だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
第三節・魔物の行進編 前編
343.帝国議会
八月某日。フォーロイト帝国が王城内の一室にて、何人もの貴族達による議会が行われていた。
議会の内容は本年度上半期に起きた様々な問題や、これから行われる様々な行事等の事項について。
なお、これは貴族会議とはまた違うものであり、その時起きている問題点などについて話し合うものである。
「ですから! エンデメンス領の穀物収穫量は特に変動無しだというのに、市場への供給量が例年に比べ少なくなっているのです。そしてこれはその事実を独自のルートで調べた資料になります」
「証拠……!?」
「ご覧下さい、これは皇室との取り決めを破り、横領などの不正を行う不忠の証拠! 改めて、騎士を向かわせ監察すべきかと進言致します!」
「わッ──、私が横領しているだと? い、言いがかりも大概にしろ!!」
「言いがかりではなく確たる証拠と共に言っているのだ! お前も資料が見えるだろう、その目が節穴ではないのならな!!」
二人の男が唾を飛ばして言い争う。それは一人の子爵が皇室との間に取り決めた穀物供給量を偽造し、本来より少ない量しか供給していなかった事を示す不正についてだった。
この後エンデメンス子爵は貴族達からの厳しい追及に不正を認め、部屋に呼ばれた衛兵達によって牢へと連行された。それと同時に、その場でフリードルからエンデメンス領の不正を調査・確定すべく、騎士を派遣して監察を行う事も宣言される。
これによりエンデメンス子爵の不正は白日の元に晒され、やがてその家門は皇室反逆罪で滅びの一途を辿る事となった。
「南西部に流れるテヌア川に架けられていた石橋が何者かによって破壊された件ですが、我がボンバルト領及び隣のベリン領、カルトゼン領の騎士で合同調査隊を編成し調査したところ、強力な魔物が出現し、その魔物が石橋を破壊した事が判明しました。付近の町村の安全確保と、魔物の討伐、そして石橋の修繕をこれからも並行して進めます」
「石橋の修繕なら、丁度いい建材が我が領にある。一度見に来てはくれませんか、ボンバルト伯爵」
「おお! 是非ともお邪魔させていただきたい! 感謝しよう、ネミグルンド子爵」
「ならば我が領からも石工職人を派遣しよう。腕のいい者が何人もいるんだ」
「それは助かる! 恩に着ます、ケイバルクルト伯爵!!」
帝国南西部にて三つの領に跨り流れる大きな川。その両岸を繋ぐ石橋が破壊された件について話し合う男達。
南西部の重要な流通ルートの一つでもあるその橋の修繕の為、その付近に領地を持つ貴族達が続々と手を貸す事を表明していった。
氷の国──絶対零度の恐怖の帝国と周辺諸国から恐れられるこの国だが、この通りその内情は温かいものであった。魔物や自然の脅威にも晒されるフォーロイト帝国だからこそ、手を取り合い助け合って生きているのだ。
特に現皇帝の治世はかなり安定したもので。彼等がやたらといがみ合う事はなく……圧倒的な存在による統治の元、勢力争い等も無い泰平の世となっていた。
「ハミルディーヒの連中は随分と大人しいですね。てっきり無謀にも戦争をけしかけて来ると思っていたのですが、その様子が今のところ全くありません。一時期は国境付近でコソコソと魔導兵器を集めていたようですが……今はその大半が王都に収容されているようです」
「魔導兵器関連でこちらからも一つ。デリアルド辺境伯より、従来のものより三倍近い効果を発揮する魔導兵器が多数納品されました。ええと手紙がこちらに……『上質な魔石の売買契約を結ばせてくれたお礼』と、『多分近いうちに役に立つと思う』との事で」
「上質な魔石──……今後もララルス領の魔石を融通しろという賄賂か?」
「その可能性が高いかもしれませんね」
「だが本日、件のララルス侯爵は不在ですよ」
「そうだよな」
「そうですね」
「我々だけで話を進める訳にもいかなんだ」
「どうしたものか」
「「「うーむ……」」」
何かとフォーロイト帝国を敵視しているハミルディーヒ王国の動向に目を光らせていたのだが、何やらハミルディーヒ王国は今それどころではない模様。
フォーロイト帝国側としては、向こう数年以内に宣戦布告してくると思っていたのだが……何やらその気配が無い。
その報告の後、話題はハミルディーヒ王国とフォーロイト帝国間の緩衝材──、かの国の辺境伯でありながらフォーロイト帝国とも魔導兵器の取引をする、デリアルド伯爵の話へと移る。
彼の名が議題に上がると同時に、誰もが顔を顰めた。アンヘル・デリアルドの考えは、ぶっちゃけ誰もよく分かっていないのである。
