だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「お前がそこまで言ってくれるのなら、もっと頑張らないとな」
左手を愛剣の柄に乗せ、右手を口の前に置いて彼はくしゃりと笑った。ゲームでも見たマクベスタの仕草と表情に、私とカイルはやや興奮気味になる。
だがここでふと思う。最近……というか数ヶ月前から、マクベスタの雰囲気が何だか少し変わった気がする。
元々彼はそこまで表情豊かな訳ではないのに、最近は目が合う度に優しく笑いかけてくるし、以前よりも社交的になっているように思える。それ自体はとてもいい事だし、マクベスタももう十六歳だもんね、大人になったんだなあ。と思っていたのだけど。
なんというか……こう、何かが違うのよね。違和感っていうの? ミステリアスというか、影がある感じというか。
まあ、マクベスタ自身は元々薄らと影のあるキャラクターだからそれ自体はおかしくない。でも彼の闇部分になる筈だった祖国の滅亡は私が阻止したから、マクベスタは純粋無垢な明るいキャラクターになった訳だ。
じゃあなんで、今目の前にいるマクベスタはこんなに変な感じなんだろう。
「……ねぇ、マクベスタ。もしかして何かあっ──」
どうしてもこの疑問が胸につっかえるので、マクベスタに話を聞こうとしたのだが、そこでシュヴァルツの声に阻まれて。
「メイシアー、一旦帰るならそろそろ送るけどぉ」
「あ、えっと。それではアミレス様、またお昼頃に!」
シュヴァルツに名前を呼ばれ、メイシアがぺこりと頭を下げて踵を返す。
メイシアと共にハイラとディオも一旦帰るようで、シュヴァルツが瞬間転移で三人を送りに行った。
まあ、マクベスタはまだすぐそばにいるのだから、聞き直せばいいかと思ってマクベスタを見上げる。彼はすぐに私の視線に気づいたようで、柔らかく微笑んだ。
「ねぇ、マクベスタ。最近何か変な事とかあった?」
「変な事? また随分と唐突だな……特に無いが、どうかしたのか?」
「……ううん、何でもない」
マクベスタは至っていつも通りだった。それが何だか、酷く歪で……疑いは晴れないまま、私の中に残り続ける。
この違和感は何なのだろう。そう思いじっとマクベスタの顔を見つめていたら、マクベスタが何かに気づいたように目を少し見開いて、
「少し目を閉じてくれないか、アミレス」
目と鼻の先まで顔を近づけて来た。それに少しドキッとしながらも、戸惑いつつ言われた通りにぎゅっと目蓋を閉じる。
一体何なんだ急に! 何なんだろうかこの乙女ゲームみたいなシチュエーションは!
目を閉じているから何が起きようとしているのか全く分からない状況で、恋愛経験皆無の私はいたずらに鼓動を早くする。
こんな状況で有り得るシチュエーションを、なけなしの乙女ゲーム知識から必死に引っ張り出しては、更に鼓動を早くした。
「…………よし、取れたぞ。もう目を開けても構わないよ」
温かいものが目の辺りに触れたかと思えば、彼の声が遠ざかる。恐る恐る目を開くと、マクベスタの指には小さい光がキラリと見えて。
「目の横に睫毛がついていたんだ。突然目を閉じろだなんて言って、困惑させて悪かったな」
「あ、そ……そうなんだ。どうもありがとう……」
ドキドキしたのが申し訳無くなるぐらい、親切な理由だった。というかよく気づいたわね。私の髪って結構不透明度が低めだから、光を受けたりしないと肌についた睫毛なんてそうそう見えないと思うのだけど。
最強の剣士になる予定の男はやっぱり違うわ〜〜。
「それじゃあ、昼前までにオレも自分の用事を片付けておくよ」
「ああうん。分かったわ、また後で」
マクベスタがそそくさと部屋を後にすると、その背中を追うようにカイルも出て行った。ナトラも「我も仕事に戻るかのぅ」と呟いて、掃除に向かったようだ。
そうして。部屋には私とセツ、シルフとイリオーデとアルベルトが残った。
そこで気づく。シルフがめっちゃ不機嫌。腕を組み唇を尖らせて、ボクは不機嫌ですと顔に書いている。
そのままススス……と静かにこちらに近寄って来ては、背後から両腕でしっかりとホールドされた。
「──ボクも行く。絶対にボクもついていくからね」
「え? でもシルフが街を歩けば流石にめだ……」
「ついていくもん。絶対、何が何でもついていくから」
「いや絶対目立つ……」
「ついていくから!」
