だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 披露宴と言えばやはり余興。実は前々から個人的な興味でメイシアと密かに作っていたある物(・・・)を、私はここぞとばかりに余興に使う事にした。
 いそいそと準備して、アイコンタクトでメイシアに着火を頼む。
 皆が料理やお酒片手になんだなんだと注目する中。(スリー)(トゥー)(ワン)…………そのカウントダウンに合わせて、ドンッ! と爆発音のようなものが披露宴会場に響いた。
 突然の事に驚いて、何人かが「敵襲か!?」と身構える。それに「大丈夫よ、空を見ててちょうだいな」と伝え、皆の視線を晴天へと誘導した瞬間。

 空に、火の花が咲いた。
 突然晴天に輝いた花火。それに皆は呆気に取られているんだけど……これで終わりだとは思わないで欲しい。ふふーんっ、花火はまだまだこれからよ!
 もう一度メイシアに目配せすると、メイシアはこくりと頷いて、次々に煙火筒に火をつけていった。けたたましい音と共に打ち上げられる花火達。
 この世界では珍しいそれに、誰もが目を奪われているようだった。

 やったね大成功! とメイシアとハイタッチをして、私達は師匠からの質問攻めにあった。「アレなんだったんすか!?」と、どこか興奮気味の師匠が私達に根掘り葉掘り聞いてきたので、それに気圧されつつも説明した。
 花火の効果もあって、披露宴の盛り上がりは最高潮。大人達なんかはお酒も入って気が大きくなり、まさに宴会となりつつあった。
 今日ばかりはイリオーデもディオ達と一緒に楽しんでおいで。と前もって伝えておいたので、ディオとラークとシャルと一緒に、お酒片手にバドールと話していた。
 皆が楽しそうで、何よりである。

 アルベルトは、意外にもランディグランジュ侯爵と仲良くしているようで……こちらもまた酒を嗜みつつ会話に花を咲かせているようだった。たまに見える意地の悪いような顔を見ては、二人で何を話しているんだと気になってしまって。
 二人に近づいて、会話に聞き耳を立ててみると……、

「イル……イリオーデは確か、辛い食べ物を無意識に避けていた気がするな」
「成程、辛いものですか。ふむ……今度激辛料理でも作って食わせてやろうかな」
「はは! それはいい。唇を真っ赤にして、涙を流しながら鬼の形相で怒るだろうな、イリオーデは」
「わあ、それはもう、凄く面白いんでしょうね。見ものだろうな」

 なんとも気になる話をしていた。イリオーデへの嫌がらせの相談……? というか、好き嫌いなんてありませんみたいなフリして嫌いな物がちゃんとあったのね、イリオーデ。
 実兄に情報を売られ、それを職場の同僚が買うというなんとも本人からすれば避けたいであろうこの状況。イリオーデにも教えてあげた方がいいんだろうけど……ちょっぴり結果が気になるのよね。
 本当に激辛料理を騙されて食べた時、イリオーデがどんな反応をするのか。
 私って、本当に性格悪いわね。
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