だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
♢♢


 地下にいたガキ共全員を連れてあの建物を出てから数分。それなりに走っているが、まだ目的地の噴水広場までは少しある。

「追っ手の数はどれくらいだ!?」
「んーと、六人ぐらい追って来てて、その後ろにまだ数人いる!」

 目が良いジェジに後方の確認をさせると、予想通り奴隷商の奴等が何人か追って来ていた。
 ガキ共の中にも徐々に走れなくなりそうなのが出てきた。……さっさと追っ手を倒さねぇとな。

「エリニティ、イリオーデ、ジェジ、バドール、シャルルギル、お前等は追っ手の撃退に向かえ! ユーキは魔法であいつ等の援護だ! メアリード、ルーシアン、クラリス、ラークはこのままガキ共を目的地まで連れて行ってそのまま護衛だ、分かったな!」

 ガキ共の列の前方と後方、そして左右に分かれて並走している仲間達に聞こえるよう大声で伝えると、各場所から「了解!」と返事が来た。
 追っ手の撃退にあてられた奴等が次々に集団から離れ、引き返していく。それに合わせて俺も引き返そうとした時、ラークに引き止められた。

「待って、ディオ。ディオはこの後どうするんだ? どうして引き返そうとしている?」

 ラークに手首を捕まれ、俺達は立ち止まった。

「……あのガキが心配なんだよ」
「……例の子を迎えに行くんだね。引き止めてごめん……ほら、行っておいで。子供達の事なら大丈夫だから」

 ラークは穏やかな笑みを作ると、あっという間に手を離した。

「……任せたぞ」
「勿論だとも」

 拳をコツンとぶつけ合い、俺はあの建物目指して走り出す。真夜中の暗い街を照らすのは街灯の魔力灯《ランタン》だけ。
 ほの暗い道を疾走する。さっき通った時よりもずっと速く進んでいく。
 そうやって走りながら曲がり角を通った時、誰かと正面からぶつかってしまった。
 俺はぶつかった箇所が少し痛むぐらいで済んだのだが、相手はぶつかった衝撃で後ろに倒れてしまったらしい。

「いって……おい、大丈夫かあんた」

 そう言いながら暗がりに向けて手を差し伸べる。
 こんな所で道草食ってる場合じゃないんだが、俺のせいで相手は倒れたんだ……流石に無視出来ん。
 曲がり角の先は少し暗く、相手の姿は薄らとしか見えない。だが、何となく、ぶつかった際の感じから男だろうとは予測している。

「大丈夫……済まない、僕の不注意で」

 有難くお手を拝借しよう、と言って相手は俺の手を取った。俺がそれを引っ張るようにして、男はおもむろに立ち上がった。
 服についた砂埃を手で払いながら、男は尋ねてくる。
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