だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 その後も、無関係な悪魔に僕は八つ当たりを続けた。腕を吹き飛ばされた影響で竜の姿でいる事が少し面倒になり、人間体へと変わった後も……僕はずっと、悪魔に向けて本音を叫び続けていた。
 悪魔は興味無さげに『ハイハイ』『うっせェーなァ、コイツ』『つーか、さっさとこの呪い何とかしろ!!』と相槌を打っていた。
 それを暫く続けると、僕もようやく落ち着く事が出来た。絶望は拭えないし、人類への憎悪も今もどこかで眠る妹達への悲哀もある。
 だが、それでも少しは落ち着けた。悪魔は『おいテメェ……散々暴れた挙句自己完結して落ち着いてんじゃねェ! ちょっとは反省しろマジでぶっ殺すぞ!!』と騒いでいたけど。

 ……それからというものの、僕はずっと魔界にいた。騒がしいあの悪魔──■■■■の(いえ)に居座ったのだ。
 何度も何度も、『こちとらお前が暴れやがった所為で街は壊滅状態! 各種族の村やら集落やらもことごとくぶっ壊されてその後処理やら復興支援やらで仕事が倍近く増えてんだよ!! 分かるかァ? オレサマはそれはもう大ッ迷惑被ってんだよクソが! 居座るつもりならせめて贖え! 馬車馬の如く働けクソ野郎!!』と彼に怒鳴られながら無気力に生きて来た。

 そんな彼が突然『アァ〜〜〜〜〜〜〜ッ! クソッ、仕事とかもう二度としたくねェ!!!!』と叫んで突然魔界から消えた。そして慌てふためく彼の部下から、何故か僕が行方を聞かれる始末。
 行方とか知らないし、そもそも興味無いし。だから普通に知らないと言ったら、彼の部下はそれこそ絶望したかのような表情で体を丸めてとぼとぼと歩いていった。
 そんなある日、件の■■■■が魔界に戻って来たのだが……やけに上機嫌な彼の口からは、衝撃の言葉が放たれた。
 ──緑が、長年眠らされていたからか寂しさを感じていた。
 突然こんな事を言われて……僕は、ずっと目を逸らしていた自分の後悔や憎悪を思い出してしまった。弟達を守れず、妹達を助けられない。そんな、無力で馬鹿な自分を思い出してしまった。

 緑に会いたいかと問われれば、勿論会いたい。会って抱き締めて、たくさん頭を撫でてあげたい。
 可愛い僕の妹。とても大切だからこそ──……僕は、あの子に会う事を恐れていた。
 こんなにも不甲斐ない僕を見て、あの子は失望してしまうだろう。全て自分の所為なのに、僕は自分勝手にもそんな事を思っていた。

『白の権能で死にかけて呪いを振り撒き、結果的に人間に救われた……緑は、また人間に騙されてるのか…………?』

 ■■■■の言葉を思い返し、いつしか僕はそのような結論に至った。
 緑はいつだって人間を信じようとしていた。どれだけ裏切られ、人間が悪意と共に立ち向かってこようとも……緑は人間を信じて愛そうとしていた。
 だけど、人間は僕達を裏切る。もしまた緑が人間に裏切られるような事になれば──。

『あの子はきっと……また泣いてしまうんだろうな』

 そうならないように、僕が今度こそ守らないと。
 弟達も妹達も守れなかった僕にこんな事を言う資格があるのかは分からない。だけど、僕はもう緑が泣く姿を見たくない。あの子が悲しむ世界など、もう必要ないから。

 ……──待っててね、緑。今……お兄ちゃんが迎えに行くから。

 僕達を裏切り、赤と青を死なせたあの世界と決別しよう。白を救い、僕と緑と三体でまた平和な日々をやり直そう。
 赤と青の分も平穏な日々を送ろう。あんな腐った世界ではなく、誰も僕達を脅かせないこの魔界で。
 赤と青と白を守れなかった事も全て、これから償っていくから。緑を独りにしてしまった事も、今まで迎えに行けなかった事も、これまでの事も全部……謝っても謝りきれないけれど、何度だって謝るから。

 だからお願い、もう一度──君の笑顔を見せてくれ……緑。
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