だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
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「おい、お前等仕事だ! さっさと支度し──……」

 ディオの家の扉を蹴破り、野盗のように荒々しく中に入る。
 この戦いでのアミレスの生存確率を少しでも上げる為──、あと数日(・・・・)分の時間(・・・・)を稼ぐ(・・・)為。
 オレサマはアイツの頼みもあって私兵団の奴等の拠点を訪れた。そんで、私兵団の奴等の意思なんて無視して強制連行するつもりだったのだが。

「おう、やっと来たのかシュヴァルツ。おっせーよ、俺達ずっと待ってたんだが?」

 既に、私兵団の奴等は全員団服に身を包んで準備が出来ているようだった。
 予想外の光景に思わず固まっていると、

「王女殿下の私兵として俺達も戦う必要があるだろうな、って思ってさ。魔物の行進(イースター)の話を聞いて、一週間ぐらい前からいつでも戦いに行けるよう準備だけはしてたんだ」

 オレサマの驚愕の理由を察したのか、ラークがご丁寧に説明する。
 コイツ等……オセロマイトの一件の時から思ってたが、何気に肝据わってやがるな。
 自分の頬が鋭く吊り上がるのを感じた。
 面白くて、都合が良くて。そんなある種の喜びから、この顔は少しばかりの笑みを作っていた。

「──そう。なら、話は早いな。さっそく行くぞ、戦場に」

 そう言うやいなや、魔法を使う。私兵団の奴等を包み込むように輝きだす純白の魔法陣。
 視界が白く染まりきって数秒。その光が収まると、視界には押し寄せる魔物共の群れやそれと戦う人間共の姿が映った。
 ずっと帝都の中にいたコイツ等にとっては想像以上の光景だったのだろう。流石に言葉を失って、その場に立ち尽くしている。

「……何、今更怖気付いてんの? あれだけ大見得切った癖に、いざ戦場に出ると怖くて何も出来ねェってワケ?」

 挑発するように嘲笑ってみると、

「──はんっ、ンな訳ねぇだろ。もうとっくに戦ってる我等がご主人様にびっくりしただけだっつの!」

 ディオはニヤリと笑って、あろう事かオレサマの頭に拳骨を落としやがった。
 なんだコイツ、オレサマの正体を知らないからってなんつー真似を……後でぶん殴ってやろうか。
 たかが人間の拳骨なんざオレサマは痛くも痒くもないんだが、腹立つモンは腹立つ。どう仕返ししてやろうかと考えていたら、いつの間にか私兵団の奴等が魔物共の群れへと向かって行っていた。

「いいかお前等。殿下の事だから、俺達が下手に怪我してると後で絶対に責任感じて落ち込むと思う。だから絶対怪我すんじゃねぇぞ! 怪我しても服で隠せたりユーキの魔法で誤魔化せる範囲で怪我しろよ!」
「「「「「おう!」」」」」

 ディオがどこかズレた喝を入れると、それにジェジ、エリニティ、クラリス、シャルルギル、ルーシアンが勇ましく同意する。

「あれ、普通は怪我しないように気をつけるべきだと思うんだけどな」
「……ラーク兄、この脳筋達にそんな事言っても無駄だよ」

 その事についつい突っ込まずにはいられなかったラークに、ユーキが呆れたようにため息を吐いていた。
 だが、全員その表情はやる気に満ちていた。
 それがどうしてなのか、オレサマには分からない。
 アミレスの為になるのだからこれは喜ばしい事だ。だがアイツ等からすれば何の得もない事──というか、寧ろ危険と隣り合わせの戦いなど、損でしかない筈だ。
 なのに何故、アイツ等は進んで戦う準備をして、あんなにもやる気に満ちた表情で戦場へと向かうのか。
 オレサマにはどうにもそれが理解し難い。
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