だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
307.赤熊の百合4
♢♢
視察を初めて数時間。
途中で私兵団の皆と合流し、エリニティがメイシアに告白して玉砕したり、ジェジが豪快な腹の虫を鳴かせたりと色々あったりしつつも、皆で一緒に街を見て回っていた。
そんな中、整備された空き地の前を通った。ディオ達が昔から訓練に使っていたという例の空き地だ。
ここでふと、ディオが提案したのだ。
「なぁ、マクベスタ。せっかくだからあん時の再戦といかねぇか?」
「あの時……と言うと、お前達をアミレスの私兵団として認めるかの試験をした、あの時の事か」
「ああ。俺達もあん時よりずっと強くなったからな、もう少しいい戦いが出来ると思うんだが……どうだ?」
「オレもあの日より強くなってはいるが……」
その提案とはまさかのリベンジマッチ。イリオーデ含め私兵団全員が揃っており、かつマクベスタもいる。あれからもう二年近く経っているし、確かにリベンジマッチとしてはまたとない機会だと思う。
マクベスタはちらりとこちらに視線を向けた。その視線の意図に気づき、私は勿論ゴーサインを出す。
「いいわよ、戦っても。視察もほとんど終わったようなものだし」
私の視察を妨げるのではと危惧していたらしいマクベスタは、この言葉に安堵し、「アミレスからの許可も降りたし……やるか」と乗り気になったようだ。
私の後ろに控えていたイリオーデにも「ほら、貴方も行ってきなさいな」と告げて、きちんとあの日のリベンジマッチを演出する。
見学メンバーは少し代わり、私とシルフとハイラはあの日と変わらないが、新たにメイシアとアルベルトを加えた見学メンバーとなった。
さて……あれから二年。皆の実力が如何程に成長したのか、とくと見させて貰いましょうか。
「アミレス、少しいいか?」
ねぇちょっとマクベスタ、ニンマリとほくそ笑んだ瞬間にやって来ないでよ。私だけ先走ってて恥ずかしいじゃないの。
「これ……預かっててくれないか」
「あら、あの時とは逆なのね」
「ああ。今の彼等相手に鞘だけ、というのは侮辱に当たるだろうからな」
マクベスタから渡されたのは彼がずっと使っている愛剣の鞘。今日はソードベルトを着けて来なかったようで、鞘が邪魔らしいのだ。
私はそれを預かり、あの時のように彼に激励の言葉を贈る。
「怪我しないように気をつけてね」
「……あぁ」
マクベスタはあの時と同じ返事をした。だけど、その表情や声音はあの時と全然違う。あの時のマクベスタの小さな微笑みは、今や儚くもカッコイイ微笑へと変わっていた。その声だって、あの時の明るく元気な声音から、酸いも甘いも飲み干したかのような低く落ち着いた声音に変わっている。
これが、二年の変化って事……? 私の知らないうちに、やっぱりマクベスタが凄く変化している。…………何だろう、この、置いてかれたような気持ちは。
「メイシアちゃーん! オレの活躍見ててねー!」
「遠慮しておきます。わたしはアミレス様を鑑賞するのに忙しいので」
エリニティがメイシアに向けてハートを飛ばすも、メイシアはそれをノールックで弾き飛ばす。エリニティも本当に凄い執着ね……ここまで脈無いのによく何度も立ち上がれるわね。
というか、本当にメイシアからの視線が熱いわ。
「そんじゃ、ま……お手柔らかに頼むぜ、マクベスタおーじ」
「手加減なんて、今のオレには出来ないんだが……何とかして致命傷は回避してくれ」
やけに物騒な事を呟きながらも、リベンジマッチは始まった。二年前と比べて、私兵団の面々の成長は目まぐるしい。動きに無駄がなくなってるし、純粋に筋肉量が増えたのか剣筋や威力も安定している。
魔法だって威力を増し、発動までの時間が大幅に短縮されている。その複雑さも増しているからか、中々に厄介そうだ。
私兵団の面々について何より注目すべきは、やはりそのチームワークだろう。掛け声や合図すらも無く、長年培って来た絆がその連携を可能にしていた。
立て続けに来る、訓練された私兵団の連携攻撃には流石のマクベスタも防戦一方になる。そう、私達は思っていた。
あの時だってそうだった。流石にマクベスタでも厳しいのではと思い、結果的に彼の強さに度肝を抜かれた。
