だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「それ、もしかして変に写ってる? それなら今すぐ捨てるから、渡してちょうだい」
「捨てるのか? なら……渡さない方がいいな」
「え、どうしてよ! 自分が不細工に写ってる写真なんて、誰も残したくないに決まってるでしょ?」
「全然不細工じゃないから安心しろ」
「じゃあなんで渡してくれないのよーっ!」

 マクベスタが写真を持つ手を高く掲げやがったので、どれだけ背を伸ばしても写真には手が届かなかった。
 くそぅ、この男……いつの間にかまた背が伸びてるじゃないの!!
 全然届かない。ジャンプしたら届くかもしれないけど、反射神経が凄まじい彼にそれを見抜かれ、マクベスタにまでジャンプされたら結局届かない事だろう。
 というか、どうして私の写真を持っておこうとするのよ。写りが悪い疑惑だってあるのに。
 新手の嫌がらせかしら。

「はははっ、そう睨むな。大丈夫だよ──写真の中のお前も、凄く可愛いから」

 花々の愛を集める太陽のような、明るく温かい笑顔。
 ゲームで見た彼の笑顔ととても似ているのだけど、でもどこか、確実にゲームの彼とは違うその笑顔に……私の心は、形容し難いわだかまりを作り出した。

「……そんなの、当たり前じゃない。だってあのシルフが昔からずっと可愛いって言ってくれてたのよ? 私はとっても可愛いんだから」

 何故か強く鼓動するそれを落ち着かせようと、私はなんとも自信過剰な台詞を吐く。紅茶に角砂糖の山を作るような、なんとも強気な行動だった。

「まあ、それはそうだな。お前は世界で一番可愛くて、世界で一番魅力的だよ。だから、この写真はオレが貰おうかなーと。だってお前は要らないんだろう?」
「要らない……というか、写りが悪いなら捨てるってだけで。そうじゃないなら捨てずに自分で持っておくわよ」

 だから早く写真を渡しなさい、と手を出して圧をかける。しかしマクベスタは写真を持つ手を顎に当てて、ふむ……と悩む仕草を見せるだけだった。

「…………どうすれば、この写真をオレにくれるんだ?」
「え?」
「何か交換条件などがあるならば、言ってくれ。オレに叶えられる範囲ならば、お前の望むままに条件を飲もう」
「そこまでして私の写真が欲しいの?」
「ああ」
「もしかして、何か理由でもあるの?」

 マクベスタは驚きの発言を繰り返した。あのマクベスタがここまで食い下がるという事は、もしやそれ相応の理由があるのでは……と、あいきゅーいちおくの私は気づいた。
 どうやら図星だったらしい。マクベスタは少し肩を跳ねさせて、僅かに視線を泳がせた。やがて、彼は絞り出すように口を開いた。

「……そう、だな。あれだ、母上がな……久々に氷結の聖女様の顔を見たいと言っていたんだ。うん」
「貴方のお母さんが? うーん……まぁ、そういう事なら…………写真だって事は言わないでよ? そう言う絵だって事にしてね」
「っ! あぁ、了解した」

 私が渋々了承すると、マクベスタは嬉しそうに頷いた。
 お母さんに友達の顔が見たいって言われたら、そりゃあ確かに本人には言いづらいよね。そこに、写真っていうなんとも便利なものが舞い込めば……そりゃあ千載一遇の機と捉えるだろう。
 最初からそう言ってくれたら良かったのに。そう思いながら呆れ半分に見つめた彼の顔は、喜色に満ちていた。
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