に私達のうちの誰かが起こした爆発とも思えない。
そうだ、あの辺りにはイリオーデとアルベルトが……!?
あれ程の衝撃波と爆発音だ。あんなものが直撃してしまっては、さしものイリオーデ達といえども無事では済まない。
サーッと血の気が引いてゆく。もし万が一、彼等に何かあれば……そう考えて、私は恐怖から身動きが取れなくなっていた。
正義を貫く騎士達が、このような場で茫然自失とする敵を見逃す訳もなく。
「っ、おいリーダー!!」
「──あ」
カイルの声を認識した時には遅かった。ギリギリ身を逸らす事が出来て、急所は外れたものの……思い切り腹部を斬られてしまった。
傷口が熱い。じわじわと痛みが広がっていくようだ。
私の腹部を斬った騎士は僅かに嬉しそうな顔をした。しかしカイルが彼を撃ったらしく、騎士は血を流してその場に倒れた。
「大丈夫か!?」
ここぞとばかりに追撃しようとするモルスさんから引き離そうと、カイルは翼の魔力で私を抱えて飛び上がった。
「大丈夫か大丈夫じゃないかで言えば大丈夫。ごめん、こんな初歩的なミスするなんて……自分でも驚いたわ」
「俺だって驚きだっつの。つぅかこんな飛んでる場合じゃねぇよな、どっかに降りて手当しねぇと」
カイルがキョロキョロと辺りを見渡す。
未だ熱を持つ腹部に手を当てると、服に滲む血が手のひらにべっとりとついた。痛み自体はもう慣れたから大丈夫だけど、このまま血が出続けるのは困る。
カイルの言う通りとにかく止血だけでもしなければ。
「わざわざどこかに降りる必要は無いわ。止血だけなら私でも出来るし」
「何言って……」
私は傷口を塞ぐように水の塊を出し、それを凍らせた。かなり腹部が冷たいが、致し方なし。戦場で油断した自分が悪いのだから。
フリードルのような声で、冷酷に語り掛ける。
「当然だ。ローズニカ様と王女殿下を救い出す為ならば、この命惜しくない」
モルスさんは間髪入れずに断言した。団長の言葉に、残りの団員達も覚悟を決める。これから死地に向かうかのごとき面構えで、彼等は真っ直ぐ私達を見据えている。
「そうか、賢明とは言えないな。だがその騎士道は気に入った。この私自ら、お前達の行く道を阻んでやろう」
かつて聞いた、ミシェルちゃんに出会って少し経った頃のフリードルの台詞──。
『そうか、賢明とは言えないな。だがその向上心は気に入った。この僕自ら、お前の能力を見定めてやろう』
それを思い出しながら、私はそっくりの言葉を吐いた。相手はミシェルちゃんではなければ、私だってフリードルではない。
だからこの言葉にはなんの意味もない。ただ、私が私らしく振る舞う事の出来る、魔法の言葉。
目前の彼等にプレッシャーをかける事だけを目的とした威嚇行為なのだ。
「そろそろ行くか」
白夜を構え、モルスさんに突撃する。重量操作を駆使し、師匠から教わった剣術と動きでモルスさんに着実にダメージを与えてゆく。
しかし、流石は騎士団長と言うべきか……五分も経てばモルスさんがこちらの動きに慣れ、攻撃に対応されることが増え始めた。
何より彼の殺意が凄まじく、模擬戦の時とは比べ物にならない強さで攻めて来る。これは大変だと思いつつ、鍔迫り合いをしては火花を散らした。
このままでは私の体力の限界が来て負けるかもしれない……そんな不安が脳裏をよぎった瞬間──耳を劈く爆発音が。
バッと後ろを振り向くと、残りの騎士達を相手にしていたカイルも驚いていた。つまり、この爆発音はカイルではない誰かの仕業という事。
その爆発はどうやら正面から来る本隊の中で発生したようで、場所的に私達のうちの誰かが起こした爆発とも思えない。
そうだ、あの辺りにはイリオーデとアルベルトが……!?
あれ程の衝撃波と爆発音だ。あんなものが直撃してしまっては、さしものイリオーデ達といえども無事では済まない。
サーッと血の気が引いてゆく。もし万が一、彼等に何かあれば……そう考えて、私は恐怖から身動きが取れなくなっていた。
正義を貫く騎士達が、このような場で茫然自失とする敵を見逃す訳もなく。
「っ、おいリーダー!!」
「──あ」
カイルの声を認識した時には遅かった。ギリギリ身を逸らす事が出来て、急所は外れたものの……思い切り腹部を斬られてしまった。
傷口が熱い。じわじわと痛みが広がっていくようだ。
私の腹部を斬った騎士は僅かに嬉しそうな顔をした。しかしカイルが彼を撃ったらしく、騎士は血を流してその場に倒れた。
「大丈夫か!?」
ここぞとばかりに追撃しようとするモルスさんから引き離そうと、カイルは翼の魔力で私を抱えて飛び上がった。
「大丈夫か大丈夫じゃないかで言えば大丈夫。ごめん、こんな初歩的なミスするなんて……自分でも驚いたわ」
「俺だって驚きだっつの。つぅかこんな飛んでる場合じゃねぇよな、どっかに降りて手当しねぇと」
カイルがキョロキョロと辺りを見渡す。
未だ熱を持つ腹部に手を当てると、服に滲む血が手のひらにべっとりとついた。痛み自体はもう慣れたから大丈夫だけど、このまま血が出続けるのは困る。
カイルの言う通りとにかく止血だけでもしなければ。
「わざわざどこかに降りる必要は無いわ。止血だけなら私でも出来るし」
「何言って……」
私は傷口を塞ぐように水の塊を出し、それを凍らせた。かなり腹部が冷たいが、致し方なし。戦場で油断した自分が悪いのだから。