だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

番外編 ある王女とハロウィン

ハロウィンの際になろうで投稿したものになります。
本編とは全く関係のない、ハロウィン仕様のSSです。
時系列的には、アルベルトが有能執事になった後、大公領に向かう少し前の話です。





 ───十月三十一日。それは、甘く恐ろしい日。

 現代日本では、各地でお化け等の仮装や無関係なコスプレをした大勢の人達が公道を占拠し練り歩く、百鬼夜行のようなものが毎年飽きもせず繰り広げられる、まさに狂乱の宴。
 生憎と私にそのような経験もご縁は全く無く、全ては誰か(・・)から聞いた情報のみ。予備知識? 先述のものが全てです。
 元は海外の収穫祭が起源だとか、色々と聞いた気もするが……それは私に必要な知識ではなかったようで、詳しく教えられた事はなかったと思う。

 さて。そんなハロウィンのイベントについて突然語り出した理由──それは何を隠そう、私がついにそのイベントに参加する事になったからである。
 特にこれまでは何も思わなかったのだけど……きっかけとなる出来事があった。実は先日の十月の頭頃、相変わらず密入国してきたカイルから突然言われたのだ。

『アミレス〜、トリックオアトリート〜〜☆』

 ハロウィンのような文化はこの世界には無い。なので、突如としてよく分からない呪文を口にしたカイルに、その場にいた人間のほとんどが首を傾げていた。
 それだけなら良かったけど、あの時の私といったら。これまで伝聞でしか触れた事のない、日本人が大好きなあの秋の一大イベント(ハッピーハロウィン)に自分が参加する日が来るなんて。といった謎の感動と興奮から、

『しょうがないわね、クッキーしかないからクッキーでいい?』

 めちゃくちゃ普通に対応してしまった。今思えば、あれをガン無視しておけばこうはならなかったのかもしれない──……いや、ガン無視せず対応したからこそ、今このように愉快な事になっているのだろう。
 ───十月三十一日。この世界には存在しない、ハロウィン当日の朝。
 東宮はお祭りの準備で大忙しだった。食堂はカボチャの化け物やら写実的なゴーストやらの絵や紙飾りが、まさにパーティーかのように壁に所狭しと飾られた。
 テーブルの上には沢山のお菓子や、この為にわざわざ取り寄せたカボチャを使った料理。他にもこの世界の秋の味覚を使った美食の数々が所狭しと並ぶ。
 そして何よりの異変と言えば、

「まさかこの歳になってコスプレをする日が来るとは……」
「いやお前まだ十三歳だろ。全然ハロウィンにコスプレするような歳だろ」
「精神年齢アラサーぞ?」
「やめろ、その術は俺にも効く」

 そう、やはりハロウィンのメインイベントとも言える仮装だろう。
 カイルのトリックオアトリート発言がきっかけで、ハロウィンオマージュのイベントをその場で考え、皆に提案する事になったのだが……その結果、こうしてハロウィンパーティーを開く事になった。
 会場となる食堂で、ハロウィンパーティーの準備が進められる様子を眺める私とカイル。ちなみに私は、とんがった大きな帽子にそれっぽい衣装とそれっぽい杖を持った魔女で、カイルは頭や体のあちこちに包帯が巻かれたミイラ男だ。

 ちなみに他の参加者はシュヴァルツ、ナトラ、師匠、イリオーデ、アルベルト、マクベスタ、メイシアとなっている。
 私兵団の皆やシルフやハイラも誘ったんだけど、シルフとハイラは忙しくて無理との事。私兵団の皆は昨日今日と、街の大規模清掃ボランティアに参加してるらしくこちらに来れないとの事。
 なので、このメンバーでのハロウィンパーティーとなった訳だが……勿論このパーティーにはドレスコードがある。何かしらの仮装をする事、それがドレスコード。
 各自仮装をしたら食堂に集まろうねと事前に話していたので、こうして一足先に仮装を終えた私達は食堂で皆の登場を待っていたのだ。

「噂で聞いたんだけど、マクベスタの仮装って貴方が準備したの?」
「おう。なんかアイツがすげぇ深刻な顔して悩んでたからさ、責任もって俺が代わりに用意したぜ」
「……絶対こいつの趣味全開なんだろうなぁ」
「はっはっはっ! 当たり前だろぅ」

 カイルと二人で会話をしていると、噂をすればなんとやら。食堂の扉が開き、聞き慣れた声が聞こえて来た。

「──カイル、着てみたんだが……着方はこれであってるのか?」

 現れたのは、黒いベール付きのフェドーラ帽を被り、フリルやらリボンやらがふんだんにあしらわれた黒いコートとロングブーツを履いた、大きな鎌を持つ顔色の悪い王子様。
 横で「グッッッッッッッ!!」と心臓を押さえて膝から崩れ落ちたガチオタクさんの趣味が爆発しているようだが、多分鎌を持ってる事から死神か何かの仮装なのだろう。だとしても趣味爆発しすぎでしょ。
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