だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「そうか、それが兄上の名か……良い名じゃの。まぁ我のナトラという名には及ばぬがな!」
「みど……ナトラは新しい名前で呼び合いたいの?」
「うむ。せっかく数百年ぶりに人間社会におるのじゃから、我は今の生活をめいいっぱい楽しみたいのじゃ。なんじゃったのかのぅ、ごーにいってはごーにしたがえ? アミレスもそんな事を言うておったわい」
郷に入っては郷に従え、かしら。そんな一度や二度しか使った事ない言葉をよく覚えてたわね。
「……──君が、そう望むのなら。無理に魔界に連れて行く事も叶わなかったし……これから先の未来はずっと君と共に在ると決めたから、僕はナトラのやり方に合わせるよ」
「本当か? 本当の本当に、これからは我と共にいてくれるのか?」
「うん。これまでずっと独りにしてごめんね」
「よい、よいのじゃ。こうしてまた兄上と再会出来たのじゃから! 我はオトナじゃから、過去の事は水に流せるのじゃよ!!」
ナトラは満面の笑みで黒の竜──……クロノに抱き着いた。
私達を置いて、二体の竜は兄妹愛を確かめ合う。この空間には、話し合いどころじゃない空気が流れていた。
そこに、かき氷やティーセットをワゴンに乗せて運ぶアルベルトが現れた。彼の背中や頭部からはあの悪魔っぽい特徴が無くなっていたものの、その瞳だけは変わらず不気味なまま。どうやらあの角や羽は出し入れ可能らしい。
アルベルトが、人数分のかき氷を机に置いていく。ナトラが瞳を輝かせてそれを頬張ったので、クロノもそれに倣うようにかき氷を食べ、目を丸くして首を傾げていた。
アルベルトは自分とイリオーデの分は用意してなかったようで、紅茶の用意を済ませるとそそくさと長椅子の後ろに控えた。
紅茶とかき氷で軽いお茶会状態となり、場が温まって来たところで話を再開する。
「ごほん。クロノさんは、まだ人類を滅ぼすおつもりなのでしょうか?」
「当たり前だ。僕達は、それ程の仕打ちを人間共から何度も受けて来たからな」
「成程……じゃあ、あの、一つ提案なのですが」
竜種に対して人間がどれ程の裏切りを重ねて来たのか、まだこの世界に生まれ変わって八年とかの私には全然分からない。
だけど、ナトラの様子やクロノの憎悪から鑑みるに、相当人間はやらかしてきたらしい。その憎悪を完璧になくす事などまず不可能。それこそ世界を滅ぼすまでその復讐の炎は消え去らない事だろう。
だが、それは私達にとっても困る事。竜達からすれば酷く自分勝手な考えだと罵られそうだが、これは人間サイドなら誰だって同じ思いだ。
だからこそ、私は提案する。
「人類を滅ぼし世界を破壊するだけで終わらせていいのですか? あなたの憎悪は、そんな一瞬で終わらせてもいいものなのですか?」
「──は?」
私の言葉が予想外だったのか誰もが唖然としている。この冷えきった空気など気にせず、私は語り続けた。
「人間を滅ぼしたい程憎いのでしょう? なら、考えうる限り最も苦しむ方法で死よりも深い絶望を味合わせてやった方が、スッキリすると思いませんか?」
「みど……ナトラは新しい名前で呼び合いたいの?」
「うむ。せっかく数百年ぶりに人間社会におるのじゃから、我は今の生活をめいいっぱい楽しみたいのじゃ。なんじゃったのかのぅ、ごーにいってはごーにしたがえ? アミレスもそんな事を言うておったわい」
郷に入っては郷に従え、かしら。そんな一度や二度しか使った事ない言葉をよく覚えてたわね。
「……──君が、そう望むのなら。無理に魔界に連れて行く事も叶わなかったし……これから先の未来はずっと君と共に在ると決めたから、僕はナトラのやり方に合わせるよ」
「本当か? 本当の本当に、これからは我と共にいてくれるのか?」
「うん。これまでずっと独りにしてごめんね」
「よい、よいのじゃ。こうしてまた兄上と再会出来たのじゃから! 我はオトナじゃから、過去の事は水に流せるのじゃよ!!」
ナトラは満面の笑みで黒の竜──……クロノに抱き着いた。
私達を置いて、二体の竜は兄妹愛を確かめ合う。この空間には、話し合いどころじゃない空気が流れていた。
そこに、かき氷やティーセットをワゴンに乗せて運ぶアルベルトが現れた。彼の背中や頭部からはあの悪魔っぽい特徴が無くなっていたものの、その瞳だけは変わらず不気味なまま。どうやらあの角や羽は出し入れ可能らしい。
アルベルトが、人数分のかき氷を机に置いていく。ナトラが瞳を輝かせてそれを頬張ったので、クロノもそれに倣うようにかき氷を食べ、目を丸くして首を傾げていた。
アルベルトは自分とイリオーデの分は用意してなかったようで、紅茶の用意を済ませるとそそくさと長椅子の後ろに控えた。
紅茶とかき氷で軽いお茶会状態となり、場が温まって来たところで話を再開する。
「ごほん。クロノさんは、まだ人類を滅ぼすおつもりなのでしょうか?」
「当たり前だ。僕達は、それ程の仕打ちを人間共から何度も受けて来たからな」
「成程……じゃあ、あの、一つ提案なのですが」
竜種に対して人間がどれ程の裏切りを重ねて来たのか、まだこの世界に生まれ変わって八年とかの私には全然分からない。
だけど、ナトラの様子やクロノの憎悪から鑑みるに、相当人間はやらかしてきたらしい。その憎悪を完璧になくす事などまず不可能。それこそ世界を滅ぼすまでその復讐の炎は消え去らない事だろう。
だが、それは私達にとっても困る事。竜達からすれば酷く自分勝手な考えだと罵られそうだが、これは人間サイドなら誰だって同じ思いだ。
だからこそ、私は提案する。
「人類を滅ぼし世界を破壊するだけで終わらせていいのですか? あなたの憎悪は、そんな一瞬で終わらせてもいいものなのですか?」
「──は?」
私の言葉が予想外だったのか誰もが唖然としている。この冷えきった空気など気にせず、私は語り続けた。
「人間を滅ぼしたい程憎いのでしょう? なら、考えうる限り最も苦しむ方法で死よりも深い絶望を味合わせてやった方が、スッキリすると思いませんか?」