だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
だがそれでも私に向けられている言葉である事には変わりなく、どんどん嬉しいような恥ずかしいようなで顔が熱くなって来たので、もうやめようよと言おうとしたのだが……彼等は舌の根も乾かぬうちに次々と雨のように賛辞を浴びせて来るので、私が口を挟む隙なんてなかった。
騎士のような服装の男と、侍女のような服装の女に散々褒められ祝われ続ける私を見て、街の人達が微笑ましそうな表情になっていた。
衆目もあって恥ずかしさが更に増す。顔から火が出そうなぐらい熱くなって、途中で思わず私は顔を腕で隠していた。
ここまでしたら流石の二人も私の異変に気づいたようで、
「どうかされましたか、王女殿下?」
「どこか体調が悪いのでしたら、すぐに休める場所に……」
私の顔を覗き込むように屈んだ。
「っ、だから嫌だったの……! 皆そうやって、十分すぎるぐらい私の事を祝うから……っ!!」
恥ずかしくて、でも凄く嬉しくて。全くコントロール出来ない感情に、子供の癇癪のように感情的に言葉を吐き出した。
すると二人は呼吸を止めていた。息をせず、何かとんでもないものでも見てしまったかのように目を見開き固まっていた。しかし程なくして……二人同時に明後日の方を向いたり、自分の顔を思い切り平手打ちしたりと不可解な行動に出た。
それまではテンパっていた私も、突拍子のない二人の行動に思わず落ち着く。まだ顔に熱が残るものの、とにかく彼等の行動に疑問符を浮かべていた。
この人達が突然奇行に走るのはいつもの事だけど、なんというか、今回は毛色が違うな……なんて考えていた時。
ようやく、あの男が現れたのだ。
「おはよ……ふぁ〜、あ……え、何? どういう状況?」
「カイル!」
突然背後からピカッと光が湧き上がったかと思えば、真後ろにカイルの気配が。
それにしても何故誰も彼も背後に現れるのかしら。心臓に悪いわ。
「起き抜けにごめんなさいね、こんな仕事頼んで」
「別にいいよ、今日はお前が主役なんだから」
欠伸をしながら、カイルは何ともスマートな事を言った。欠伸さえしてなければなぁ……ちゃんとかっこいいのに……。
「そんじゃ、俺も早くマクベスタに会いたいしそろそろ行くか」
首をポキポキと鳴らしながら、カイルはサベイランスちゃんを取り出して起動する。人目につかない路地裏に移動し、サベイランスちゃんの機械的なアナウンスの後地面には白い魔法陣が浮かび上がった。
そこから光が立ち上り、視界を白い光が包み込んだら──次に目を開けた時、私達は見慣れた部屋に立っていた。
そこは東宮の裏手、私の特訓場。まだ朝早いからかそこには誰もおらず、私達は正面とは別の裏口から東宮に入った。
数ヶ月ぶりの我が家。相変わらずどこもかしこも綺麗で、ナトラやシュヴァルツが頑張ってくれてるのだと分かる。
この懐かしい景色と懐かしい匂いに、私は改めて、長旅だったなぁと感傷に浸る。まぁ、今日が終わればまだあと半月程は馬車の旅なんだけどね。
「──アミレス! ちゃんと帰って来ておったのか!!」
ドタドタドタ……と足音が近づいて来ると思っていたら、曲がり角からナトラがスライディングをして登場し、私目掛けて飛びついて来た。腹部に強い衝撃を受けて何やらボキベキィッ、と鳴ってはならない音も聞こえた気がするけどね。
「た、ただいま……ナトラ。とりあえず一旦離れてほしいかなー……なんて」
胸から腹部にかけて微妙に痛みを感じるからさ。
「むむ。確かにこれではお前が動きにくかろう、我はオトナじゃからな、ちゃんと配慮だって出来るのじゃ!」
私から離れたナトラは、さあ褒めろと言わんばかりに胸を張り頭をこちらに向けてくる。その翡翠色の頭を撫でてあげると、ナトラはとても嬉しそうに笑った。
それを羨ましがったのか、私の足元でセツが「アォンッ!」と吠える。ここでようやくナトラもセツの存在に気がついたようで、
「なんじゃこの畜生は。違和感、いや……異物感が凄まじいのぅ」
