だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
314.薔薇の君へ、花車を4
♢♢
「──っ、きたぁああああああっ…………! ねぇ見た? シュヴァルツ見たわよね今の! ついに求婚したわよ!!」
「うんうん、見てたよ。それにしても何でおねぇちゃんはそんな楽しそうなの」
「だって求婚よ? こんなロマンチックなもの、滅多に見られないじゃないの! ああ、結婚式はいつになるのかしら〜。神前式とかになるのなら、私、進行とか頑張っちゃおうかな〜〜」
バドールがクラリスへと求婚の言葉を告げた頃。
少し離れた席にてアミレスは随分とまあ、はしゃいでいた。まるで大人気アイドルを目の前にしたファンかのような、はしゃぎっぷりである。
認識阻害があるからかどうにも安心してしまい、感情のセーブが出来なかったようだ。
愛が何だか分からないと言う割に、求婚イベントの出歯亀にはやけに乗り気で全力で楽しむその姿に、シュヴァルツとイリオーデは激しく困惑していた。
(いやいくらなんでもはしゃぎすぎだろ。たかが求愛の一つや二つでそこまで楽しめるモンかァ……? まーじでコイツがよく分かんねェ。まぁそこが面白いんだけどよ)
(うむ、王女殿下が楽しそうで何よりだ)
……訂正しよう。イリオーデは特に困惑していなかった。
アミレスの全てを肯定するこの男は、突然のはしゃぎっぷりも元気だなの一言で片付けてしまう。あまつさえそれを良しとする。
もう駄目だこの男、駄目人間製造機だ。
「……あれ、何か雰囲気が予想と違う感じだけど」
「本当だな。クラリスもどうしてすぐに返事をしないのか……」
じっとバドールとクラリスの様子を眺めていた、ルーシアンがボソリと呟くと、シャルルギルも眼鏡を指で押し上げてそちらに意識を向けた。
そこではクラリスがバドールに向けて何かを語りかけているところで。
もしかしてこの求婚、失敗するんじゃ──?
そんな不安が全員の頭に同時に過ぎった、その時だった。
(クラリスって雨が苦手なんだ、知らなかったな)
彼女の雨が嫌いという旨の発言を聞き、アミレスはふーん。と小さく鼻を鳴らす。
そしてチラリ、と窓の外に目を向けた。外は連日の悪天候でどんよりとした雲が積み重なり、絶えず雨を流し続けている。空を見上げるだけで気が滅入るような天気に、アミレスも悩まされているものだ。
(うーん、やっぱり上司として部下の記念すべき日は全力で祝ってあげたいしなぁ。サプライズとかしちゃおうかしら、出来るか分かんないけど)
そしてアミレスは集中する。彼女は今から、神業にも等しい芸当をやってのけようとしているのである。
あまりに途方も無いサプライズを成し遂げる為に、彼女は深く、深く、集中していた。
「あっ、クラリスが指輪受け取った! これはオッケーって事? 求婚成功って事?」
シュヴァルツがアミレスの服の袖を引っ張り、バドールとクラリスを指さす。
しかしアミレスはぼーっとしたような顔のまま、びくりとも反応しない。その為シュヴァルツは、バドールとクラリスの事よりも、アミレスに気を取られた。
(──なんだコイツ、急に黙りこくって……やけに辺りの魔力がここに集まって来てるが、何するつもりなんだ?)
