だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「あーあ、早く会いたいなあ。今年は皇太子の誕生パーティーが無かったから、そういう名目で会いに行く事も出来なかったし。何かと理由をつけて会いに行く事は出来ないだろうか」
「無理。絶対、無理」
「そう硬い事言わないでよ、ラフィリア。僕はただ最愛の人の所に行きたいと言っているだけなんだから」
「無理。主、初恋、敗北」
「何でそんな事言うの……? 君は僕の家族擬きなんだから、ちゃんと応援してよ。僕にようやく、真の意味で家族が出来るかもしれないんだよ?」
ミカリアが詰め寄るも、ラフィリアはどうでもいいとばかりにため息をつくだけ。
(ソモソモ、主ニ家族ナド……国教会ガ、世界ガソウ簡単ニ許ス筈ガナイノニ。ドウシテ、主ハ夢ヲ捨テラレナインダ?)
ラフィリアは思考する。何十年と時が経とうとも決して消え失せない、ミカリアの夢について思い馳せた。
──国教会の聖人は人類の光そのもの。彼が存在する間の人類の存続を保証する、象徴的存在。
それは、ただの人であってはならなかった。まさか不老不死にまで至るとは誰も予想してなかったが……聖人とは人類最強であらねばならず、孤高の存在でなければならない。
故に、聖人には家族や恋人と言った存在は不要。そのような俗的な存在など、聖人には不要とされた。
ミカリアは、ある神託によりこの世に生まれる前から聖人になると定められ、生まれたその瞬間から親元を離れ聖人として育てられた。
彼は両親の顔と名前さえも知らず……最も親しい存在の自律型魔導人形、ラフィリアですら彼の家族ではなく、あくまでもミカリアの従僕であった。
ようやく出来た知人、吸血鬼のアンヘルはその種族故に聖人のミカリアは知人であると公表する事さえ出来ない。
彼を慕う者達は多くあれど、その尊敬は全て『人類最強の聖人ミカリア・ディア・ラ・セイレーン』に向けられたもの。
本当は誰よりも家族や愛情を求める寂しがり屋……そんな、聖人像とは程遠い『ミカリア』自身へ向けられた言葉や尊敬など、この世界には存在しなかった。
誰も、ミカリアの寂しさや夢など考えもしなかった。ミカリア自身の思いなど、気にかけなかったのだ。
遍く人々からの期待と希望と信頼で塗り固められ、本人すらも自分を見失いかけていた。それでもミカリアは自分が壊れぬよう、必死にその夢だけは守って来た。
だが、それはこのように否定され続けてきた。ミカリアがミカリアである限り、叶う筈のないものと。
それでもどうしても諦められず、ミカリアが夢を見続けていたある日の事。
『これからも何度だってお会いしたいです。だって私は、ミカリア様の友達ですから』
ある一人の幼い少女が、ミカリアの手を取り、その目を見て、その言葉を口にした。
初めて、ミカリアの心に歩み寄った人がいた。
百年近い人生の中で、彼がずっと求めていたもの──……友達という存在になったその少女は、ミカリアの夢を知りながら、ミカリアの夢への執着と依存っぷりを知らなかった。
何もかもが正史とは異なるこの世界において、たった一度の彼女の過ちが大きな異変へと繋がる事は、想像に難くない。
あの日……また会おう。とミカリアと指切りをした事が、後々世界を巻き込んだ大問題に発展するだなんて、どこぞの無責任な王女は知る由もなかった。
もしそれを知っていたならば、出来ない約束などしない少女はあのような言動に出なかっただろう。あの時良かれと思ってやった事が、後々己の首を絞める事になるなんて──、彼女は考えもしなかった。
「無理。絶対、無理」
「そう硬い事言わないでよ、ラフィリア。僕はただ最愛の人の所に行きたいと言っているだけなんだから」
「無理。主、初恋、敗北」
「何でそんな事言うの……? 君は僕の家族擬きなんだから、ちゃんと応援してよ。僕にようやく、真の意味で家族が出来るかもしれないんだよ?」
ミカリアが詰め寄るも、ラフィリアはどうでもいいとばかりにため息をつくだけ。
(ソモソモ、主ニ家族ナド……国教会ガ、世界ガソウ簡単ニ許ス筈ガナイノニ。ドウシテ、主ハ夢ヲ捨テラレナインダ?)
ラフィリアは思考する。何十年と時が経とうとも決して消え失せない、ミカリアの夢について思い馳せた。
──国教会の聖人は人類の光そのもの。彼が存在する間の人類の存続を保証する、象徴的存在。
それは、ただの人であってはならなかった。まさか不老不死にまで至るとは誰も予想してなかったが……聖人とは人類最強であらねばならず、孤高の存在でなければならない。
故に、聖人には家族や恋人と言った存在は不要。そのような俗的な存在など、聖人には不要とされた。
ミカリアは、ある神託によりこの世に生まれる前から聖人になると定められ、生まれたその瞬間から親元を離れ聖人として育てられた。
彼は両親の顔と名前さえも知らず……最も親しい存在の自律型魔導人形、ラフィリアですら彼の家族ではなく、あくまでもミカリアの従僕であった。
ようやく出来た知人、吸血鬼のアンヘルはその種族故に聖人のミカリアは知人であると公表する事さえ出来ない。
彼を慕う者達は多くあれど、その尊敬は全て『人類最強の聖人ミカリア・ディア・ラ・セイレーン』に向けられたもの。
本当は誰よりも家族や愛情を求める寂しがり屋……そんな、聖人像とは程遠い『ミカリア』自身へ向けられた言葉や尊敬など、この世界には存在しなかった。
誰も、ミカリアの寂しさや夢など考えもしなかった。ミカリア自身の思いなど、気にかけなかったのだ。
遍く人々からの期待と希望と信頼で塗り固められ、本人すらも自分を見失いかけていた。それでもミカリアは自分が壊れぬよう、必死にその夢だけは守って来た。
だが、それはこのように否定され続けてきた。ミカリアがミカリアである限り、叶う筈のないものと。
それでもどうしても諦められず、ミカリアが夢を見続けていたある日の事。
『これからも何度だってお会いしたいです。だって私は、ミカリア様の友達ですから』
ある一人の幼い少女が、ミカリアの手を取り、その目を見て、その言葉を口にした。
初めて、ミカリアの心に歩み寄った人がいた。
百年近い人生の中で、彼がずっと求めていたもの──……友達という存在になったその少女は、ミカリアの夢を知りながら、ミカリアの夢への執着と依存っぷりを知らなかった。
何もかもが正史とは異なるこの世界において、たった一度の彼女の過ちが大きな異変へと繋がる事は、想像に難くない。
あの日……また会おう。とミカリアと指切りをした事が、後々世界を巻き込んだ大問題に発展するだなんて、どこぞの無責任な王女は知る由もなかった。
もしそれを知っていたならば、出来ない約束などしない少女はあのような言動に出なかっただろう。あの時良かれと思ってやった事が、後々己の首を絞める事になるなんて──、彼女は考えもしなかった。