ナトラは目を細めてセツを睨んだ。しかしそんなの何処吹く風とばかりに、セツは前足を私の胸元に当てては、自分も撫でろとばかりに舌を出している。
その可愛さに私の頬も緩み、甘えん坊だなぁと思いながら頭を撫でていた。
「おねぇちゃん帰って来たってマジ!? うわぁ、本当に帰って来てるーーっ!」
どこから聞きつけたのか……ナトラ同様、満面の笑みで曲がり角から飛び出てきたシュヴァルツが、目にも止まらぬ速さでこちらに駆け寄って来た。
そして──、
「ぐふぅっ」
「おねぇちゃんひっさしぶり〜〜! ところでなんでぼくの誕生日忘れてたの? ねぇなんで??」
彼は思い切り私に飛びついた。その拍子にバランスを崩したのだが、真後ろにいたイリオーデが支えてくれたので事なきを得た。
「ご、ごめんねシュヴァルツ……忙しくて……埋め合わせは必ずするから」
「本当? ちゃんと埋め合わせしてくれる?」
「うん、何か欲しいものがあれば言ってちょうだい。私に用意出来るものなら用意するわ」
「……ふぅーん、まぁ、反省してるなら許さない事もない」
シュヴァルツはほくそ笑んで満足げに私から離れたところでセツの存在に気づき、
「何この畜生、すげぇ鼻につく…………」
怪訝な顔でボソリと呟く。
何でナトラもシュヴァルツも犬を畜生って言うのよ。普通に犬って言いなさいよ。
「この子はセツ。大公領で出会ってそのまま拾って来た子だよ」
「たかだか畜生風情が我を差し置きアミレスと過ごすなど……」
「気に食わねぇ……何か分かんないけどとにかく気に食わねぇ……」
セツを見て顔を顰めるナトラとシュヴァルツ。シルフと言い二人といい……何で皆はセツをこうも邪険に扱うのか。
こんなにも可愛いワンちゃんなのにねー。
「そんな事よりも、じゃ! アミレスよ、お前がきちんと今日帰ってくる事を信じて、我等でパーティーの準備をしておいたのじゃ。まだ準備が完璧ではないが……まぁ、よいじゃろう。早く食堂に向かうぞ、アミレス!」
「え、ちょっ、早っ」
私の手を引っ張り、ナトラが走り出す。その見た目以上の力の強さに、私は戸惑いながらも着いて行く。
そして食堂前に辿り着くと忙しなく出入りする侍女達と出会い、皆にただいまと告げて食堂に入ると──……そこではナトラの言う通り、パーティーの準備が行われていた。
更に、私の予想を上回る人がそこにはいた。
騎士のような服装の男と、侍女のような服装の女に散々褒められ祝われ続ける私を見て、街の人達が微笑ましそうな表情になっていた。
衆目もあって恥ずかしさが更に増す。顔から火が出そうなぐらい熱くなって、途中で思わず私は顔を腕で隠していた。
ここまでしたら流石の二人も私の異変に気づいたようで、
「どうかされましたか、王女殿下?」
「どこか体調が悪いのでしたら、すぐに休める場所に……」
私の顔を覗き込むように屈んだ。
「っ、だから嫌だったの……! 皆そうやって、十分すぎるぐらい私の事を祝うから……っ!!」
恥ずかしくて、でも凄く嬉しくて。全くコントロール出来ない感情に、子供の癇癪のように感情的に言葉を吐き出した。
すると二人は呼吸を止めていた。息をせず、何かとんでもないものでも見てしまったかのように目を見開き固まっていた。しかし程なくして……二人同時に明後日の方を向いたり、自分の顔を思い切り平手打ちしたりと不可解な行動に出た。
それまではテンパっていた私も、突拍子のない二人の行動に思わず落ち着く。まだ顔に熱が残るものの、とにかく彼等の行動に疑問符を浮かべていた。
この人達が突然奇行に走るのはいつもの事だけど、なんというか、今回は毛色が違うな……なんて考えていた時。
ようやく、あの男が現れたのだ。
「おはよ……ふぁ〜、あ……え、何? どういう状況?」
「カイル!」
突然背後からピカッと光が湧き上がったかと思えば、真後ろにカイルの気配が。
それにしても何故誰も彼も背後に現れるのかしら。心臓に悪いわ。
「起き抜けにごめんなさいね、こんな仕事頼んで」
「別にいいよ、今日はお前が主役なんだから」
欠伸をしながら、カイルは何ともスマートな事を言った。欠伸さえしてなければなぁ……ちゃんとかっこいいのに……。
「そんじゃ、俺も早くマクベスタに会いたいしそろそろ行くか」