この件は本当に、アンヘルからの上質な魔石をくれた礼でしかないのだが……。
議会の内容は本年度上半期に起きた様々な問題や、これから行われる様々な行事等の事項について。
なお、これは貴族会議とはまた違うものであり、その時起きている問題点などについて話し合うものである。
「ですから! エンデメンス領の穀物収穫量は特に変動無しだというのに、市場への供給量が例年に比べ少なくなっているのです。そしてこれはその事実を独自のルートで調べた資料になります」
「証拠……!?」
「ご覧下さい、これは皇室との取り決めを破り、横領などの不正を行う不忠の証拠! 改めて、騎士を向かわせ監察すべきかと進言致します!」
「わッ──、私が横領しているだと? い、言いがかりも大概にしろ!!」
「言いがかりではなく確たる証拠と共に言っているのだ! お前も資料が見えるだろう、その目が節穴ではないのならな!!」
二人の男が唾を飛ばして言い争う。それは一人の子爵が皇室との間に取り決めた穀物供給量を偽造し、本来より少ない量しか供給していなかった事を示す不正についてだった。
この後エンデメンス子爵は貴族達からの厳しい追及に不正を認め、部屋に呼ばれた衛兵達によって牢へと連行された。それと同時に、その場でフリードルからエンデメンス領の不正を調査・確定すべく、騎士を派遣して監察を行う事も宣言される。
これによりエンデメンス子爵の不正は白日の元に晒され、やがてその家門は皇室反逆罪で滅びの一途を辿る事となった。
「南西部に流れるテヌア川に架けられていた石橋が何者かによって破壊された件ですが、我がボンバルト領及び隣のベリン領、カルトゼン領の騎士で合同調査隊を編成し調査したところ、強力な魔物が出現し、その魔物が石橋を破壊した事が判明しました。付近の町村の安全確保と、魔物の討伐、そして石橋の修繕をこれからも並行して進めます」
「石橋の修繕なら、丁度いい建材が我が領にある。一度見に来てはくれませんか、ボンバルト伯爵」
「おお! 是非ともお邪魔させていただきたい! 感謝しよう、ネミグルンド子爵」
「ならば我が領からも石工職人を派遣しよう。腕のいい者が何人もいるんだ」
「それは助かる! 恩に着ます、ケイバルクルト伯爵!!」
帝国南西部にて三つの領に跨り流れる大きな川。その両岸を繋ぐ石橋が破壊された件について話し合う男達。
南西部の重要な流通ルートの一つでもあるその橋の修繕の為、その付近に領地を持つ貴族達が続々と手を貸す事を表明していった。
氷の国──絶対零度の恐怖の帝国と周辺諸国から恐れられるこの国だが、この通りその内情は温かいものであった。魔物や自然の脅威にも晒されるフォーロイト帝国だからこそ、手を取り合い助け合って生きているのだ。
特に現皇帝の治世はかなり安定したもので。彼等がやたらといがみ合う事はなく……圧倒的な存在による統治の元、勢力争い等も無い泰平の世となっていた。
「ハミルディーヒの連中は随分と大人しいですね。てっきり無謀にも戦争をけしかけて来ると思っていたのですが、その様子が今のところ全くありません。一時期は国境付近でコソコソと魔導兵器を集めていたようですが……今はその大半が王都に収容されているようです」
「魔導兵器関連でこちらからも一つ。デリアルド辺境伯より、従来のものより三倍近い効果を発揮する魔導兵器が多数納品されました。ええと手紙がこちらに……『上質な魔石の売買契約を結ばせてくれたお礼』と、『多分近いうちに役に立つと思う』との事で」
「上質な魔石──……今後もララルス領の魔石を融通しろという賄賂か?」
「その可能性が高いかもしれませんね」
「だが本日、件のララルス侯爵は不在ですよ」
「そうだよな」
「そうですね」
「我々だけで話を進める訳にもいかなんだ」
「どうしたものか」
「「「うーむ……」」」
何かとフォーロイト帝国を敵視しているハミルディーヒ王国の動向に目を光らせていたのだが、何やらハミルディーヒ王国は今それどころではない模様。
フォーロイト帝国側としては、向こう数年以内に宣戦布告してくると思っていたのだが……何やらその気配が無い。
その報告の後、話題はハミルディーヒ王国とフォーロイト帝国間の緩衝材──、かの国の辺境伯でありながらフォーロイト帝国とも魔導兵器の取引をする、デリアルド伯爵の話へと移る。
彼の名が議題に上がると同時に、誰もが顔を顰めた。アンヘル・デリアルドの考えは、ぶっちゃけ誰もよく分かっていないのである。
この件は本当に、アンヘルからの上質な魔石をくれた礼でしかないのだが……。