だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
333.ある竜の悲嘆
いつからだろう……だいたい二千年ぐらい前かな。
それぐらいの頃から、人間達は僕達の存在を軽んじるようになった。
当たり前のように他種族他民族の相手を任された。
当たり前のように自然を操れと無茶を言われた。
当たり前のように願いを叶えろと詰め寄られた。
当たり前のように竜の血を寄越せと押しかけられた。
人間達にとって都合のいいように扱われた。僕達が人間を愛しているのをいい事に、人間達は僕達をまるで道具のように使おうとした。
それが千年と四百年程続いた。
その頃には、白と赤も人間への愛情が本当なのか分からなくなっていたようだった。青は人間を疎ましく思うようになり、緑は人間を愛したがっているが本当にそれでいいのかと戸惑っているようだった。
だからこそ、他種族との付き合い方を見直そうかと少し距離を置く事にした時。
人間や様々な種族は僕達を目の敵にし始めた。自分達にとって都合のいい存在ではなくなった竜種は、人間共にとって害悪なものだったらしい。
そんな中でタイミング悪く……知ってか知らずか、緑が白と作り上げた花畑を荒らした何かの種族がいた。
この世界で最も美しく、色とりどりの──僕達の思い出が詰まった一万年の花畑。
それを荒らし壊した者達がいた。自然を司り、この世の誰よりも草木や花々を愛する緑はこれに激怒した。緑は花畑を荒らした種族を呪った。それは何百年もの月日を懸けて概念や前提すらも書き換えその血を絶やすものだった。
これを知った人間共は僕達を『人類の敵』と認定した。これまで散々僕達をいいように使って来た癖に、手のひらを返して僕達を殺そうとするようになった。
『ごめっ……ごべん、なざい……! 我が、われのせいで…………っ、にんげんに、てをだざないと……あにうえだぢと、やぐぞぐ……じでだのに……っ!!』
『緑……あれは、仕方の無い事ですわ。私だってあれには人間達への怒りが沸きましたもの。だから泣かないで、緑…………』
怒りのままに人間を呪ってしまった緑は、それを後悔して酷く泣きじゃくっていた。どれだけ白が宥めても、緑は泣き止まない。
これまでの一万年、僕達はずっと人間達を愛して来た。
そんな人間共との完全な決別を果たす切っ掛けになった事が、とても辛いのだろう。
僕達は人間と共存するにあたり、いくつかの決まりを設けていた。そのうちの一つが、『僕達から人間に攻撃しない』というもの。
僕達が始まりの存在であり、彼等彼女等の理解を超越した存在である事は自覚している。だからこそこの決まりを設け、僕達は人間達と共存してきた。
……ああ、だけど。人間側から僕達が決まりを破らざるを得ない事をされる日が来るなんて思わなかった。
人間に裏切られる日が来るなんて、思わなかった。
『……大丈夫だよ、緑。君は何も悪くない。悪いのは──僕達を裏切った人間共だ』
これまでの一万年は無意味だったのだ。
あの神だとかいう身勝手な奴等が創り出した存在らしく、とても自分勝手で最低な弱き種族。そんなものと、僕達が対等である必要なんてなかったんだ。僕達があいつ等に合わせてやる必要なんてなかったんだ。
一万年かけて育んできたと思っていた人間共との絆も夢幻だった。
そんな相手に、何を遠慮する必要がある? これまでの一万年の恩も何もかも全てを忘れ、僕達を軽んじる愚か者共に何を躊躇う必要がある?