首をポキポキと鳴らしながら、カイルはサベイランスちゃんを取り出して起動する。人目につかない路地裏に移動し、サベイランスちゃんの機械的なアナウンスの後地面には白い魔法陣が浮かび上がった。
そこから光が立ち上り、視界を白い光が包み込んだら──次に目を開けた時、私達は見慣れた部屋に立っていた。
そこは東宮の裏手、私の特訓場。まだ朝早いからかそこには誰もおらず、私達は正面とは別の裏口から東宮に入った。
数ヶ月ぶりの我が家。相変わらずどこもかしこも綺麗で、ナトラやシュヴァルツが頑張ってくれてるのだと分かる。
この懐かしい景色と懐かしい匂いに、私は改めて、長旅だったなぁと感傷に浸る。まぁ、今日が終わればまだあと半月程は馬車の旅なんだけどね。
「──アミレス! ちゃんと帰って来ておったのか!!」
ドタドタドタ……と足音が近づいて来ると思っていたら、曲がり角からナトラがスライディングをして登場し、私目掛けて飛びついて来た。腹部に強い衝撃を受けて何やらボキベキィッ、と鳴ってはならない音も聞こえた気がするけどね。
「た、ただいま……ナトラ。とりあえず一旦離れてほしいかなー……なんて」
胸から腹部にかけて微妙に痛みを感じるからさ。
「むむ。確かにこれではお前が動きにくかろう、我はオトナじゃからな、ちゃんと配慮だって出来るのじゃ!」
私から離れたナトラは、さあ褒めろと言わんばかりに胸を張り頭をこちらに向けてくる。その翡翠色の頭を撫でてあげると、ナトラはとても嬉しそうに笑った。
それを羨ましがったのか、私の足元でセツが「アォンッ!」と吠える。ここでようやくナトラもセツの存在に気がついたようで、
「なんじゃこの畜生は。違和感、いや……異物感が凄まじいのぅ」
ナトラは目を細めてセツを睨んだ。しかしそんなの何処吹く風とばかりに、セツは前足を私の胸元に当てては、自分も撫でろとばかりに舌を出している。
その可愛さに私の頬も緩み、甘えん坊だなぁと思いながら頭を撫でていた。
「おねぇちゃん帰って来たってマジ!? うわぁ、本当に帰って来てるーーっ!」
どこから聞きつけたのか……ナトラ同様、満面の笑みで曲がり角から飛び出てきたシュヴァルツが、目にも止まらぬ速さでこちらに駆け寄って来た。
そして──、
「ぐふぅっ」
「おねぇちゃんひっさしぶり〜〜! ところでなんでぼくの誕生日忘れてたの? ねぇなんで??」
彼は思い切り私に飛びついた。その拍子にバランスを崩したのだが、真後ろにいたイリオーデが支えてくれたので事なきを得た。
「ご、ごめんねシュヴァルツ……忙しくて……埋め合わせは必ずするから」
「本当? ちゃんと埋め合わせしてくれる?」
「うん、何か欲しいものがあれば言ってちょうだい。私に用意出来るものなら用意するわ」
「……ふぅーん、まぁ、反省してるなら許さない事もない」
シュヴァルツはほくそ笑んで満足げに私から離れたところでセツの存在に気づき、
「何この畜生、すげぇ鼻につく…………」
怪訝な顔でボソリと呟く。
何でナトラもシュヴァルツも犬を畜生って言うのよ。普通に犬って言いなさいよ。
「この子はセツ。大公領で出会ってそのまま拾って来た子だよ」
「たかだか畜生風情が我を差し置きアミレスと過ごすなど……」
「気に食わねぇ……何か分かんないけどとにかく気に食わねぇ……」
セツを見て顔を顰めるナトラとシュヴァルツ。シルフと言い二人といい……何で皆はセツをこうも邪険に扱うのか。
こんなにも可愛いワンちゃんなのにねー。
「そんな事よりも、じゃ! アミレスよ、お前がきちんと今日帰ってくる事を信じて、我等でパーティーの準備をしておいたのじゃ。まだ準備が完璧ではないが……まぁ、よいじゃろう。早く食堂に向かうぞ、アミレス!」
「え、ちょっ、早っ」
私の手を引っ張り、ナトラが走り出す。その見た目以上の力の強さに、私は戸惑いながらも着いて行く。
そして食堂前に辿り着くと忙しなく出入りする侍女達と出会い、皆にただいまと告げて食堂に入ると──……そこではナトラの言う通り、パーティーの準備が行われていた。
更に、私の予想を上回る人がそこにはいた。