だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
296.ある少女の変化2
『ねぇ、ミシェル。なんでミシェルはおれを助けてくれたの?』
体中にまだ痣が残る頃、ロイが首を傾げておもむろに聞いてきた。あたしはこれにどう答えたものかと逡巡し、ぽつりと零す。
『……誰かに手を差し伸べてもらえるのって、本当に嬉しい事だから。あの場でロイを見捨てたら、きっとあたし、すごく後悔してたと思うの』
そう言葉が漏れ出た時、あたしの胸はポカポカと温かくなっていた。
よく覚えてないけど……きっとあたしも、昔、誰かに手を差し伸べてもらったのだろう。そしてそれがどうしようもなく嬉しかったんだと思う。
『そっか……ミシェルは優しいんだね。ありがとう、ミシェル。きみのおかげで、おれ、こんなにも元気になれた!』
ロイがニッコリと、明るく笑う。
……──あたしは優しい。あたしのおかげで、ロイは元気になった。だってそうよね、あたしはミシェル・ローゼラだから。
だってあたしは、この世界の主役だから!
何をしてもいい、何をしても許される。自由に我儘に生きたって、もう誰にも怒られない! だって……あたしが世界で一番正しくて、優しくて、愛されるんだから!!
その証明とばかりに、あたしがどんな事をしても、ロイは許してくれた。ロイはあたしの全てを肯定してくれた。
ロイと過ごす時間が増えるようになってからというものの、今思い返せば、あたしは日に日に我儘に……自分勝手な人間になっていたと思う。
だって、何をしても何を言ってもロイはあたしを肯定してくれるから。周りの大人達だってそう……あたしの事を決して怒らない。
だからあたしは、自分が世界の中心にでもなったかのような気分になっていた。
そんなある日の事。あたしは村で偶然、同年代の女の子達の話を聞いてしまった。
『ほんっとにミシェルって最低よね! いっつも男達を周りに集めてさ、お姫さまにでもなったつもりなの?』
『ちょっと可愛いからって私達の事見下してるよね』
『この前なんか、ウチが好きだったマゼルにべたべた触ってさ! マゼルもマゼルよっ、あんなにデレデレして!!』
『ねぇ聞いて、あの女のせいでパパがアタシの事可愛がってくれなくなったの! お前もミシェルぐらい可愛かったらよかったのにな……ってひどくない?!』
『ひどーい!』
『うちも、この前お兄ちゃんがミシェルに一目惚れしたとか言いだして、ナナにミシェルを紹介しろとか言ってきたの。知らないし、ミシェルなんか! って言ったらお兄ちゃんすっごく、怒って……ぐすっ……』
『ナナのお兄ちゃんサイテー!』
『泣かないで、ナナ……』
それはとても聞き覚えのあるもの。覚えてはないのだけど、既視感がある。きっと、記憶にない前世でもよく女の子達の陰口を聞いていたのだろう。
それを聞いて、あたしはいてもたってもいられなくなった。だけどこの時にはもう、ロイと大人達に甘やかされて天狗になった自己中我儘モンスターのあたしだったから。
物陰から姿を見せると、彼女達は『ひぃっ!?』とお化けでも見たような反応をした。あたしが被害者面で大人達にこの事を言いつけるとでも思ってるのか、その顔は今や真っ青だ。
『あんた達はどうせ脇役なのよ、この世界はあたしの為にあるの。邪魔だしどっか行ってくれない?』
随分と酷い言い方をしてしまった。だけど、何も間違った事は言ってない。あたしの近くにいる事で不幸になるのなら、あたしから離れたらいい。
どうしてあたしの事が嫌いなのに、あたしの近くにいるのか。思考も行動も何もかもが制限され縛り付けられている訳でもないのに、どうして自分で道を切り開かないのか。
それが、あたしからしたらとても疑問だった。
それからというものの、あたしは、堰き止められていた感情や欲望が全て解き放たれたかのように振舞っていた。言うなれば女王様のような、そんな感じだったなと自分でも思う。
それでも、皆は許してくれた。世界に許されたから。だからあたしは態度を改める事はなかった。
ただ一つ疑問なのが……あたしはロイにしか話してないのに、神々の加護の事が村中に広まっていて……かつそれをあたしがみんなを見下したいが為に言いふらした。なんて言う風に同年代の女の子達が騒いでいたんだけど。
あたし、ロイにしか話してないし。あたしを妬む誰かがそれを盗み聞きして、あたしを陥れる為に言いふらしたんだ。
本当に最悪なんだけど。どこの世界も、女の子がやる事は変わんないんだね。
もっと最悪だったのは、言いふらしてないのに言いふらした事になってる神々の加護や天の加護属性の事で女の子達から馬鹿にされる事が増えた事。
妄想癖も大概にしなさい! とか、ホラを吹いてまでして人を馬鹿にしたいとか可哀想な人生ねぇ? とか散々言われるようになって……あんまりにも鬱陶しくて、あたしはゲームよりも早く天の加護属性を発現させて神々の加護の実在を証明した。
すると、あたしを嘘つきだ卑しい女だと馬鹿にしてきた子達は皆顔を青くして黙り込んだ。
何せ神殿で認められ、国教会直々に保護する程の事態になったのだ。あたしがどれだけ尊く重要な人物であるかをようやく理解したんだろう。
そんなあたしにこれまで散々暴言や嫌味を吐いてきたのだから、彼女達が自分の行動を悔いるのも無理はない。
体中にまだ痣が残る頃、ロイが首を傾げておもむろに聞いてきた。あたしはこれにどう答えたものかと逡巡し、ぽつりと零す。
『……誰かに手を差し伸べてもらえるのって、本当に嬉しい事だから。あの場でロイを見捨てたら、きっとあたし、すごく後悔してたと思うの』
そう言葉が漏れ出た時、あたしの胸はポカポカと温かくなっていた。
よく覚えてないけど……きっとあたしも、昔、誰かに手を差し伸べてもらったのだろう。そしてそれがどうしようもなく嬉しかったんだと思う。
『そっか……ミシェルは優しいんだね。ありがとう、ミシェル。きみのおかげで、おれ、こんなにも元気になれた!』
ロイがニッコリと、明るく笑う。
……──あたしは優しい。あたしのおかげで、ロイは元気になった。だってそうよね、あたしはミシェル・ローゼラだから。
だってあたしは、この世界の主役だから!
