だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「舞踏会対策室です。国際交流舞踏会に訪れる方々の宿泊場所として雪花宮を解放する予定でしたが、皇帝陛下より『皇宮付近を部外者に彷徨かれては気が休まらん』とのお言葉をいただきまして……──信じ難いとは思いますが、雪花宮の移動を実行する事が決定しました」
「──はい?」
「あー、聞き間違いかぁ。最近歳の所為か耳が遠くてな」
「えーっと、オンロズーク伯爵。今なんと?」
「…………聞き間違いや夢ならばどれ程よかった事か。そのまま動かすんですよ、あの九つの宮殿全てを、別の場所へ」
コロコロと、まるで季節のように話題は移り変わる。
オンロズーク伯爵と呼ばれた顔色の悪い男は、その胃をキリキリと痛めながら話した。それを聞いた貴族達は誰もが唖然とし、やがて天を仰いだ。そして心の中で叫ぶだろう。
……──無茶振りにも程がある!!
そもそもとして。まったくもって現実的ではないその話を何故ケイリオルが許可したのか……それを貴族達は不思議に思った。
故に。一番訳を知っていそうな男へと、貴族達は助力を求める事とした。
「皇太子殿下、お伺いしたい事があるのですが、よろしいでしょうか」
「……とりあえず話せ」
貴族の一人がおずおずと声をかけると、フリードルは視線を資料に落としながら返事した。
出鼻をくじかれなかった事に安堵した貴族は、そのままの勢いでフリードルへと質問を投げかけた。
「この雪花宮移動の件、皇太子殿下は何かご存知でしょうか? このような非現実的な世迷言、人間には到底成し遂げられるとは思わないのですが……」
「ケイリオル卿からは、先日の魔力数値異常の犯人──……あの強大な結界魔法の使い手を突き止めたならば可能かもしれない。とだけ聞いている。それが不可能だとしても、国中の魔導師をかき集めれば多分可能だそうだ」
「た、多分ですか」
「絶対とは言いきれない。何せ我が帝国の誇る豪奢な九つの宮殿全ての移動だからな。その為に大量の回復薬を用意している途中だ。だがそれでも危険を冒したくないと言うのであれば、例の結界魔法の使い手を探し出せばいい」
フリードルは淡々と語るが、やはりそれは無理のある話で。これを聞いた貴族達の心の叫びはまたもや一致する事となる。
……──なんという無茶を!!!!
その嘆きが、そのまま表情に出ている者も散見される程だった。
(空間魔法を扱える魔導師に魔力を集約すればいい訳だから、妹も巻き込むか。あの女の魔力量は生意気にも僕を上回る程のかなりのものと聞く。ならば、あれにも協力を求めた方がいいだろう。もしかしたら、あの悪魔も妹の手伝いをするかもしれないからな)
その悪魔が例の強大な結界魔法の使い手なのだが、それに彼等が気づける筈もなく……。
頬杖をつき、フリードルは退屈そうな顔で資料の裏にメモを取っていた。昔からの習慣で、何か話し合い等をする際は重要な事から些細な事までメモしていたのだ。
その傍らの空いた空間に、フリードルは絵を描いていた。描いていたのはアミレスとあの悪魔の顔。存外絵の才能があるらしいこの男は、アミレスの似顔絵は随分と写実的に……対して悪魔の顔は随分と抽象的に描いていた。
片や絵画レベルの似顔絵、片や落書きレベルの似顔絵。
近頃はかなりアミレスに関心を寄せているからか、アミレスだけ完成度が段違いになってしまったらしい。本人は無自覚なのが実に愉快だ。
「──はい?」
「あー、聞き間違いかぁ。最近歳の所為か耳が遠くてな」
「えーっと、オンロズーク伯爵。今なんと?」
「…………聞き間違いや夢ならばどれ程よかった事か。そのまま動かすんですよ、あの九つの宮殿全てを、別の場所へ」
コロコロと、まるで季節のように話題は移り変わる。
オンロズーク伯爵と呼ばれた顔色の悪い男は、その胃をキリキリと痛めながら話した。それを聞いた貴族達は誰もが唖然とし、やがて天を仰いだ。そして心の中で叫ぶだろう。
……──無茶振りにも程がある!!
そもそもとして。まったくもって現実的ではないその話を何故ケイリオルが許可したのか……それを貴族達は不思議に思った。
故に。一番訳を知っていそうな男へと、貴族達は助力を求める事とした。
「皇太子殿下、お伺いしたい事があるのですが、よろしいでしょうか」
「……とりあえず話せ」
貴族の一人がおずおずと声をかけると、フリードルは視線を資料に落としながら返事した。
出鼻をくじかれなかった事に安堵した貴族は、そのままの勢いでフリードルへと質問を投げかけた。
「この雪花宮移動の件、皇太子殿下は何かご存知でしょうか? このような非現実的な世迷言、人間には到底成し遂げられるとは思わないのですが……」
「ケイリオル卿からは、先日の魔力数値異常の犯人──……あの強大な結界魔法の使い手を突き止めたならば可能かもしれない。とだけ聞いている。それが不可能だとしても、国中の魔導師をかき集めれば多分可能だそうだ」
「た、多分ですか」
「絶対とは言いきれない。何せ我が帝国の誇る豪奢な九つの宮殿全ての移動だからな。その為に大量の回復薬を用意している途中だ。だがそれでも危険を冒したくないと言うのであれば、例の結界魔法の使い手を探し出せばいい」
フリードルは淡々と語るが、やはりそれは無理のある話で。これを聞いた貴族達の心の叫びはまたもや一致する事となる。
……──なんという無茶を!!!!
その嘆きが、そのまま表情に出ている者も散見される程だった。
(空間魔法を扱える魔導師に魔力を集約すればいい訳だから、妹も巻き込むか。あの女の魔力量は生意気にも僕を上回る程のかなりのものと聞く。ならば、あれにも協力を求めた方がいいだろう。もしかしたら、あの悪魔も妹の手伝いをするかもしれないからな)
その悪魔が例の強大な結界魔法の使い手なのだが、それに彼等が気づける筈もなく……。
頬杖をつき、フリードルは退屈そうな顔で資料の裏にメモを取っていた。昔からの習慣で、何か話し合い等をする際は重要な事から些細な事までメモしていたのだ。
その傍らの空いた空間に、フリードルは絵を描いていた。描いていたのはアミレスとあの悪魔の顔。存外絵の才能があるらしいこの男は、アミレスの似顔絵は随分と写実的に……対して悪魔の顔は随分と抽象的に描いていた。
片や絵画レベルの似顔絵、片や落書きレベルの似顔絵。
近頃はかなりアミレスに関心を寄せているからか、アミレスだけ完成度が段違いになってしまったらしい。本人は無自覚なのが実に愉快だ。