勿論今回も──私は、マクベスタ・オセロマイトという男の強さに圧倒されたのだ。
視察を初めて数時間。
途中で私兵団の皆と合流し、エリニティがメイシアに告白して玉砕したり、ジェジが豪快な腹の虫を鳴かせたりと色々あったりしつつも、皆で一緒に街を見て回っていた。
そんな中、整備された空き地の前を通った。ディオ達が昔から訓練に使っていたという例の空き地だ。
ここでふと、ディオが提案したのだ。
「なぁ、マクベスタ。せっかくだからあん時の再戦といかねぇか?」
「あの時……と言うと、お前達をアミレスの私兵団として認めるかの試験をした、あの時の事か」
「ああ。俺達もあん時よりずっと強くなったからな、もう少しいい戦いが出来ると思うんだが……どうだ?」
「オレもあの日より強くなってはいるが……」
その提案とはまさかのリベンジマッチ。イリオーデ含め私兵団全員が揃っており、かつマクベスタもいる。あれからもう二年近く経っているし、確かにリベンジマッチとしてはまたとない機会だと思う。
マクベスタはちらりとこちらに視線を向けた。その視線の意図に気づき、私は勿論ゴーサインを出す。
「いいわよ、戦っても。視察もほとんど終わったようなものだし」
私の視察を妨げるのではと危惧していたらしいマクベスタは、この言葉に安堵し、「アミレスからの許可も降りたし……やるか」と乗り気になったようだ。
私の後ろに控えていたイリオーデにも「ほら、貴方も行ってきなさいな」と告げて、きちんとあの日のリベンジマッチを演出する。
見学メンバーは少し代わり、私とシルフとハイラはあの日と変わらないが、新たにメイシアとアルベルトを加えた見学メンバーとなった。
さて……あれから二年。皆の実力が如何程に成長したのか、とくと見させて貰いましょうか。
「アミレス、少しいいか?」
ねぇちょっとマクベスタ、ニンマリとほくそ笑んだ瞬間にやって来ないでよ。私だけ先走ってて恥ずかしいじゃないの。
「これ……預かっててくれないか」
「あら、あの時とは逆なのね」
「ああ。今の彼等相手に鞘だけ、というのは侮辱に当たるだろうからな」
マクベスタから渡されたのは彼がずっと使っている愛剣の鞘。今日はソードベルトを着けて来なかったようで、鞘が邪魔らしいのだ。
私はそれを預かり、あの時のように彼に激励の言葉を贈る。
「怪我しないように気をつけてね」
「……あぁ」
マクベスタはあの時と同じ返事をした。だけど、その表情や声音はあの時と全然違う。あの時のマクベスタの小さな微笑みは、今や儚くもカッコイイ微笑へと変わっていた。その声だって、あの時の明るく元気な声音から、酸いも甘いも飲み干したかのような低く落ち着いた声音に変わっている。
これが、二年の変化って事……? 私の知らないうちに、やっぱりマクベスタが凄く変化している。…………何だろう、この、置いてかれたような気持ちは。
「メイシアちゃーん! オレの活躍見ててねー!」
「遠慮しておきます。わたしはアミレス様を鑑賞するのに忙しいので」
エリニティがメイシアに向けてハートを飛ばすも、メイシアはそれをノールックで弾き飛ばす。エリニティも本当に凄い執着ね……ここまで脈無いのによく何度も立ち上がれるわね。
というか、本当にメイシアからの視線が熱いわ。
「そんじゃ、ま……お手柔らかに頼むぜ、マクベスタおーじ」
「手加減なんて、今のオレには出来ないんだが……何とかして致命傷は回避してくれ」
やけに物騒な事を呟きながらも、リベンジマッチは始まった。二年前と比べて、私兵団の面々の成長は目まぐるしい。動きに無駄がなくなってるし、純粋に筋肉量が増えたのか剣筋や威力も安定している。
魔法だって威力を増し、発動までの時間が大幅に短縮されている。その複雑さも増しているからか、中々に厄介そうだ。
私兵団の面々について何より注目すべきは、やはりそのチームワークだろう。掛け声や合図すらも無く、長年培って来た絆がその連携を可能にしていた。
立て続けに来る、訓練された私兵団の連携攻撃には流石のマクベスタも防戦一方になる。そう、私達は思っていた。
あの時だってそうだった。流石にマクベスタでも厳しいのではと思い、結果的に彼の強さに度肝を抜かれた。
勿論今回も──私は、マクベスタ・オセロマイトという男の強さに圧倒されたのだ。