だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「お取り込み中に失礼します。お兄様、例の件の答えを出しましたので──……」
私の考えた案の概要と魔導兵器の説明を軽く済ませて、その上でフリードルにこの案はどうかと提案する。
黙ってるとやっぱりちゃんと攻略対象なんだよなぁ……こうやって顎に手を当てて考える姿なんて、ゲームで見た立ち絵そのものだ。
呑気に観察していると、程なくしてフリードルの青い瞳がこちらに向けられた。
「お前の案は理解した。しかし、一つ疑問が残る。何故そのような貴重な魔導兵器をお前が所持しているんだ?」
ギクッ、と肩が跳ねた。
「……以前、知り合いからいただきまして。持て余していたので、このように使える機会が訪れて良かったです」
ミカリアから貰ったなんて言えないよね。だって相手は国教会の聖人様よ? 聖人様直々に誕生日プレゼントを貰うなんて、もうめちゃくちゃ親密な関係みたいじゃない。
私とミカリアの関係なんて、ごく普通の友人関係なのに。
「そうか。だが、人からの貰い物を僕に預けてもいいのか」
魔導兵器を手に持ち、フリードルは配慮するような言葉を口にした。
それにこくりと頷いて、
「えぇ。お兄様なら悪用するような事はなさらないでしょうから。ああでも、貰い物なので壊さないで下さいね」
壊さないように念押しした。フリードルは「分かった」とだけ短く答えて、その魔導兵器を机上に置いた。
「お前の案も採用しよう。瞬間転移では限界があると、魔導師達にも言われたからな……念の為確認しておくが、お前もこの件に関わる意思があると見ていいのだな?」
「はい。そのように思っていただければ。必要であれば、私の部下も動員します」
「そうか、お前達の事も頭数に入れておこう。ふ、無謀極まりない計画に光明が差した気分だな」
これにて無事に例の件への回答が済み、ついでに先程の悪役令嬢っぽい集団の家門を全員で把握する事となり、二十分程してフリードルの執務室を後にした。
何だか今日のフリードルは様子がとても変だった。何が変だったのかと言われると全てとしか答えられないぐらい、とにかく変だった。
でも……もし、これからもずっとあんな感じに関われたのなら。
普通の兄妹のように会話して、過ごす事が出来たなら。
……──それが一番、幸せなんだけどなぁ。
♢♢
「今日の主君……凄く良かったよね」
「いつも素晴らしいが、今日の王女殿下も相変わらず素晴らしかったな」
その日の夜。
イリオーデとアルベルトは厨房で軽く酒を飲んでいた。
たまにではあるものの、彼等はこうして、誰もが寝静まった深夜に酒を飲みながらその日の事について語り合っているのだ。
「あの──神が人間を見下すかの如き目と、吹雪のような冷たく恐ろしさすら感じる声。不謹慎とは分かっていても、つい……思い出すと興奮してしまいそうだ」
アルベルトが熱っぽいため息を吐く。恍惚としたその顔は、下腹部から湧き上がるその情熱にうなされているかのようで。
「……そうだな。どう表現すればいいのか分からないが、背筋をなぞられたとでも言えばいいのだろうか。とにかく、いつもとは違う何かを……興奮に近いものを感じたな」
グラスを片手に、イリオーデはアルベルトの意見に同意した。どうやらイリオーデまでもが何か良からぬものを感じてしまっていたらしい。
酒も入っているからか、二人は和気藹々と大人の話をする。アミレスには決して──何があろうとも聞かせられないような……踏み込んだ夜の話を。
私の考えた案の概要と魔導兵器の説明を軽く済ませて、その上でフリードルにこの案はどうかと提案する。
黙ってるとやっぱりちゃんと攻略対象なんだよなぁ……こうやって顎に手を当てて考える姿なんて、ゲームで見た立ち絵そのものだ。
呑気に観察していると、程なくしてフリードルの青い瞳がこちらに向けられた。
「お前の案は理解した。しかし、一つ疑問が残る。何故そのような貴重な魔導兵器をお前が所持しているんだ?」
ギクッ、と肩が跳ねた。
「……以前、知り合いからいただきまして。持て余していたので、このように使える機会が訪れて良かったです」
ミカリアから貰ったなんて言えないよね。だって相手は国教会の聖人様よ? 聖人様直々に誕生日プレゼントを貰うなんて、もうめちゃくちゃ親密な関係みたいじゃない。
私とミカリアの関係なんて、ごく普通の友人関係なのに。
「そうか。だが、人からの貰い物を僕に預けてもいいのか」
魔導兵器を手に持ち、フリードルは配慮するような言葉を口にした。
それにこくりと頷いて、
「えぇ。お兄様なら悪用するような事はなさらないでしょうから。ああでも、貰い物なので壊さないで下さいね」
壊さないように念押しした。フリードルは「分かった」とだけ短く答えて、その魔導兵器を机上に置いた。
「お前の案も採用しよう。瞬間転移では限界があると、魔導師達にも言われたからな……念の為確認しておくが、お前もこの件に関わる意思があると見ていいのだな?」
「はい。そのように思っていただければ。必要であれば、私の部下も動員します」
「そうか、お前達の事も頭数に入れておこう。ふ、無謀極まりない計画に光明が差した気分だな」
これにて無事に例の件への回答が済み、ついでに先程の悪役令嬢っぽい集団の家門を全員で把握する事となり、二十分程してフリードルの執務室を後にした。
何だか今日のフリードルは様子がとても変だった。何が変だったのかと言われると全てとしか答えられないぐらい、とにかく変だった。
でも……もし、これからもずっとあんな感じに関われたのなら。
普通の兄妹のように会話して、過ごす事が出来たなら。
……──それが一番、幸せなんだけどなぁ。
♢♢
「今日の主君……凄く良かったよね」
「いつも素晴らしいが、今日の王女殿下も相変わらず素晴らしかったな」
その日の夜。
イリオーデとアルベルトは厨房で軽く酒を飲んでいた。
たまにではあるものの、彼等はこうして、誰もが寝静まった深夜に酒を飲みながらその日の事について語り合っているのだ。
「あの──神が人間を見下すかの如き目と、吹雪のような冷たく恐ろしさすら感じる声。不謹慎とは分かっていても、つい……思い出すと興奮してしまいそうだ」
アルベルトが熱っぽいため息を吐く。恍惚としたその顔は、下腹部から湧き上がるその情熱にうなされているかのようで。
「……そうだな。どう表現すればいいのか分からないが、背筋をなぞられたとでも言えばいいのだろうか。とにかく、いつもとは違う何かを……興奮に近いものを感じたな」
グラスを片手に、イリオーデはアルベルトの意見に同意した。どうやらイリオーデまでもが何か良からぬものを感じてしまっていたらしい。
酒も入っているからか、二人は和気藹々と大人の話をする。アミレスには決して──何があろうとも聞かせられないような……踏み込んだ夜の話を。