だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「痛いに決まってるじゃん……ずっと、ずっと我慢してたのに。どうして痛いのを思い出させたの」

 ずっと我慢してた事がバレて、何だか恥ずかしくて、私は意味不明にディオさんに八つ当たりしていた。
 しかしディオさんは嫌な顔一つせず、優しい笑顔で、

「悪かったな、俺は気が利かない男なんだわ」

 と言いながら、私の頭に大きくてゴツゴツした手を置いた。そして、

「……ここまでよく頑張ったな。もうガキは休め」

 と頭をわしゃわしゃと掻き乱される。この世界の人は皆それするけど流行ってるのかしら?!
 ……ごほん。それはともかく。急にそうやって子供扱いされてしまい、私は不思議な気持ちになった。
 そんな気持ちのままぼーっとしていると、突然ディオさんが私を抱え上げた。

「んなっ!?」
「……お前、女なら『きゃっ』とか言うべきだろうが。つくづく変わったガキだな」

 片手で軽々と私を抱えたディオさんは、残念そうに、はぁ……とため息をついた。
 悪かったわね女の子っぽくなくて! と怒りを顔に宿す。さっきまで凄くいい人って感じだったのになんなんだこの人!!
 苛立ちを込めたキツい視線をディオさんに送ってみる。しかし全然気にもとめてくれない。

「そんな怒んなよ。おいそっちのガキ……お前は怪我とかして無いか?」

 ディオさんはメイシアを見下ろしてそう確認した。メイシアは小さく左右に首を振って答えた。

「そうか。じゃあ自分で歩けるな?」

 ディオさんは再度確認をとる。それにメイシアはこくりと頷いた。これらの確認……もしやこれは……。

「……私の為なの?」
「あ? だって痛ぇんだろ、足。ならこうした方が痛くならないだろ」

 ディオさんはさり気なくそう言って、歩きだそうとする。クソ野郎が置いて行かれそうになったので、私は慌ててディオさんを呼び止める。

「待ってディオさん! クソ野ろ……じゃなかった、あの男も連れて行って欲しいの!」
「何でだよ」

 ディオさんがどうしてとばかりにこちらを見てくる。私はそれに、元々考えていたクソ野郎の使い道を答えた。

「あの男かなり悪い人だから、警備隊に突き出せばきっと謝礼金を貰える筈です。もし良ければ」

 空いている手で親指を立ててここぞとばかりにどやぁ、と笑う。
 そんな私を見て、ディオさんは「ふはっ」と笑い声を漏らした。
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