アミレスが成そうとしている何かへと思いを馳せ、シュヴァルツは疑問符を浮かべながらも期待を募らせる。
そして、バドールとクラリスがお互いに幸せにすると誓い合った時。
「……──我が手に水ありけり。いと尊き天の雫よ、いと脆き生命の救い手よ。我が祈りを此処に願い奉る。其の恩恵、其の慈愛、全てを我が元に。どうか……我が声を聞き届け給え」
自然な動きで指と指を絡ませて、アミレスは祈祷するかのように淡々と、しかして荘厳に詠唱した。
するとこの辺り一帯で雨がピタリと止み、空を覆っていた暗雲は霧散した。夕陽が顔を覗かせた事により、夕焼けの前には虹が架かっている。
何とも美しく、目を奪われるような──異様な現象だった。
「──っ、きたぁああああああっ…………! ねぇ見た? シュヴァルツ見たわよね今の! ついに求婚したわよ!!」
「うんうん、見てたよ。それにしても何でおねぇちゃんはそんな楽しそうなの」
「だって求婚よ? こんなロマンチックなもの、滅多に見られないじゃないの! ああ、結婚式はいつになるのかしら〜。神前式とかになるのなら、私、進行とか頑張っちゃおうかな〜〜」
バドールがクラリスへと求婚の言葉を告げた頃。
少し離れた席にてアミレスは随分とまあ、はしゃいでいた。まるで大人気アイドルを目の前にしたファンかのような、はしゃぎっぷりである。
認識阻害があるからかどうにも安心してしまい、感情のセーブが出来なかったようだ。
愛が何だか分からないと言う割に、求婚イベントの出歯亀にはやけに乗り気で全力で楽しむその姿に、シュヴァルツとイリオーデは激しく困惑していた。
(いやいくらなんでもはしゃぎすぎだろ。たかが求愛の一つや二つでそこまで楽しめるモンかァ……? まーじでコイツがよく分かんねェ。まぁそこが面白いんだけどよ)
(うむ、王女殿下が楽しそうで何よりだ)
……訂正しよう。イリオーデは特に困惑していなかった。
アミレスの全てを肯定するこの男は、突然のはしゃぎっぷりも元気だなの一言で片付けてしまう。あまつさえそれを良しとする。
もう駄目だこの男、駄目人間製造機だ。
「……あれ、何か雰囲気が予想と違う感じだけど」
「本当だな。クラリスもどうしてすぐに返事をしないのか……」
じっとバドールとクラリスの様子を眺めていた、ルーシアンがボソリと呟くと、シャルルギルも眼鏡を指で押し上げてそちらに意識を向けた。
そこではクラリスがバドールに向けて何かを語りかけているところで。
もしかしてこの求婚、失敗するんじゃ──?
そんな不安が全員の頭に同時に過ぎった、その時だった。
(クラリスって雨が苦手なんだ、知らなかったな)
彼女の雨が嫌いという旨の発言を聞き、アミレスはふーん。と小さく鼻を鳴らす。
そしてチラリ、と窓の外に目を向けた。外は連日の悪天候でどんよりとした雲が積み重なり、絶えず雨を流し続けている。空を見上げるだけで気が滅入るような天気に、アミレスも悩まされているものだ。
(うーん、やっぱり上司として部下の記念すべき日は全力で祝ってあげたいしなぁ。サプライズとかしちゃおうかしら、出来るか分かんないけど)
そしてアミレスは集中する。彼女は今から、神業にも等しい芸当をやってのけようとしているのである。
あまりに途方も無いサプライズを成し遂げる為に、彼女は深く、深く、集中していた。
「あっ、クラリスが指輪受け取った! これはオッケーって事? 求婚成功って事?」
シュヴァルツがアミレスの服の袖を引っ張り、バドールとクラリスを指さす。
しかしアミレスはぼーっとしたような顔のまま、びくりとも反応しない。その為シュヴァルツは、バドールとクラリスの事よりも、アミレスに気を取られた。
(──なんだコイツ、急に黙りこくって……やけに辺りの魔力がここに集まって来てるが、何するつもりなんだ?)
アミレスが成そうとしている何かへと思いを馳せ、シュヴァルツは疑問符を浮かべながらも期待を募らせる。
そして、バドールとクラリスがお互いに幸せにすると誓い合った時。
「……──我が手に水ありけり。いと尊き天の雫よ、いと脆き生命の救い手よ。我が祈りを此処に願い奉る。其の恩恵、其の慈愛、全てを我が元に。どうか……我が声を聞き届け給え」
自然な動きで指と指を絡ませて、アミレスは祈祷するかのように淡々と、しかして荘厳に詠唱した。
するとこの辺り一帯で雨がピタリと止み、空を覆っていた暗雲は霧散した。夕陽が顔を覗かせた事により、夕焼けの前には虹が架かっている。
何とも美しく、目を奪われるような──異様な現象だった。