だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

317.水無月の思い出

 バドールとクラリスが婚約した事は、求婚(プロポーズ)の二日後とかに本人達から改めて聞いた。
 その際、何もしていないのに、バドールとクラリスにはめちゃくちゃ感謝された。私が色々と支援して来たから、二人は婚約する事が出来たんだと。
 私が何かの役に立てていたなら、まぁ、嬉しいから否定はしなかったけど。
 ちなみに、求婚(プロポーズ)当日の夜にはディオ達に報告を済ませていたらしい。それを聞いた瞬間、ディオ達は揃って『やっとか!』と呆れ半分で我が事のように喜んでくれたとか。

 さて。そんな温かい話を聞き、私はバドールとクラリスにおもむろに問いかけました。
 ──で、式はいつにする? と……。
 結婚式をするつもりは無かったようで、二人共この発言にはかなり驚いていた。
 ふふ……残念だったわね、二人共。ここで終わりと思わない事ね!
 なんて、かなりのハイテンションで『希望の日時を言ってくれたら、その日に式場押さえるから。費用も私がもつし』と追撃すると、二人は目玉が零れ落ちそうなぐらい目を見開いて、言葉を失っていた。

『何で、王女様はそこまでしてくれるの? 私達、まだ何も王女様に返せてないのに』

 戸惑うクラリスの言葉に、バドールは何度も首を縦に振っていた。近くで聞いていたディオ達も、これには同意見のようで……私が皆をやたらと構う理由を知りたいのか、こちらに耳を傾けていた。

『ただ、そうしたいから。王女(わたし)が何かをする理由なんてそれで十分じゃない? まあ……どうしても理由が欲しいなら、そうね…………皆にはこれまで苦労して来た分、幸せになって欲しいからかな。やっぱり皆幸せが一番だし』

 かなり曖昧な返事だったと思うのだが、意外にも彼女達はこれで納得してくれた。そして、『出世払いするから、絶対に!』と強く宣言してくれたのだ。
 別に、お金の事なんて気にしなくていいのにな……と思いつつも、本人達がそれを望むのならと私はそれを承諾した。
 それからはいつものようにアルベルトを使いっ走り、二人の希望の日時で速攻で式場を押さえた。
 二人の希望と言ったが、実のところ、私が六月中の挙式をオススメしまくったので……ギリギリ六月三十日に予定を入れる事に成功した。
 これで見事ジューンブライドとなった訳だ。うむ、なんかロマンチック。
 その所為もあって結婚式まで残り僅か二週間強という無茶なスケジュールに。

 身内だけのささやかな結婚式で、とクラリスが希望したので招待とかは特に無し。披露宴の料理なども少なめで済むので手配が楽だった。
 ウェディングドレスとタキシードは、シャンパー商会のデザイナーに依頼した。
 元々あるウェディングドレスを、クラリスの体型に合わせて貰ったりアレンジして貰ったり。バドールも同様で、元々ある物を二人に合わせて改良する形で進めた。
 式場の飾り付けなどもシャンパー商会が任されてくれた。相変わらず何でもござれな商会だなあそこは。

 私はこれでもかと王女の権威を駆使してバドクラ結婚式の準備を進めた。こういう時の為に、私はデザイナーをして日々お小遣い稼ぎをしているのです。
 ……え? シャンパージュ伯爵家から貰った鉱山の収入? はは、あれはいざと言う時の為に取っておいてるんだ。
 本音を言えば、ものがものなだけに下手に手を出せないだけなんだけどね。というか手出せるかいな、君臨しても統治せず状態の鉱山の収益とか。
 私だって、心臓に毛が生えてる訳ではない。なので当然、怖いものは普通に怖いのだ。
 他にも、皆が結婚式で着る用の服もシャンパー商会で用意した。困った事があればシャンパー商会に頼る。これ帝国では常識です。

 そうやって慌ただしく駆け抜けた数週間。
 ついに、待ちに待ったその日がやって来たのだ。その日だけは雨も降るなと願い続けていたお陰か、まさかの快晴なり。
 実に素晴らしい結婚式日和だと、ドレスのまま腕を組んで、教会の大きな扉を見上げて仁王立ちする。
 場所は当初の予定通り、ランディグランジュ領にある大きめな教会。国教会の保有する教会だが、王女権限で一日貸切にさせて貰った。
 勿論その分寄付は多めに包ませていただきましたとも。それに加えランディグランジュ侯爵からの口添えもあって、教会貸切の結婚式開催に関しては、問題無く進行したのだ。
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