だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
282.幕を下ろしましょう。
要塞に残していた荷物をアルベルトにこっそり回収してもらい、私達は一度、スコーピオン達が潜伏していた森の中の拠点に移動する。
カイルやヘブン達と合流してから、こっそりと転移したのである。突然現れたシルフに、ヘブン達は口を揃えて「いや誰だよ」と驚いていた。
まぁ、この見た目だけなら私もいや誰だよって感じなんだけどね。私の中でのシルフはもふもふキュートな猫ちゃんだから…………。
森の中の拠点に辿り着くと、私とイリオーデとアルベルトは急いで着替えた。ローズとは別の場所に放置されてました感を出す為に、特殊メイクと血糊塗れの姿に戻ったのだ。
着替え終わると、この姿にシルフはギョッとしていた。「何でそんなわざわざ汚れようとするの……?」と眉尻を下げてこちらを見てくる。
仕方の無い事なのよ。と説明してカイルの元に向かうと、そこには汚された服を綺麗にしたくて仕方無い……とばかりに貧乏ゆすりをしているイリオーデ達が。
「さて。何かいい感じに縛ってちょうだい、ルカ」
「俺!?」
「縛る……?!」
捕らわれの身なんだから縛られてないとおかしいじゃない。そう思い縛ってどうぞと両手を差し出したところ、カイルは唾を飛ばして驚愕し、シルフは素早く詰め寄って来た。
「何でそんな事する必要があるの? そもそもっ! 縛ってとか、アミィはそんな変な趣味はしてないでしょ!」
「け、計画に必要な事だから……」
「必要だからって他人に体を縛らせるなんて、そんなの絶対に駄目! ボクが許さない!!」
「体を縛るだけなのに、シルフの許可が必要なの……?」
捲し立てるシルフの剣幕に気圧され、私は困惑を漏らした。
暫く会わないうちに、シルフがまるで束縛激しい系彼氏みたいな……そんなちょっぴり面倒臭い感じになった。
「そんなに言うなら、シルフが縛ってよ。とにかく私達が拘束されてる必要があるんだから」
「えっ」
「何をそんなに驚くの? シルフが駄目とか許さないとか言うから頼んだのに」
「えっ……と……ボク、が? アミィを、縛る。アミィを…………」
急にどもり始めたかと思えば、シルフはおもむろに変身し、先程見た言葉に出来ないような美貌へと戻った。
その瞬間を見て、ヘブン達は開いた口が塞がらないまま呆然とし、カイルに至っては二度目となる「誰ぇ!?」という叫び声を上げていた。
「──ごほん。他の誰かにやらせるぐらいならボクがやるのが一番だもんね。ウン」
情緒不安定にも程がある。そわそわしながら、どこからともなく謎の縄を出すんじゃない。というか何その光る縄。
「あ、ごめんね。精霊界から引っ張り出したから光ってたみたい。すぐに消えるから気にしないで」
私の視線に気づいたらしいシルフが、軽く説明しながら私の手首を縛る。一応ちゃんと縛られてるんだけど、しかし全然痛くはない。
それにしても、何でわざわざ元の姿に戻ったんだろう……あまりにも綺麗で、目を合わせ辛いな。
まず私の手足が縛られ、その後苦い顔をしながらもイリオーデとアルベルトは大人しく手足を縛られた。ちなみにシルフは縄を出すだけで、二人を縛るのはカイルに任せていた。
カイルが妙に手際良く二人を縛りながら、「何で俺ってこんな役回りばっかなんかなぁ……」とため息を吐いたのを私は見逃さなかった。
その後、手足を縛られた私達をカイルがいい感じの木陰に転移させ、そこで眠るフリをしつつ誰かが来るのを待っていた。
暇だったから待ち時間にしりとりしてたんだけど、ここから更に盛り上がる! って時に限って領民が私達を見つけたので、慌てて意識を失っているフリをした。
領民達から大丈夫かと何度も心配され、それに何度も平気と返事をしていた時。要塞に雪崩れ込んだ領民達によって保護されたローズが、レオと一緒にこちらに駆けてくる姿が見えた。
その目尻に涙を溜めてローズは私に飛びついた。ぎゅーっと私を抱き締めて、彼女はぐすっと鼻を鳴らす。
「アミレスちゃんが無事でよかったぁ……!」
どうやら心配をかけてしまっていたらしい。ローズの後頭部を撫でながら、「心配かけてごめんね」と謝ってると、
「っはぁ……王女殿下。よかった、無事で……!!」
遅れて到着したレオが、肩で息をしながらふにゃりと笑った。
覚悟していたのに胸が痛む。こんなにも心配してくれる人達を騙し、あんな凄惨な争いを起こしてしまった罪悪感が、今更心臓に絡みつきそれを締め付ける。
「迷惑かけてごめんね、レオ」
私に出来る精一杯の言葉と思いを込めた、心からの謝罪。レオはこれにキョトンとしていた。
何の話? とでも言いたそうな顔だった。
レオとローズに挟まれる形で歩く。左側にレオ、右側にローズというまさに両手に花状態。更に後ろにはイリオーデとアルベルトまでいる。
両手どころではなく背中にも花。
ローズにがっちりと腕をホールドされたまま領主の城に戻り、まずは着替えや手当てなどするように言われた。何せ今の私達は見た目だけなら重傷だから。
これが全て特殊メイクなどによるものだとバレてはならないので、必死に自分達で手当てしますと説得し、私達は無事にバレる事無く着替える事が出来た。
