だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「我が家門でも何か良き案がないか話し合ってみます!!」
「代々宮廷魔導師を輩出する家門が話し合ってくれるとは、なんと頼もしい事か」
「新たな魔導具を開発してはどうだろうか。例えば、そう……重たい物を持ち上げる魔導具とか」
「では、魔導開発研究室にて議題にあげてみましょう」
「おお、頼みましたぞ!」
がやがやと再び賑わいに包まれる議会場。
それから二十分近く、貴族達は狩猟大会に思い馳せ、雪花宮の移動について議論を白熱させていた。
やがて勢いが少し落ち着いた頃に、議会場の扉を開いてケイリオルが姿を見せた。突然の彼の登場に、貴族達は慌てて冷静を装い一礼する。
「皆さん、随分と盛り上がっていたようで。そこで朗報なのですが……フリードル皇太子殿下、よろしいですか?」
「えぇ、構いません」
「ありがとうございます」
コツコツとわざと立てられたような規則正しい足音を響かせ、ケイリオルはフリードルの隣に立つ。そして咳払いを一つして、語り出す。
「ややあって、狩猟大会の開催を陛下との攻防を経てもぎ取ったのですが……実は他にも、色々と頑張りまして」
ケイリオル卿がここまで言う程に頑張った事とは……!? と、貴族達は固唾を呑んだ。ケイリオルの手はスっと心臓の高さに掲げられ、その手は親指を立てた。
「新年祭、建国祭しかここ数十年は開催されてきませんでしたが──……来年は全てやりますよ。雪解祭も星祭も、 秋染祭も! 全て陛下からの開催許可をもぎ取ってきましたとも!!」
ケイリオルはどやっ、と得意げに言い放った。
それは全て『別にいらんだろ』と皇帝たるエリドルが開催させなかった季節ごとの祭り。突然祭りがなくなって悲しんだ国民も多かったと聞くそれを、なんとケイリオルは狩猟大会同様、十数年越しに復活させたのだ。
そりゃあ、本人がつい威張ってしまうのも無理はない。
「さっ、流石ですケイリオル卿!」
「あの皇帝陛下よりこれだけの祭りの開催許可をもぎ取るなんて……!!」
「ああ……ついに帝国があるべき姿に……っ」
「ボロムスの爺さん泣いてるじゃないか」
貴族達の喜びようを見て、ケイリオルは肩を撫で下ろした。
(まぁ、これまでパーティーや祭りを開催出来なかった理由の中には……ハミルディーヒ王国との事実上の冷戦状態に、そう何度も祭りを開催して予算や人手をそちらに割いては、もしもの時国が危ういから。という理由もあったのですが…………本当に、パーティーや祭りが嫌いな陛下の独断とでも思ってそうだ)
そう思われるような言動ばかり──というか、それを公言しているエリドルにも勿論非はある。
ケイリオルもそれはよく分かっている。それでも彼があのように、パーティーや祭りを行わない事がエリドルの好き嫌いによるものと誤解されるように話すのは、エリドルがそれを望んでいるからなのだ。
(……彼がパーティーや騒がしい事が嫌いなのは確かに事実だけれど、城でのパーティーや国をあげての祭りが少ないのは全て国民の為。仕方無かったんだ。ああやって全てを彼の我儘にする事こそが最善策だった。国民が少しでも平和と幸福を享受し続けられるように、最善策を取る必要が──僕達が悪となる必要があった)
色々と気が早い貴族達が直近の祭り、秋染祭に向けての話を進める様子を見つめ、ケイリオルは口元を少しだけ綻ばせた。
(あなた達はそのまま全てを彼の仕業にして、少しでも不安を感じたりせず日々を過ごしてくれたらいい。それが、僕達の望みだから。いつ戦争が起きるかも分からない──……そんな恐怖は覚えなくていい。あなた達の平和な日々の営みを守る為に、僕達がいるのだから)
「代々宮廷魔導師を輩出する家門が話し合ってくれるとは、なんと頼もしい事か」
「新たな魔導具を開発してはどうだろうか。例えば、そう……重たい物を持ち上げる魔導具とか」
「では、魔導開発研究室にて議題にあげてみましょう」
「おお、頼みましたぞ!」
がやがやと再び賑わいに包まれる議会場。
それから二十分近く、貴族達は狩猟大会に思い馳せ、雪花宮の移動について議論を白熱させていた。
やがて勢いが少し落ち着いた頃に、議会場の扉を開いてケイリオルが姿を見せた。突然の彼の登場に、貴族達は慌てて冷静を装い一礼する。
「皆さん、随分と盛り上がっていたようで。そこで朗報なのですが……フリードル皇太子殿下、よろしいですか?」
「えぇ、構いません」
「ありがとうございます」
コツコツとわざと立てられたような規則正しい足音を響かせ、ケイリオルはフリードルの隣に立つ。そして咳払いを一つして、語り出す。
「ややあって、狩猟大会の開催を陛下との攻防を経てもぎ取ったのですが……実は他にも、色々と頑張りまして」
ケイリオル卿がここまで言う程に頑張った事とは……!? と、貴族達は固唾を呑んだ。ケイリオルの手はスっと心臓の高さに掲げられ、その手は親指を立てた。
「新年祭、建国祭しかここ数十年は開催されてきませんでしたが──……来年は全てやりますよ。雪解祭も星祭も、 秋染祭も! 全て陛下からの開催許可をもぎ取ってきましたとも!!」
ケイリオルはどやっ、と得意げに言い放った。
それは全て『別にいらんだろ』と皇帝たるエリドルが開催させなかった季節ごとの祭り。突然祭りがなくなって悲しんだ国民も多かったと聞くそれを、なんとケイリオルは狩猟大会同様、十数年越しに復活させたのだ。
そりゃあ、本人がつい威張ってしまうのも無理はない。
「さっ、流石ですケイリオル卿!」
「あの皇帝陛下よりこれだけの祭りの開催許可をもぎ取るなんて……!!」
「ああ……ついに帝国があるべき姿に……っ」
「ボロムスの爺さん泣いてるじゃないか」
貴族達の喜びようを見て、ケイリオルは肩を撫で下ろした。
(まぁ、これまでパーティーや祭りを開催出来なかった理由の中には……ハミルディーヒ王国との事実上の冷戦状態に、そう何度も祭りを開催して予算や人手をそちらに割いては、もしもの時国が危ういから。という理由もあったのですが…………本当に、パーティーや祭りが嫌いな陛下の独断とでも思ってそうだ)
そう思われるような言動ばかり──というか、それを公言しているエリドルにも勿論非はある。
ケイリオルもそれはよく分かっている。それでも彼があのように、パーティーや祭りを行わない事がエリドルの好き嫌いによるものと誤解されるように話すのは、エリドルがそれを望んでいるからなのだ。
(……彼がパーティーや騒がしい事が嫌いなのは確かに事実だけれど、城でのパーティーや国をあげての祭りが少ないのは全て国民の為。仕方無かったんだ。ああやって全てを彼の我儘にする事こそが最善策だった。国民が少しでも平和と幸福を享受し続けられるように、最善策を取る必要が──僕達が悪となる必要があった)
色々と気が早い貴族達が直近の祭り、秋染祭に向けての話を進める様子を見つめ、ケイリオルは口元を少しだけ綻ばせた。
(あなた達はそのまま全てを彼の仕業にして、少しでも不安を感じたりせず日々を過ごしてくれたらいい。それが、僕達の望みだから。いつ戦争が起きるかも分からない──……そんな恐怖は覚えなくていい。あなた達の平和な日々の営みを守る為に、僕達がいるのだから)