だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「君の言う、人間共を深い絶望に落として苦しめる手段……それを教えてくれ。君の提案を飲み、僕は人間共が苦しみ絶望する様を眺めていく事にしよう」
「つまり、今すぐ人類を滅ぼしたりはしないと……そう、誓ってくださるのですね?」
「ああ。人間の意見に賛同するのは少し癪だけど、君の意見には一理あるからね。ただ人間共を殺すだけでは、僕達への裏切りの償いに到底及ばない。これから何百年もの時を使い、じっくりと痛めつけてやる事にしたから」
真顔で恐ろしい事を述べたクロノは、それに、と補足するように続けた。
「緑……ナトラと約束したから。とりあえず、暫くは人間を殺さないって」
「成程。では私は、偉大な黒の竜たるあなたの誇りと、大事な友達たるナトラを信じて……その約束が守られる限り、あなた達を人間から守ると誓います」
今までナトラを匿ってこれたのだ。多分、一体ぐらい竜が増えたってバレないバレない。もし万が一、世間に二体の存在がバレたとしても、あの手この手で全力で守るつもりだ。
だから安心してくれと。ナトラを人間社会に連れて行くと決めたあの日のように、決意と共に宣言した。
「──守る? 君が、僕達を?」
クロノは鋭い黄金の瞳を檸檬のように丸くしていた。
「はい。これでも一応、それなりの支配者階級の人間なので。ある程度民衆を黙らせる力ぐらいはあります。戦闘能力もそれなりにはあり、対人戦も経験があります。なので、もし民衆があなた達を襲うような事があれば、私がそれを何とかします」
「……ふむ、他には?」
なんだろう、この面接のようなやり取り。
少し緊張感の漂うこの空間で。私は、固唾を呑んで更に続ける。
「ナトラと一緒に、人間体のまま生活されるのでしたら……そうですね、三食昼寝付き、日当り良好な個人部屋とフカフカの寝台。他にも欲しいものがあれば都度ご用意します」
「…………うん? まぁ、続けて」
「基本的にうちは人が少ないので、時と場合にもよりますが、私が生きている限りは人間との接触を最低限度に済ませる事も可能かと思います」
「それは助かるな……」
「何かやりたい事があれば、希望してくださった理想に限りなく近い形でそれを実現します。ちなみにナトラは自ら侍女業を買って出て、その働きに見合う俸給も毎月与えております」
「俸給……? ナトラ、働いてるの?」
「当たり前じゃ。今どきオトナが無職なんてこの人間社会では有り得んからの」
「そ、そうなんだ…………」
ナトラが侍女の仕事をしている事を知り、クロノは少しショックを受けたらしい。しゅんと俯くその表情がとても寂しげだった。
「それで、いかがでしょうか。ナトラと共にこちらに住まわれるのでしたら、手回し等はこちらで済ませますよ」
「……断る理由が今の所見つからないから、その提案を受けよう。ナトラ共々、これからよろしく」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
こうして、クロノは東宮に住むようになった。
部屋はナトラの部屋から扉で続いている少し小さめの部屋。個人部屋を用意するつもりだったのだが、本人の熱い希望でナトラの隣の部屋に。
我が東宮の使用人居住区画。元々空き部屋ばかりだった東宮だが、ハイラの不在を埋める為の侍女達や、私が連れて来たシュヴァルツやナトラ、更にイリオーデにアルベルトと……どんどん住み込む人が増えて来たので、そういった人達の個人部屋はひと区画に集中させたのだ。
私関連で、訳ありな客やそもそも人間じゃない客が多い東宮では、突然見知らぬ人が現れてもいつもの事。私への忠誠心が何気に高い侍女達は、『あぁ、またよく分からないお客様ね』と慣れた表情でクロノを歓迎した。