何をしてもいい、何をしても許される。自由に我儘に生きたって、もう誰にも怒られない! だって……あたしが世界で一番正しくて、優しくて、愛されるんだから!!
その証明とばかりに、あたしがどんな事をしても、ロイは許してくれた。ロイはあたしの全てを肯定してくれた。
ロイと過ごす時間が増えるようになってからというものの、今思い返せば、あたしは日に日に我儘に……自分勝手な人間になっていたと思う。
だって、何をしても何を言ってもロイはあたしを肯定してくれるから。周りの大人達だってそう……あたしの事を決して怒らない。
だからあたしは、自分が世界の中心にでもなったかのような気分になっていた。
そんなある日の事。あたしは村で偶然、同年代の女の子達の話を聞いてしまった。
『ほんっとにミシェルって最低よね! いっつも男達を周りに集めてさ、お姫さまにでもなったつもりなの?』
『ちょっと可愛いからって私達の事見下してるよね』
『この前なんか、ウチが好きだったマゼルにべたべた触ってさ! マゼルもマゼルよっ、あんなにデレデレして!!』
『ねぇ聞いて、あの女のせいでパパがアタシの事可愛がってくれなくなったの! お前もミシェルぐらい可愛かったらよかったのにな……ってひどくない?!』
『ひどーい!』
『うちも、この前お兄ちゃんがミシェルに一目惚れしたとか言いだして、ナナにミシェルを紹介しろとか言ってきたの。知らないし、ミシェルなんか! って言ったらお兄ちゃんすっごく、怒って……ぐすっ……』
『ナナのお兄ちゃんサイテー!』
『泣かないで、ナナ……』
それはとても聞き覚えのあるもの。覚えてはないのだけど、既視感がある。きっと、記憶にない前世でもよく女の子達の陰口を聞いていたのだろう。
それを聞いて、あたしはいてもたってもいられなくなった。だけどこの時にはもう、ロイと大人達に甘やかされて天狗になった自己中我儘モンスターのあたしだったから。
物陰から姿を見せると、彼女達は『ひぃっ!?』とお化けでも見たような反応をした。あたしが被害者面で大人達にこの事を言いつけるとでも思ってるのか、その顔は今や真っ青だ。
『あんた達はどうせ脇役なのよ、この世界はあたしの為にあるの。邪魔だしどっか行ってくれない?』
随分と酷い言い方をしてしまった。だけど、何も間違った事は言ってない。あたしの近くにいる事で不幸になるのなら、あたしから離れたらいい。
どうしてあたしの事が嫌いなのに、あたしの近くにいるのか。思考も行動も何もかもが制限され縛り付けられている訳でもないのに、どうして自分で道を切り開かないのか。
それが、あたしからしたらとても疑問だった。
それからというものの、あたしは、堰き止められていた感情や欲望が全て解き放たれたかのように振舞っていた。言うなれば女王様のような、そんな感じだったなと自分でも思う。
それでも、皆は許してくれた。世界に許されたから。だからあたしは態度を改める事はなかった。
ただ一つ疑問なのが……あたしはロイにしか話してないのに、神々の加護の事が村中に広まっていて……かつそれをあたしがみんなを見下したいが為に言いふらした。なんて言う風に同年代の女の子達が騒いでいたんだけど。
あたし、ロイにしか話してないし。あたしを妬む誰かがそれを盗み聞きして、あたしを陥れる為に言いふらしたんだ。
本当に最悪なんだけど。どこの世界も、女の子がやる事は変わんないんだね。
もっと最悪だったのは、言いふらしてないのに言いふらした事になってる神々の加護や天の加護属性の事で女の子達から馬鹿にされる事が増えた事。
妄想癖も大概にしなさい! とか、ホラを吹いてまでして人を馬鹿にしたいとか可哀想な人生ねぇ? とか散々言われるようになって……あんまりにも鬱陶しくて、あたしはゲームよりも早く天の加護属性を発現させて神々の加護の実在を証明した。
すると、あたしを嘘つきだ卑しい女だと馬鹿にしてきた子達は皆顔を青くして黙り込んだ。
何せ神殿で認められ、国教会直々に保護する程の事態になったのだ。あたしがどれだけ尊く重要な人物であるかをようやく理解したんだろう。
そんなあたしにこれまで散々暴言や嫌味を吐いてきたのだから、彼女達が自分の行動を悔いるのも無理はない。