自室に入ると、セツが私の帰りを待ち侘びていたのか、勢いよく飛びついて来たのだ。
さっきからやけに飛びつかれるなぁ。セツに顔をぺろぺろされながら、そう小さく笑いをこぼした。
カイルやヘブン達と合流してから、こっそりと転移したのである。突然現れたシルフに、ヘブン達は口を揃えて「いや誰だよ」と驚いていた。
まぁ、この見た目だけなら私もいや誰だよって感じなんだけどね。私の中でのシルフはもふもふキュートな猫ちゃんだから…………。
森の中の拠点に辿り着くと、私とイリオーデとアルベルトは急いで着替えた。ローズとは別の場所に放置されてました感を出す為に、特殊メイクと血糊塗れの姿に戻ったのだ。
着替え終わると、この姿にシルフはギョッとしていた。「何でそんなわざわざ汚れようとするの……?」と眉尻を下げてこちらを見てくる。
仕方の無い事なのよ。と説明してカイルの元に向かうと、そこには汚された服を綺麗にしたくて仕方無い……とばかりに貧乏ゆすりをしているイリオーデ達が。
「さて。何かいい感じに縛ってちょうだい、ルカ」
「俺!?」
「縛る……?!」
捕らわれの身なんだから縛られてないとおかしいじゃない。そう思い縛ってどうぞと両手を差し出したところ、カイルは唾を飛ばして驚愕し、シルフは素早く詰め寄って来た。
「何でそんな事する必要があるの? そもそもっ! 縛ってとか、アミィはそんな変な趣味はしてないでしょ!」
「け、計画に必要な事だから……」
「必要だからって他人に体を縛らせるなんて、そんなの絶対に駄目! ボクが許さない!!」
「体を縛るだけなのに、シルフの許可が必要なの……?」
捲し立てるシルフの剣幕に気圧され、私は困惑を漏らした。
暫く会わないうちに、シルフがまるで束縛激しい系彼氏みたいな……そんなちょっぴり面倒臭い感じになった。
「そんなに言うなら、シルフが縛ってよ。とにかく私達が拘束されてる必要があるんだから」
「えっ」
「何をそんなに驚くの? シルフが駄目とか許さないとか言うから頼んだのに」
「えっ……と……ボク、が? アミィを、縛る。アミィを…………」
急にどもり始めたかと思えば、シルフはおもむろに変身し、先程見た言葉に出来ないような美貌へと戻った。
その瞬間を見て、ヘブン達は開いた口が塞がらないまま呆然とし、カイルに至っては二度目となる「誰ぇ!?」という叫び声を上げていた。
「──ごほん。他の誰かにやらせるぐらいならボクがやるのが一番だもんね。ウン」
情緒不安定にも程がある。そわそわしながら、どこからともなく謎の縄を出すんじゃない。というか何その光る縄。
「あ、ごめんね。精霊界から引っ張り出したから光ってたみたい。すぐに消えるから気にしないで」
私の視線に気づいたらしいシルフが、軽く説明しながら私の手首を縛る。一応ちゃんと縛られてるんだけど、しかし全然痛くはない。
それにしても、何でわざわざ元の姿に戻ったんだろう……あまりにも綺麗で、目を合わせ辛いな。
まず私の手足が縛られ、その後苦い顔をしながらもイリオーデとアルベルトは大人しく手足を縛られた。ちなみにシルフは縄を出すだけで、二人を縛るのはカイルに任せていた。
カイルが妙に手際良く二人を縛りながら、「何で俺ってこんな役回りばっかなんかなぁ……」とため息を吐いたのを私は見逃さなかった。
その後、手足を縛られた私達をカイルがいい感じの木陰に転移させ、そこで眠るフリをしつつ誰かが来るのを待っていた。
暇だったから待ち時間にしりとりしてたんだけど、ここから更に盛り上がる! って時に限って領民が私達を見つけたので、慌てて意識を失っているフリをした。
領民達から大丈夫かと何度も心配され、それに何度も平気と返事をしていた時。要塞に雪崩れ込んだ領民達によって保護されたローズが、レオと一緒にこちらに駆けてくる姿が見えた。
その目尻に涙を溜めてローズは私に飛びついた。ぎゅーっと私を抱き締めて、彼女はぐすっと鼻を鳴らす。
「アミレスちゃんが無事でよかったぁ……!」
どうやら心配をかけてしまっていたらしい。ローズの後頭部を撫でながら、「心配かけてごめんね」と謝ってると、
「っはぁ……王女殿下。よかった、無事で……!!」
遅れて到着したレオが、肩で息をしながらふにゃりと笑った。
覚悟していたのに胸が痛む。こんなにも心配してくれる人達を騙し、あんな凄惨な争いを起こしてしまった罪悪感が、今更心臓に絡みつきそれを締め付ける。
「迷惑かけてごめんね、レオ」
私に出来る精一杯の言葉と思いを込めた、心からの謝罪。レオはこれにキョトンとしていた。
何の話? とでも言いたそうな顔だった。
レオとローズに挟まれる形で歩く。左側にレオ、右側にローズというまさに両手に花状態。更に後ろにはイリオーデとアルベルトまでいる。
両手どころではなく背中にも花。
ローズにがっちりと腕をホールドされたまま領主の城に戻り、まずは着替えや手当てなどするように言われた。何せ今の私達は見た目だけなら重傷だから。
これが全て特殊メイクなどによるものだとバレてはならないので、必死に自分達で手当てしますと説得し、私達は無事にバレる事無く着替える事が出来た。
自室に入ると、セツが私の帰りを待ち侘びていたのか、勢いよく飛びついて来たのだ。
さっきからやけに飛びつかれるなぁ。セツに顔をぺろぺろされながら、そう小さく笑いをこぼした。