だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

352.冷酷なる血筋

 九月になり、秋の訪れを感じる今日この頃。
 私は二つの問題に直面していた。

 一つはメイシアから届いたパーティーの招待状。帝国市場を牛耳るシャンパージュ伯爵家のパーティーという事もあり、大勢の人が招待されて盛大なものになるらしい。
 果たしてそのような華やかな場所に、軽率に氷の血筋(フォーロイト)王女(わたし)が理由も無しに参加していいものなのかという不安から、どうするべきか迷っていた。
 そしてもう一つは──、雪花宮の移動とかいう馬鹿げた計画について。なんかよく存じ上げませんけど、フリードルが突然私の所を訪ねて来て、

『アミレス・ヘル・フォーロイト。お前も国の為に働け』

 と仏頂面で偉そうに言われたものだから。一発あいつの顔を殴りたくて仕方無かった。
 一応その概要を聞き、こちらも一度考えてみたところ……憎き事に、雪花宮の移動計画には私の力も大いに役立つ事が分かってしまった。
 私の力、というか私の魔力量だけどね。とにかく膨大な魔力を要する案件なので、魔法の腕も長けていると噂の氷結の聖女とやらに、フリードルは応援を要請したいようだった。

 それは非常に面倒だし、ぶっちゃけ断りたかったのだけど……狩猟大会の為と言われたらなぁ。
 国民も楽しみにしているお祭りなだけあって、それを潰すような真似は気が引ける。私自身お祭りというものには憧れがあるし、狩猟大会には個人的な興味だってある。
 なので雪花宮の移動は行わなければならない、言わばミッションで。フリードルに言われて働くのは癪ではあるが、致し方なし。
 ひとまず、話を一旦持ち帰らせて貰う事にした。その旨を伝えると、フリードルは怪訝な顔をしながらも『そうか。では三日後の昼までに答えを出せ』と言って踵を返した。
 それが三日前の事で、今日の昼が回答締切の日でして。

 今日は朝から皆と色々話し合おうと思っていたのだが、予定変更。前日に届いたレオとローズが帝都に到着したという手紙を見て、私は妙案を思いついたのだ。
 ──そうだ、メイシアのパーティーにローズも連れて行こう! と。
 そしたらローズは安全に社交界デビュー出来るし、私が参加しても不自然ではない。なおかつ、皇族にデビュタントの後援を頼めるような存在なのだとローズの帝都での立場が確立されて、より安全に帝都で過ごせるようになるだろう。

 ローズとレオが帝都で安心して過ごせるよう全力でサポートすると宣言した身としては、これ程の好機をみすみす逃したくない。
 それに、きっとメイシアとローズは気が合うだろうし。メイシアも小説とかは昔よく読んでたと言っていたから、きっと仲良くなれる事だろう。
 二人共その抱える問題故か同年代の友達がいないそうだし、可能なら二人も仲良くなってくれたら私も嬉しいなあと思ったのだ。……お節介だと思うけれど。

 お別れの日にヴァイオレットのドレスを着ていた事を思い出し、帝都に戻ってきてから密かにヴァイオレットで用意していた彼女の為のドレス。
 それをローズへの誕生日プレゼントとして持参し、私は朝からテンディジェル邸を訪ねたのだ。
 そして無事ローズの社交界デビューのサポートをする許可を貰い、メイシアとローズを引き合せる事が出来そうだと浮つく心で帰路につく。

 その際ふと思い立って、招待状の返事をしようと帰り際にシャンパージュ伯爵邸に寄った。
 馬での移動という事もあり、人通りの少ない道をゆっくり進んでいたので移動に時間がかかったが、無事にシャンパージュ伯爵邸に辿り着いた。
 本当に返事だけの為に訪ねたので……玄関先での立ち話程度にこの旨を伝えた。

「この間受けた招待なんだけど、私の友達も連れて行って構わないかしら?」
「友達……? マリエル様の事かしら。アミレス様がお越しくださるのなら、好きなだけお知り合いを同伴させても構いませんよ」
「本当? よかったわぁ〜」

 途中ボソリと何かを呟いていたが、それは気の所為だったとばかりにメイシアは笑顔でこれを了承してくれた。
 こんなめちゃくちゃなお願いも聞いてくれるなんて……本当にいい子ね、メイシアは。
 こんな朝早くからごめんね、と挨拶もそこそこに今度こそ帰路につく。馬を走らせて東宮に戻り、プラチナ達を東宮の裏庭の一角に放つ。
 三頭ともかなり大人しい馬なので、普段は柵で囲んだスペースで放し飼いしているのだ。
< 1,215 / 1,399 >

この作品をシェア

pagetop