だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
(なっ──! マクベスタ様め〜〜っ!!)
それは、アミレスがメイシアの紹介を終えたばかりの頃。
彼女達がバチバチと火花を散らし始めたばかりの時に、マクベスタがサラッとアミレスの意識を立食用テーブルに向けさせたのだ。
そして二人で遠くのテーブルを眺めつつ、あれ美味しそうだね。と談笑していたのである。
しかもこの男、何気にイリオーデとアルベルトをアミレスから引き離そうとしていた。なんという強かさか。
「王女殿下のお望みのままに。先程仰っていたものをお持ちすればいいのですね?」
「ええ、皆の分もよろしくね。あっそうだ、自分の分もちゃんと取ってくるのよ? せっかくなら皆で食べたいし」
「主君がそう仰るなら……かしこまりました、すぐ戻って参ります」
マクベスタの画策通り、護衛の二人がアミレスの傍を離れた。しかし作戦が成功したにも関わらず、
(相変わらずお前は、皆、皆って……まあ、そこがお前らしいんだが。あわよくば二人で、と無駄に策を巡らせたオレが滑稽じゃないか)
マクベスタは胸中で愚痴を零していた。だがその表情はどこか柔らかい。
画策が無駄になったというのに、マクベスタは少し嬉しそうだった。躁鬱になってからは暗く澱んでいたその瞳が、熱を宿して細められている。
見る人が見れば分かるだろう──、この時マクベスタがたたえていた微笑は、彼女に恋焦がれる人間のそれなのだと。
それを、あのメイシアが見逃す筈もなく。
「マクベスタ様、ちょっとあちらでお話よろしいですか?」
義手でマクベスタの肩を鷲掴み、青筋の浮かぶ黒い笑顔でメイシアは声をかけた。
「別に構わないが、その手を離してくれないか? 肩の肉が抉れそうなんだが……」
「あら、なんの事でしょうか?」
メイシアがわざとらしくニコリと微笑むと、
「二人で何か話があるなら、私がここから離れようか? 主催側のメイシアがあまり会場を離れる訳にはいかないでしょうし」
何も知らないアミレスが、ここで急に気を利かせた。いやはや、察しがいいのか悪いのか……。
「いえっ、大丈夫ですわアミレス様! それに少し会場から離れても、ここにはお父さんとお母さんがいますし。とにかく、こちらのむっつり──……ごほん、狼男をお借りしますね」
「そうなの? まあ、行ってらっしゃい」
「はい、行って参ります。ほら行きますよケダモノさん」
狼男? と小首を傾げるアミレスに見送られ、メイシアはマクベスタの腕を強く引っ張りずんずんと進んでいく。
その際も勿論義手で強く腕を掴んでいたのだが、マクベスタはそれを特に気に留める様子もなく、小さく「ケダモノって……」と呆れたように呟いていた。
そんな二人の背中を見つめながら、アミレスは思う。
(私の知らないうちにあんなに仲良くなっていたとは……嬉しいな……)
それはまるで保護者のような慈愛に満ちた微笑みだった。
そこに、怖い恋敵がいなくなった事で自由となったレオナードとローズニカが避難するようにやって来た。
「アミレスちゃんのお友達って、皆凄い人だね……色んな意味で……」
ローズニカはアミレスの腕にぎゅっと抱き着いて、ボソリと初対面の感想を零した。誰も彼もが初対面から攻撃的で、彼女にとってかなりの衝撃だったらしい。
一方その頃。テラスへと出たメイシアとマクベスタは、秋風に当たりながら神妙な面持ちを作っていた。
それは、アミレスがメイシアの紹介を終えたばかりの頃。
彼女達がバチバチと火花を散らし始めたばかりの時に、マクベスタがサラッとアミレスの意識を立食用テーブルに向けさせたのだ。
そして二人で遠くのテーブルを眺めつつ、あれ美味しそうだね。と談笑していたのである。
しかもこの男、何気にイリオーデとアルベルトをアミレスから引き離そうとしていた。なんという強かさか。
「王女殿下のお望みのままに。先程仰っていたものをお持ちすればいいのですね?」
「ええ、皆の分もよろしくね。あっそうだ、自分の分もちゃんと取ってくるのよ? せっかくなら皆で食べたいし」
「主君がそう仰るなら……かしこまりました、すぐ戻って参ります」
マクベスタの画策通り、護衛の二人がアミレスの傍を離れた。しかし作戦が成功したにも関わらず、
(相変わらずお前は、皆、皆って……まあ、そこがお前らしいんだが。あわよくば二人で、と無駄に策を巡らせたオレが滑稽じゃないか)
マクベスタは胸中で愚痴を零していた。だがその表情はどこか柔らかい。
画策が無駄になったというのに、マクベスタは少し嬉しそうだった。躁鬱になってからは暗く澱んでいたその瞳が、熱を宿して細められている。
見る人が見れば分かるだろう──、この時マクベスタがたたえていた微笑は、彼女に恋焦がれる人間のそれなのだと。
それを、あのメイシアが見逃す筈もなく。
「マクベスタ様、ちょっとあちらでお話よろしいですか?」
義手でマクベスタの肩を鷲掴み、青筋の浮かぶ黒い笑顔でメイシアは声をかけた。
「別に構わないが、その手を離してくれないか? 肩の肉が抉れそうなんだが……」
「あら、なんの事でしょうか?」
メイシアがわざとらしくニコリと微笑むと、
「二人で何か話があるなら、私がここから離れようか? 主催側のメイシアがあまり会場を離れる訳にはいかないでしょうし」
何も知らないアミレスが、ここで急に気を利かせた。いやはや、察しがいいのか悪いのか……。
「いえっ、大丈夫ですわアミレス様! それに少し会場から離れても、ここにはお父さんとお母さんがいますし。とにかく、こちらのむっつり──……ごほん、狼男をお借りしますね」
「そうなの? まあ、行ってらっしゃい」
「はい、行って参ります。ほら行きますよケダモノさん」
狼男? と小首を傾げるアミレスに見送られ、メイシアはマクベスタの腕を強く引っ張りずんずんと進んでいく。
その際も勿論義手で強く腕を掴んでいたのだが、マクベスタはそれを特に気に留める様子もなく、小さく「ケダモノって……」と呆れたように呟いていた。
そんな二人の背中を見つめながら、アミレスは思う。
(私の知らないうちにあんなに仲良くなっていたとは……嬉しいな……)
それはまるで保護者のような慈愛に満ちた微笑みだった。
そこに、怖い恋敵がいなくなった事で自由となったレオナードとローズニカが避難するようにやって来た。
「アミレスちゃんのお友達って、皆凄い人だね……色んな意味で……」
ローズニカはアミレスの腕にぎゅっと抱き着いて、ボソリと初対面の感想を零した。誰も彼もが初対面から攻撃的で、彼女にとってかなりの衝撃だったらしい。
一方その頃。テラスへと出たメイシアとマクベスタは、秋風に当たりながら神妙な面持ちを作っていた。