……──僕は人間を許さない。
白を悩ませ、赤を困らせ、青を苦しめ、緑を泣かせたあの愚かな種族を許さない。まだ人間共への愛を捨てられない弟妹に代わり、僕だけは。
未来永劫終末の時まで人間を許さない。何があろうと必ずや、人間に復讐してやる。
そう、あの日……可愛い末っ子の涙に誓った。
それからと言うものの、一年、十年、百年。時が経つにつれて人間共は僕達を討伐しようと躍起になっていった。
対竜種の戦い方を編み出し、僕達の鱗にも傷をつけるような魔剣を鍛えるようになった。
僕や青はともかく、白と赤と緑は自分から人間に攻撃する事をまだ躊躇っていた。自衛はするものの、基本的には人間共から逃げるのだ。『あまり、人間達を傷つけたくないから』だなんて言って。
だから三体の分も僕と青で戦った。数百年もの間人間共との戦いを続けると、人間共が小賢しい真似をするようになってきた。なんと、最後まで人間共を信じようとしていた心優しい緑を……愚かにもあのクズ共は、利用しようとしたのだ。
それぐらいの頃から、人間達は僕達の存在を軽んじるようになった。
当たり前のように他種族他民族の相手を任された。
当たり前のように自然を操れと無茶を言われた。
当たり前のように願いを叶えろと詰め寄られた。
当たり前のように竜の血を寄越せと押しかけられた。
人間達にとって都合のいいように扱われた。僕達が人間を愛しているのをいい事に、人間達は僕達をまるで道具のように使おうとした。
それが千年と四百年程続いた。
その頃には、白と赤も人間への愛情が本当なのか分からなくなっていたようだった。青は人間を疎ましく思うようになり、緑は人間を愛したがっているが本当にそれでいいのかと戸惑っているようだった。
だからこそ、他種族との付き合い方を見直そうかと少し距離を置く事にした時。
人間や様々な種族は僕達を目の敵にし始めた。自分達にとって都合のいい存在ではなくなった竜種は、人間共にとって害悪なものだったらしい。
そんな中でタイミング悪く……知ってか知らずか、緑が白と作り上げた花畑を荒らした何かの種族がいた。
この世界で最も美しく、色とりどりの──僕達の思い出が詰まった一万年の花畑。
それを荒らし壊した者達がいた。自然を司り、この世の誰よりも草木や花々を愛する緑はこれに激怒した。緑は花畑を荒らした種族を呪った。それは何百年もの月日を懸けて概念や前提すらも書き換えその血を絶やすものだった。
これを知った人間共は僕達を『人類の敵』と認定した。これまで散々僕達をいいように使って来た癖に、手のひらを返して僕達を殺そうとするようになった。
『ごめっ……ごべん、なざい……! 我が、われのせいで…………っ、にんげんに、てをだざないと……あにうえだぢと、やぐぞぐ……じでだのに……っ!!』
『緑……あれは、仕方の無い事ですわ。私だってあれには人間達への怒りが沸きましたもの。だから泣かないで、緑…………』
怒りのままに人間を呪ってしまった緑は、それを後悔して酷く泣きじゃくっていた。どれだけ白が宥めても、緑は泣き止まない。
これまでの一万年、僕達はずっと人間達を愛して来た。
そんな人間共との完全な決別を果たす切っ掛けになった事が、とても辛いのだろう。
僕達は人間と共存するにあたり、いくつかの決まりを設けていた。そのうちの一つが、『僕達から人間に攻撃しない』というもの。
僕達が始まりの存在であり、彼等彼女等の理解を超越した存在である事は自覚している。だからこそこの決まりを設け、僕達は人間達と共存してきた。
……ああ、だけど。人間側から僕達が決まりを破らざるを得ない事をされる日が来るなんて思わなかった。
人間に裏切られる日が来るなんて、思わなかった。
『……大丈夫だよ、緑。君は何も悪くない。悪いのは──僕達を裏切った人間共だ』
これまでの一万年は無意味だったのだ。
あの神だとかいう身勝手な奴等が創り出した存在らしく、とても自分勝手で最低な弱き種族。そんなものと、僕達が対等である必要なんてなかったんだ。僕達があいつ等に合わせてやる必要なんてなかったんだ。
一万年かけて育んできたと思っていた人間共との絆も夢幻だった。
そんな相手に、何を遠慮する必要がある? これまでの一万年の恩も何もかも全てを忘れ、僕達を軽んじる愚か者共に何を躊躇う必要がある?
……──僕は人間を許さない。
白を悩ませ、赤を困らせ、青を苦しめ、緑を泣かせたあの愚かな種族を許さない。まだ人間共への愛を捨てられない弟妹に代わり、僕だけは。
未来永劫終末の時まで人間を許さない。何があろうと必ずや、人間に復讐してやる。
そう、あの日……可愛い末っ子の涙に誓った。
それからと言うものの、一年、十年、百年。時が経つにつれて人間共は僕達を討伐しようと躍起になっていった。
対竜種の戦い方を編み出し、僕達の鱗にも傷をつけるような魔剣を鍛えるようになった。
僕や青はともかく、白と赤と緑は自分から人間に攻撃する事をまだ躊躇っていた。自衛はするものの、基本的には人間共から逃げるのだ。『あまり、人間達を傷つけたくないから』だなんて言って。
だから三体の分も僕と青で戦った。数百年もの間人間共との戦いを続けると、人間共が小賢しい真似をするようになってきた。なんと、最後まで人間共を信じようとしていた心優しい緑を……愚かにもあのクズ共は、利用しようとしたのだ。