だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
280.星は流れ落ちる4
♢♢
「あー、えっと。アラン君。ちなむと俺はもう百五十人ぐらい倒したと思うけどそっちはどう?」
(……普段は私の名前を覚えようともしないのに、何故偽名は普通に覚えているんだろうか、この男は)
イリオーデとアルベルトは競い合うように本隊の人間を蹴散らしていた。
その途中で、そっちの様子はどうなんだと、アルベルトがイリオーデに話しかける。二人揃って戦場でも余裕綽々である。
「私もおおよそそれぐらいだ。もっとも、わざわざ倒した敵の数など数えてないが」
「……ふーん、そうなんだ」
アルベルトはにこやかな笑みを作った。しかしその笑みはかなり黒く染まっていて。
(相変わらず言葉の端々に棘があるなぁ……俺が君に何したって言うんだよ。仲良くしないと主君に怒られるから、こうやって仲良くしようとしてるのにさ)
しょうもない苛立ちを覚え、アルベルトはため息を一つ。それに乗せて怒りを外に流そうとしたのだ。
「何でもいいけどさ、俺の邪魔はしないでよ? このまま誰よりも敵を倒してリーダーに褒めて貰うんだから」
戦場に散らばるアルベルトの分身達も、この言葉にうんうんと頷く。
「聞けない相談だな。私とてお……リーダーの騎士として恥じぬ活躍をし、リーダーに我が働きを認めていただくと決めている。お前にくれてやる首など無い」
しかし負けじとイリオーデも応戦する。ここに来て互いに敵を見誤り、二人の間では火花が散っていた。
「寝言は寝て言ってくれるかな。必要があれば眠らせてあげるよ、半永久的に」
「その減らず口を八つ裂きにされたくなければ、早急に口を噤め」
ここに、仁義なき従者達の戦いが始まる──かに思えた。
しかしここで、彼等にとっても予想外の出来事が起きる。五名の領民が前傾姿勢で疾走し、イリオーデとアルベルトの元に突撃する。
当然二人はそれに気づき、返り討ちにしようとした。
(あいつ等、何を持って……──ッ、あの形状……まさか?!)
ここでアルベルトが領民達が抱える何かに気づく。それを理解した瞬間アルベルトの顔は青ざめ、彼から冷静さを奪う。
「アラン君ッ、今すぐこの場を離れないと! あれは──自爆特攻だ!!」
「自爆特攻……!?」
そう。領民達が抱えていたもの……それは爆薬だった。彼等はそれを抱えて特攻し、自らの命を犠牲にイリオーデ達を道づれにしようとしていた。
だが爆薬の存在にアルベルトがいち早く気がついた事で、最悪の展開は免れた。しかしもう既に、領民達とイリオーデ達との距離は三メートルにも満たない。
アルベルトの叫びは領民達にも聞こえていたのだ。
「バレたって構わねェ。ここでオマエ等罪人を道づれに出来るのならなぁ!」
「死ねぇ! 大罪人共!!」
前を突っ走っていた二人の男が、決死の覚悟で今際の怒号をあげた。その瞬間──、
(ッ、間に合え……!!)
(くっ、何とかなるか!?)
アルベルトとイリオーデは互いを庇うように動き、魔法を発動させた。
自分は多分大丈夫だと過信し、その上で相手を守らないとアミレスが後で悲しむから……と考え、何と互いに気に入らない相手を庇おうとしたのだ。
目が焼かれてしまいそうな程の熱量を伴った、眩い光。二つの自爆特攻を皮切りにその場で連鎖的に爆発が起こり、大爆発となる。
それは人はおろか地面さえも吹き飛ばし、爆風と黒煙は凄まじい勢いで戦場を包み込む。付近にいた者達は等しくその被害を受け、命や意識を失った。ただし、ある一方向を除いて。
「あー、えっと。アラン君。ちなむと俺はもう百五十人ぐらい倒したと思うけどそっちはどう?」
(……普段は私の名前を覚えようともしないのに、何故偽名は普通に覚えているんだろうか、この男は)
イリオーデとアルベルトは競い合うように本隊の人間を蹴散らしていた。
その途中で、そっちの様子はどうなんだと、アルベルトがイリオーデに話しかける。二人揃って戦場でも余裕綽々である。
「私もおおよそそれぐらいだ。もっとも、わざわざ倒した敵の数など数えてないが」
「……ふーん、そうなんだ」
アルベルトはにこやかな笑みを作った。しかしその笑みはかなり黒く染まっていて。
(相変わらず言葉の端々に棘があるなぁ……俺が君に何したって言うんだよ。仲良くしないと主君に怒られるから、こうやって仲良くしようとしてるのにさ)
しょうもない苛立ちを覚え、アルベルトはため息を一つ。それに乗せて怒りを外に流そうとしたのだ。
「何でもいいけどさ、俺の邪魔はしないでよ? このまま誰よりも敵を倒してリーダーに褒めて貰うんだから」
戦場に散らばるアルベルトの分身達も、この言葉にうんうんと頷く。
「聞けない相談だな。私とてお……リーダーの騎士として恥じぬ活躍をし、リーダーに我が働きを認めていただくと決めている。お前にくれてやる首など無い」
しかし負けじとイリオーデも応戦する。ここに来て互いに敵を見誤り、二人の間では火花が散っていた。
「寝言は寝て言ってくれるかな。必要があれば眠らせてあげるよ、半永久的に」
「その減らず口を八つ裂きにされたくなければ、早急に口を噤め」
ここに、仁義なき従者達の戦いが始まる──かに思えた。
しかしここで、彼等にとっても予想外の出来事が起きる。五名の領民が前傾姿勢で疾走し、イリオーデとアルベルトの元に突撃する。
当然二人はそれに気づき、返り討ちにしようとした。
(あいつ等、何を持って……──ッ、あの形状……まさか?!)
ここでアルベルトが領民達が抱える何かに気づく。それを理解した瞬間アルベルトの顔は青ざめ、彼から冷静さを奪う。
「アラン君ッ、今すぐこの場を離れないと! あれは──自爆特攻だ!!」
「自爆特攻……!?」
そう。領民達が抱えていたもの……それは爆薬だった。彼等はそれを抱えて特攻し、自らの命を犠牲にイリオーデ達を道づれにしようとしていた。
だが爆薬の存在にアルベルトがいち早く気がついた事で、最悪の展開は免れた。しかしもう既に、領民達とイリオーデ達との距離は三メートルにも満たない。
アルベルトの叫びは領民達にも聞こえていたのだ。
「バレたって構わねェ。ここでオマエ等罪人を道づれに出来るのならなぁ!」
「死ねぇ! 大罪人共!!」
前を突っ走っていた二人の男が、決死の覚悟で今際の怒号をあげた。その瞬間──、
(ッ、間に合え……!!)
(くっ、何とかなるか!?)
アルベルトとイリオーデは互いを庇うように動き、魔法を発動させた。
自分は多分大丈夫だと過信し、その上で相手を守らないとアミレスが後で悲しむから……と考え、何と互いに気に入らない相手を庇おうとしたのだ。
目が焼かれてしまいそうな程の熱量を伴った、眩い光。二つの自爆特攻を皮切りにその場で連鎖的に爆発が起こり、大爆発となる。
それは人はおろか地面さえも吹き飛ばし、爆風と黒煙は凄まじい勢いで戦場を包み込む。付近にいた者達は等しくその被害を受け、命や意識を失った。ただし、ある一方向を除いて。