だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「アランー! エルー! 聞こえたら返事してーー!!」

 事前に決めておいた、この計画中の二人の呼び方(何故か二人揃って兄弟の愛称にしていた)。それを何度も繰り返し口にしながら煙の中を走り回る。
 変声魔導具で声が変わってる事も二人は知っているので、多分聞こえたら返事をしてくれる筈。
 だからお願い、返事をして。

「ぐあっ!」
「うべぇっ」

 ばったり出くわした敵をすぐに気絶させ、足を止める事無く何度も二人の偽名を呼ぶ。呼べど叫べど全く返事がなく、それがまた私の不安と恐怖を煽るのだ。
 そうやって捜し回る事数分。
 誰かの呻き声のようなものが聞こえ、恐怖に脈打つ心臓を必死に押さえながら音の鳴る方へと向かう。
 その音の主は領民で、二人ではなかった。しかし怪我が酷く、爆発の被害をモロに受けたようで肌はいくらか爛れていて火傷も痛々しかった。
 ミシェルちゃんなら治してあげる事も出来ただろう。だけど、私にはそんな力はない。だから治せなくてごめんなさいと思い、その場を離れようとした時。
 背後に、何者かの気配を感じた。

「──ッ!」

 振り向いてすぐさま白夜を向ける。するとそこには、

「リーダー様? 何故このような場所に……」

 戸惑う声音を漏らすアルベルトが立っていた。更にその後ろから、「どうしたんだ、エル」とイリオーデの声も聞こえて来て。
 二人共、変装用の服の損傷が激しいものの目立った怪我は無さそうだ。
 彼等の無事を確認出来て、心から安堵し胸を撫で下ろした。体中から力が抜けて、白夜も体側に下ろし、その場でぺたりと座り込んでしまったのだ。

「〜〜っ、よかったぁ……! 二人共無事で、本当によかったぁ……っ」

 今にも涙が溢れてしまいそうだった。座り込んだ際に、一時的に変声魔導具も解除した。
 私の所為で、私が巻き込んだ所為で二人が死んでしまったりしたら……きっと私は正気を保てなくなる。
 何があっても守り抜きたい大事な仲間(ひと)達が私の所為で死ぬような事があれば、きっと私は壊れてしまう。
 だからこそ、二人が無事でいてくれた事が嬉しかった。柄にもなく泣き出しそうになったぐらい、深く安堵したのだ。

「し、主君!? いかがなされたのですか!」
「もしや何か敵からの攻撃を受けて……っ!」

 アルベルトとイリオーデが、ギョッとしたように駆け寄って来た。さっきまでちゃんと私の事をリーダーと呼んでいたのに、アルベルトは驚きのあまりか素が出てしまっている。
 二人共、私のらしくない姿にオロオロとしていた。

「さっきの爆発で、二人が怪我したんじゃないかって不安で……凄く、凄く心配で……」
「我々を、心配してくださったのですか?」
「うん」
「……私達の安否を確かめるべく、貴女様自らこのような場所まで?」
「うん」

 涙を流す一歩手前、みたいな声で頑張って返事をすると、

「──俺は、なんて果報者なんだろう」
「──主に要らぬ心配を掛けた事は恥ずべき事だと言うのに、どうしてこんなにも……」

 口元を押さえて、二人は悶絶しているようだった。程なくして、ふぅ。と一度深呼吸をしたイリオーデが私に向けて口を開く。

「ご心配をおかけしてしまい申し訳ございませんでした。貴女様に気を揉ませてしまうなど、本来従者としてあるまじき失態……心よりお詫び申し上げます」

 そう言って、彼等は深く頭を下げた。

「この通り俺達はこれと言った怪我もありません。ただ、先の爆発で影分身は解けてしまいましたが」

 その話を聞いて改めてホッとすると同時に、私は思う。あの爆発は何だったのかと。
 カイルの仕業ではないし、かと言ってこの二人の仕業とも思えない。ならば誰が起こした爆発だったのか……それが頭に引っかかってしまう。

「ねぇ、さっきの爆発って何だったの? 一体この辺りで何が起きていたの?」
「実は……先程まで私と彼とで本隊の相手をしていたのですが──」

 イリオーデは、少し前の事を振り返るように口を切った。
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