だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 そうこうしているうちに次の目的地、ララルス邸に到着する。これまた数分待っていると、開かれた扉からハイラが入って来た。
 不思議な事に、メイシアが入って来た方とは逆側……私側の扉から入って来た。そして並んで座る私達を見て、にこりとしたり顔で彼女は笑う。

「ルティに確認した甲斐がありました。姫様、お隣失礼しても宜しいでしょうか?」
「あぁ、うん。どうぞどうぞ」

 てっきりメイシア側から入って来ると思っていたので、こちらに詰めていたのだが……改めてメイシアに詰めてもらい、ハイラが座るスペースを作る。
 ハイラとメイシアは三人で並んで座る事を予感していたのか、どちらもボリュームの無いドレスで来ていたので、特に狭さなども感じる事無く座れた。
 二人との距離がやけに近いのは、きっと三人で並んで座ってるからだろうな。でも何だか楽しいからいっか!
 楽観的な私はこのまま馬車の時間を楽しむ事にした。

「……ねぇマクベスタ、あれどう思う?」
「アミレスが楽しそうだな」
「あれをそれで済ますの??」
「まぁ……彼女が楽しそうだからいいんじゃないか」
「むぅ、君はこっち側だと思ってたのに。ハイラ達め……同性だからって自由過ぎないか? ずるくない?」
「彼女が嫌がってたならば、オレとて何か言っただろうが……見た所、彼女は楽しそうだし嬉しそうじゃないか。アイツが笑っていられるなら、それでいいだろう」
「やっぱり君とは妙に価値観が合わないな」
「そもそも、精霊と人間の価値観が合う訳がないだろうに。シルフも面白い事を言うな」
「…………なんか、君、変わったよね」
「……変わらざるを得なかったんだよ」

 私達が三人で仲良く話す間、シルフとマクベスタもまた二人で何か話しているようだった。ただ、メイシアの話に集中していたからその内容までは分からないけれど。
 そして、西部地区──貧民街に到着した。
 貧民街とは言ったものの……ここ二年近くの貧民街大改造計画によって、今や貧民街の大部分が清掃・改装され、貧民街と呼ぶにはあまりにも綺麗で発展した地区へと大変身した。
 諸費用や給金は私とララルス侯爵家で折半。建材や人材はシャンパー商会が用意してくれるので、こちらも特に問題は無し。次々に建築されてゆく様々な施設は、貧民街に住む人達のマンパワーによってあっという間に貧民街を埋めつくしていく。

 沢山の集合住宅や、孤児院や託児所。大衆浴場やお手頃価格の診療所。他にも住民の要望を聞いて子供が遊べるような遊具のある公園や、低価格で高品質な日用品を購入出来るスーパーのようなものも作った。
 スーパーのようなものに関しては、まさか本当に実現するとは思わなかった。百均のようなものを作りたいなぁと思い、シャンパージュ伯爵にダメ元で相談してみたところ、『面白そうですね!』と乗り気になってくれたのだ。
 あの時のシャンパージュ伯爵の顔は、まるでごちそうを目の前にした子供のようだった。

 当然、そんな誰もが利用したがるような店が出来てしまっては元々あった大通りなどの直売所等の商売が成り立たなくなる。その問題を解決する為に、シャンパー商会が帝都の商業組合で色々と企画提案し、帝都中の店と業務提携を結んで強引に解決した。
 シャンパー商会経営のスーパーで取り扱う品々の一部を帝都にある自営業の各店舗から定価+手数料で仕入れる事で、各店舗の売り上げダウンを阻止し、 仕入れた物はシャンパー商会の方で加工等してスーパーで売り出せる最低ラインの、お手頃価格の商品にする。
 シャンパー商会内で自己完結するよりも、かなり手間も金もかかるのだが……シャンパージュ伯爵は、

『我が商会のブランド力があれば多少値段が張ろうとも、誰もが買い求めますよ。それに……後々に発生しかねない厄介事を考えると、ね?』

 淡々と、ニコリと微笑んだ。
 帝国市場を支配していると言っても過言ではない商会の若き天才会長なだけあって、本当に恐ろしい。理想を叶える為の手段と実力を兼ね備えているのだから、本当に凄まじい。
 というか、『我が商会の力を舐めないで下さいまし、王女殿下。例えどんな状況どんな品であろうとも適正な価格で必ず売り切る。それが、我々の信条ですので。そもそも売れない品など用意しませんよ』って……怖いわあの人。
 流石はシャンパージュの鬼才、ホリミエラ・シャンパージュ氏…………マジであの人が味方でよかった〜〜!
< 1,125 / 1,368 >

この作品をシェア

pagetop