だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
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「まさか、見知らぬ子供達に治癒魔法を使えって言われるとは思わなかったな……」

 急ぐように自分の横を通り過ぎて行った男の背中を見送りながら、リードは呟いた。
 もし相手に怪我をさせてしまったのなら治さないと、と思い提案した事だったのだが、その相手から返ってきたのは予想外の言葉だったのだ。

「……事情は良く分からないが、まぁ、引き受けたからにはちゃんとやらないと」

 ディオのあの切実な表情と言葉は嘘などとはかけ離れたものだった。だからこそ、乗りかかった船だとリードはそれを承諾した。
 リードは急ぎ足で噴水広場へと向かった。その道中、何やら戦っている者達を見てリードは目を丸くした。

(何あれ、人が戦ってる……フォーロイト帝国の帝都ってこんなに治安悪かったか……?)

 背の低い猫目の青年が、短剣《ナイフ》を両手に持ち相手を翻弄する。
 無表情な男が、青い肩下までの長髪を揺らして、刃こぼれしている大剣を構う事無く振りかざす。
 獣の特徴を持つ黒髪の青年が、その獰猛な爪で相手を切り裂かんとする。
 筋骨隆々の男が、相手を拳ひとつで地に沈める。
 眉間に皺を寄せる青年が、毒が塗りたくられたナイフを相手に向けて投擲した。
 そんな彼等を援護するように、薄桃色の髪の青年が魔法を発動する。
 異様に戦闘慣れしている彼等の猛攻に、その相手をしている者達は手も足も出なかった。
 巻き込まれたら大変だな、と思っていたリードだが……どうやら彼等は相手以外眼中に無いらしく、難なくその横を通り過ぎる事が出来た。
 そして暫く歩くうちに、大きな噴水と大勢の子供達を視認する。
 リードは、あれか、と判断してその中の数少ない大人に声をかけた。

「少しいいかな、ディオと言う人に頼まれて子供達を治癒しに来たのだけど──」

 リードが声をかけた濃い赤髪の短髪の女性は、ディオと言う名前を聞いて疑う事無く、「あの辺りだ!」と怪我をしている子供達の元へと案内した。

「怪我をした子は僕の所においで、可能な限り治してみせるよ」

 子供達に向けてそう笑いかけ、子供達は続々とリードの元に駆け寄ってゆく。
 リードは予想以上に現れる怪我をした子供達に、完全なる善意で、絶え間なく治癒魔法を施していったのであった。
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