だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
♢♢♢♢
アミレスの思惑通りの社交界デビューを果たしたローズニカは、慣れない社交界ではあったものの、テンディジェル家の人間らしく上手く立ち回っていた。
その為、ダンスのお誘いも多く来た。しかしその尽くをレオナードがやんわりと断り、初ダンスは兄妹で踊る事にしたらしい。
ダンスが始まるとメイシアは主催側という事で運営に戻り、レオナードとローズニカ、マクベスタとアミレスというペアでダンスを踊る事に。
イリオーデとアルベルトは「本日は護衛として来ておりますので」と言って、ダンスのお誘いを全て断っていた。
そして少し離れた所で待機しつつ、アミレスと体を密着させるマクベスタをこれでもかと言う程に護衛達は睨んでいた。
(いい匂いがする。それに柔らかい……っ)
当のマクベスタは、こんな状況だからこそ非常にドキドキしていた。
ここ一年近くで培った演技力で表情が崩れる事は何とか誤魔化しているものの、その心音までは誤魔化せない。
もしアミレスにこの心臓の音を聞かれてしまったら──。
そう、彼は二重の意味で鼓動を早くしていたのだった。
(あっ、人が……!)
マクベスタが悶々と焦りを募らせるなか、その背後には激しく踊る男女ペアが近づいていた。
しかしマクベスタは現状にいっぱいいっぱいで、避ける様子がない。それに気づいたアミレスは慌ててマクベスタの体を引き寄せ、片腕で抱き締めるようにしてくるりとターンした。
まるで、いつかの日のイリオーデのように。彼女はダンスの一部かのように、衝突事故を華麗に回避してみせたのだ。
その際、抱き締めたのだから当然だが……歳の割に発育のいいアミレスの体が、これでもかと彼の身体に密着していた。
(ッ!?!? これッ……まさっ、か!?)
むにゅ、と腹部に感じる一等柔らかい感覚。マメの出来た小さな手のひらともまるで違う、未知の感触。
それが何か理解した途端、マクベスタの顔が紅潮する。どうやら、もう、我慢の限界らしい。
(落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着けッッッ! ここはパーティー会場だぞ!! こんな所で、こいつの目の前で醜態を晒す訳には──ッ!!)
強く歯を食いしばり、マクベスタは理性総動員でその熱情を抑え込もうとした。頭の中で必死に陰鬱とした己を思い出し、目前の輝かしい夢のような景色から目を逸らして。
それを見たアミレスは、目を点にしてそれはもう困惑していた。
(顔真っ赤だし、凄い険しい顔してる……勝手に体を引き寄せたから怒ってるのかな。動く前に何か一言あった方が良かったのかしら……焦ってたから事を急いてしまったわ)
マクベスタの必死の我慢を、アミレスは自分への怒りと誤認した。気まずそうに寒色の瞳を細めて明後日の方向へと逸らすアミレスと、この現実を直視する訳にはいかず視線を泳がせ続けるマクベスタ。
体に染み付いているからか、ダンスは完璧に踊りきったものの……ダンスが終わった後も二人の間に流れる空気は中々にぎこちないものだ。
そんな張り詰めた空気を打ち破ったのは、誰しもにとって予想外の男だった。
アミレスの思惑通りの社交界デビューを果たしたローズニカは、慣れない社交界ではあったものの、テンディジェル家の人間らしく上手く立ち回っていた。
その為、ダンスのお誘いも多く来た。しかしその尽くをレオナードがやんわりと断り、初ダンスは兄妹で踊る事にしたらしい。
ダンスが始まるとメイシアは主催側という事で運営に戻り、レオナードとローズニカ、マクベスタとアミレスというペアでダンスを踊る事に。
イリオーデとアルベルトは「本日は護衛として来ておりますので」と言って、ダンスのお誘いを全て断っていた。
そして少し離れた所で待機しつつ、アミレスと体を密着させるマクベスタをこれでもかと言う程に護衛達は睨んでいた。
(いい匂いがする。それに柔らかい……っ)
当のマクベスタは、こんな状況だからこそ非常にドキドキしていた。
ここ一年近くで培った演技力で表情が崩れる事は何とか誤魔化しているものの、その心音までは誤魔化せない。
もしアミレスにこの心臓の音を聞かれてしまったら──。
そう、彼は二重の意味で鼓動を早くしていたのだった。
(あっ、人が……!)
マクベスタが悶々と焦りを募らせるなか、その背後には激しく踊る男女ペアが近づいていた。
しかしマクベスタは現状にいっぱいいっぱいで、避ける様子がない。それに気づいたアミレスは慌ててマクベスタの体を引き寄せ、片腕で抱き締めるようにしてくるりとターンした。
まるで、いつかの日のイリオーデのように。彼女はダンスの一部かのように、衝突事故を華麗に回避してみせたのだ。
その際、抱き締めたのだから当然だが……歳の割に発育のいいアミレスの体が、これでもかと彼の身体に密着していた。
(ッ!?!? これッ……まさっ、か!?)
むにゅ、と腹部に感じる一等柔らかい感覚。マメの出来た小さな手のひらともまるで違う、未知の感触。
それが何か理解した途端、マクベスタの顔が紅潮する。どうやら、もう、我慢の限界らしい。
(落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着けッッッ! ここはパーティー会場だぞ!! こんな所で、こいつの目の前で醜態を晒す訳には──ッ!!)
強く歯を食いしばり、マクベスタは理性総動員でその熱情を抑え込もうとした。頭の中で必死に陰鬱とした己を思い出し、目前の輝かしい夢のような景色から目を逸らして。
それを見たアミレスは、目を点にしてそれはもう困惑していた。
(顔真っ赤だし、凄い険しい顔してる……勝手に体を引き寄せたから怒ってるのかな。動く前に何か一言あった方が良かったのかしら……焦ってたから事を急いてしまったわ)
マクベスタの必死の我慢を、アミレスは自分への怒りと誤認した。気まずそうに寒色の瞳を細めて明後日の方向へと逸らすアミレスと、この現実を直視する訳にはいかず視線を泳がせ続けるマクベスタ。
体に染み付いているからか、ダンスは完璧に踊りきったものの……ダンスが終わった後も二人の間に流れる空気は中々にぎこちないものだ。
そんな張り詰めた空気を打ち破ったのは、誰しもにとって予想外の男だった。