だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

350.鈍色の兄妹と王女2

 結局、フリードル殿下には手紙だけ書いて会いに行ったりはしない事にした。呼び出されたりしたら、当然出向くつもりではあるけれど。

 帝都に到着してから一日。旅の疲れを癒すべく昨日と今日は休もうかと決めて、次期大公──……テンディジェル大公の名代として帝都に来たからその到着と謁見の旨の手紙を王城と皇宮に送って、お許しが出たら皇帝陛下にご挨拶しないとな。と思いつつ、朝から邸でのんびりしていた時だった。
 ローズと二人で手続きや軽い仕事の書類を処理していたら、執事のダンが珍しく慌てた様子で部屋に入って来た。どうしたのかと聞くやいなや、ダンは俺とローズを交互に見て、重々しく口を開いた。

「王女殿下が、お越しになりました」

 目が飛び出るかと思った。俺はペンを、ローズは書類をそれぞれ落とした。そしてゆっくりと一度顔を見合わせてから、

「アミレスちゃんが!?」
「えっ、もう!? 手紙送ったの昨日だよ!?」

 ダンの方を向いて驚きから声を大きくした。
 しかし本当に王女殿下がいらっしゃったのなら、こんな事をしている場合ではない! 早くお出迎えせねば!!
 俺とローズは目配せし、無言で頷く。ローズは侍女を呼び出しながら部屋を飛び出し、俺も準備の為に立ち上がった。

「王女殿下は今どうしているんだ?」
「賓客室にてお待ちいただいております」
「よくやった! あそこがこの邸で一番ちゃんとした部屋だからね!!」

 とにかく、お待たせしているのだから急がねば。
 そう思い慌てて部屋を飛び出して、服を着替える。軽く髪も整えて、俺は賓客室に向かった。その途中でやけに早く準備を済ませたローズが追いついて来て、少し驚いた。
 二人で並んで賓客室の前に立つと、扉の向こうから確かに彼女の声が聞こえて来る。
 ずっと焦がれてやまなかった、あの美しい声が。

「……──失礼致します。お待たせしてしまい申し訳ございません、王女殿下」

 深呼吸の後、扉を開いた。
 まず見えたのは、王女殿下と談笑していたらしい紅獅子騎士団団長モルスの姿。こちらに気づくと、彼はぺこりと一礼して一歩下がった。
 そして、俺達は念願の再会を果たす。

「レオ、ローズ、久しぶりね! 元気にしてた?」

 まっ、眩しい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!
 きっと俺とローズの心の叫びは重なった。俺には分かる……これは、この表情は、ローズも同じように心の中で叫んでいると。
 いや本当に、笑顔が眩しすぎます王女殿下! 久々にお会いしたからか、以前よりもっと輝いて見える気がするし!!

「お、お久しぶりでございます、王女殿下……お会い出来て光栄です」
「私達はとっても元気です! アミレスちゃんにこんなにもすぐに会えるなんて思ってなかったので……凄く幸せです」

 だらしなく緩む頬を必死に律して何とか挨拶すると、

「昨日の夕方頃に帝都に到着したって手紙が届いて、早く二人に会いたかったからこんな朝早くから来ちゃったわ。ごめんなさいね」
「ングッ……!!」
「はぅっ!!」

 王女殿下は眉尻を下げて、何とも可愛らしい事を口にされた。その尊さに思わず呻く俺達。
 俺達に早く会いたくて翌日の朝から来てくれるとか、自惚れてもいい? 少しは王女殿下に気に入られてるって思ってもいい?

「ああそうだ。ローズ、誕生日おめでとう。大したものじゃなくて申し訳無いのだけど、プレゼントを用意したから受け取って」
「えっ、いいんですか……!」
「勿論よ。レオにも来月プレゼントを渡すから、そこそこ楽しみにしておいて」
「俺まで……ありがとうございます、王女殿下。楽しみにしておきます」

 王女殿下からの誕生日プレゼントという事もあり、ローズはとても嬉しそうに頬を赤くしていた。
 更に王女殿下は何と俺の誕生日も覚えていて下さり、俺にもプレゼントをくださると言うのだ。なんという心優しき御方だろう。好き。
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