元々人間じゃない存在に耐性のあった東宮メンバーも、ナトラの橋渡しの甲斐もあってクロノとすぐに仲良くなった。……仲良くなったと思っているのは、こちらだけな可能性が高いけど。
「つまり、今すぐ人類を滅ぼしたりはしないと……そう、誓ってくださるのですね?」
「ああ。人間の意見に賛同するのは少し癪だけど、君の意見には一理あるからね。ただ人間共を殺すだけでは、僕達への裏切りの償いに到底及ばない。これから何百年もの時を使い、じっくりと痛めつけてやる事にしたから」
真顔で恐ろしい事を述べたクロノは、それに、と補足するように続けた。
「緑……ナトラと約束したから。とりあえず、暫くは人間を殺さないって」
「成程。では私は、偉大な黒の竜たるあなたの誇りと、大事な友達たるナトラを信じて……その約束が守られる限り、あなた達を人間から守ると誓います」
今までナトラを匿ってこれたのだ。多分、一体ぐらい竜が増えたってバレないバレない。もし万が一、世間に二体の存在がバレたとしても、あの手この手で全力で守るつもりだ。
だから安心してくれと。ナトラを人間社会に連れて行くと決めたあの日のように、決意と共に宣言した。
「──守る? 君が、僕達を?」
クロノは鋭い黄金の瞳を檸檬のように丸くしていた。
「はい。これでも一応、それなりの支配者階級の人間なので。ある程度民衆を黙らせる力ぐらいはあります。戦闘能力もそれなりにはあり、対人戦も経験があります。なので、もし民衆があなた達を襲うような事があれば、私がそれを何とかします」
「……ふむ、他には?」
なんだろう、この面接のようなやり取り。
少し緊張感の漂うこの空間で。私は、固唾を呑んで更に続ける。
「ナトラと一緒に、人間体のまま生活されるのでしたら……そうですね、三食昼寝付き、日当り良好な個人部屋とフカフカの寝台。他にも欲しいものがあれば都度ご用意します」
「…………うん? まぁ、続けて」
「基本的にうちは人が少ないので、時と場合にもよりますが、私が生きている限りは人間との接触を最低限度に済ませる事も可能かと思います」
「それは助かるな……」
「何かやりたい事があれば、希望してくださった理想に限りなく近い形でそれを実現します。ちなみにナトラは自ら侍女業を買って出て、その働きに見合う俸給も毎月与えております」
「俸給……? ナトラ、働いてるの?」
「当たり前じゃ。今どきオトナが無職なんてこの人間社会では有り得んからの」
「そ、そうなんだ…………」
ナトラが侍女の仕事をしている事を知り、クロノは少しショックを受けたらしい。しゅんと俯くその表情がとても寂しげだった。
「それで、いかがでしょうか。ナトラと共にこちらに住まわれるのでしたら、手回し等はこちらで済ませますよ」
「……断る理由が今の所見つからないから、その提案を受けよう。ナトラ共々、これからよろしく」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
こうして、クロノは東宮に住むようになった。
部屋はナトラの部屋から扉で続いている少し小さめの部屋。個人部屋を用意するつもりだったのだが、本人の熱い希望でナトラの隣の部屋に。
我が東宮の使用人居住区画。元々空き部屋ばかりだった東宮だが、ハイラの不在を埋める為の侍女達や、私が連れて来たシュヴァルツやナトラ、更にイリオーデにアルベルトと……どんどん住み込む人が増えて来たので、そういった人達の個人部屋はひと区画に集中させたのだ。
私関連で、訳ありな客やそもそも人間じゃない客が多い東宮では、突然見知らぬ人が現れてもいつもの事。私への忠誠心が何気に高い侍女達は、『あぁ、またよく分からないお客様ね』と慣れた表情でクロノを歓迎した。
元々人間じゃない存在に耐性のあった東宮メンバーも、ナトラの橋渡しの甲斐もあってクロノとすぐに仲良くなった。……仲良くなったと思っているのは、こちらだけな可能性が高いけど。