だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

32.家に帰りましょう。

「もう夜も遅いし、何かあっては大変だろう? 他の子供達の事は彼等が手分けして家に送るらしいから、安心して二人共家に帰りなさいな……ってディオが言ってたよ」

 リードさんがそう言って手を差し伸べてくる。
 私はともかく、メイシアの事は確かに送って行きたいからなぁ。……と言うか、この人、断っても引き下がってくれない気がする。
 優しいもののように見えるけれど、有無を言わさない笑顔だわ、これ。絶対に私達を家まで送ってやるって意思が伝わってくる。

「…………もう夜も遅いし、帰ろうか。メイシア」
「スミレちゃんがそう言うなら」

 メイシアと目を合わせて小さく笑い合い、私がリードさんの手を取って、そして二人一緒に立ち上がる。
 そんな私達を温かい目でリードさんは見ていた。
 歩きだそうとした時、リードさんがおもむろに口を切る。

「それじゃあ行こうかと言いたい所なんだけど、生憎僕は旅人の身でね……君達の家の場所を知らないから、案内してもらえると嬉しいな」

 てへっ、と恥ずかしげな顔でリードさんは言う。妙に締まらないリードさんの姿に、私とメイシアは顔を合わせてまた笑った。
 そして先にメイシアを帝都にあるジャンパージュ家の屋敷まで送る事になり、メイシアの案内の元、歩き出す。
 その途中で仲間の方々に指示を飛ばしているディオさんを見かけたので、私はメイシアとリードさんに少し待っててくださいと頼み、ディオさんの所に駆け寄った。

「ディオさん!」
「どうした、ガキ」

 ディオさんと、やけに眉間に皺を作る美人なお兄さんがこちらを見下ろしてくる。

「まだディオさんの家の場所を教えて貰えてません!」

 私がそう言うと、ディオさんは、こいつマジか。みたいな顔をした。
 しばらく視線を送り続けていると、ディオさんは大きくため息を吐きながらも「一回しか言わないからな」と住所を教えてくれた。
 意外と雑な住所の説明を、私は何度も頷きながら聞いていた。そして、説明を終えたディオさんに眉間に皺のあるお兄さんが、

「流石に一回で覚えるのは無理だろう、もう一度ぐらい言ってやればどうなんだ」

 と苦言を呈した。確かに長かったというか、ややこしかったな……角を曲がって〜みたいな指示が沢山あった。

「良いんだよ、覚えられなくて。貧民街なんて貴族のガキが来るような所じゃねぇんだから」
「……とか言いつつちゃんと教えはするんだな」
「うるせぇ」

 ディオさんと眉間に皺のあるお兄さんが小突きあっている。
 私は、そんなディオさんと眉間に皺のあるお兄さんに向けて安心してください。と告げ、更に続ける。
< 120 / 1,398 >

この作品をシェア

pagetop