まるで幼い子供のようにシルフが駄々をこねる。何がそんなに気に障ったのか、シルフはこんな感じで暫くの間ワガママモードだった。
左手を愛剣の柄に乗せ、右手を口の前に置いて彼はくしゃりと笑った。ゲームでも見たマクベスタの仕草と表情に、私とカイルはやや興奮気味になる。
だがここでふと思う。最近……というか数ヶ月前から、マクベスタの雰囲気が何だか少し変わった気がする。
元々彼はそこまで表情豊かな訳ではないのに、最近は目が合う度に優しく笑いかけてくるし、以前よりも社交的になっているように思える。それ自体はとてもいい事だし、マクベスタももう十六歳だもんね、大人になったんだなあ。と思っていたのだけど。
なんというか……こう、何かが違うのよね。違和感っていうの? ミステリアスというか、影がある感じというか。
まあ、マクベスタ自身は元々薄らと影のあるキャラクターだからそれ自体はおかしくない。でも彼の闇部分になる筈だった祖国の滅亡は私が阻止したから、マクベスタは純粋無垢な明るいキャラクターになった訳だ。
じゃあなんで、今目の前にいるマクベスタはこんなに変な感じなんだろう。
「……ねぇ、マクベスタ。もしかして何かあっ──」
どうしてもこの疑問が胸につっかえるので、マクベスタに話を聞こうとしたのだが、そこでシュヴァルツの声に阻まれて。
「メイシアー、一旦帰るならそろそろ送るけどぉ」
「あ、えっと。それではアミレス様、またお昼頃に!」
シュヴァルツに名前を呼ばれ、メイシアがぺこりと頭を下げて踵を返す。
メイシアと共にハイラとディオも一旦帰るようで、シュヴァルツが瞬間転移で三人を送りに行った。
まあ、マクベスタはまだすぐそばにいるのだから、聞き直せばいいかと思ってマクベスタを見上げる。彼はすぐに私の視線に気づいたようで、柔らかく微笑んだ。
「ねぇ、マクベスタ。最近何か変な事とかあった?」
「変な事? また随分と唐突だな……特に無いが、どうかしたのか?」
「……ううん、何でもない」
マクベスタは至っていつも通りだった。それが何だか、酷く歪で……疑いは晴れないまま、私の中に残り続ける。
この違和感は何なのだろう。そう思いじっとマクベスタの顔を見つめていたら、マクベスタが何かに気づいたように目を少し見開いて、
「少し目を閉じてくれないか、アミレス」
目と鼻の先まで顔を近づけて来た。それに少しドキッとしながらも、戸惑いつつ言われた通りにぎゅっと目蓋を閉じる。
一体何なんだ急に! 何なんだろうかこの乙女ゲームみたいなシチュエーションは!
目を閉じているから何が起きようとしているのか全く分からない状況で、恋愛経験皆無の私はいたずらに鼓動を早くする。
こんな状況で有り得るシチュエーションを、なけなしの乙女ゲーム知識から必死に引っ張り出しては、更に鼓動を早くした。
「…………よし、取れたぞ。もう目を開けても構わないよ」
温かいものが目の辺りに触れたかと思えば、彼の声が遠ざかる。恐る恐る目を開くと、マクベスタの指には小さい光がキラリと見えて。
「目の横に睫毛がついていたんだ。突然目を閉じろだなんて言って、困惑させて悪かったな」
「あ、そ……そうなんだ。どうもありがとう……」
ドキドキしたのが申し訳無くなるぐらい、親切な理由だった。というかよく気づいたわね。私の髪って結構不透明度が低めだから、光を受けたりしないと肌についた睫毛なんてそうそう見えないと思うのだけど。
最強の剣士になる予定の男はやっぱり違うわ〜〜。
「それじゃあ、昼前までにオレも自分の用事を片付けておくよ」
「ああうん。分かったわ、また後で」
マクベスタがそそくさと部屋を後にすると、その背中を追うようにカイルも出て行った。ナトラも「我も仕事に戻るかのぅ」と呟いて、掃除に向かったようだ。
そうして。部屋には私とセツ、シルフとイリオーデとアルベルトが残った。
そこで気づく。シルフがめっちゃ不機嫌。腕を組み唇を尖らせて、ボクは不機嫌ですと顔に書いている。
そのままススス……と静かにこちらに近寄って来ては、背後から両腕でしっかりとホールドされた。
「──ボクも行く。絶対にボクもついていくからね」
「え? でもシルフが街を歩けば流石にめだ……」
「ついていくもん。絶対、何が何でもついていくから」
「いや絶対目立つ……」
「ついていくから!」
まるで幼い子供のようにシルフが駄々をこねる。何がそんなに気に障ったのか、シルフはこんな感じで暫くの間ワガママモードだった。